第274話 第4戦団の囮
30人の『グリフォン』搭乗員を収容した空中移送機は、日嗣皇子に向かって機銃を掃射した。日嗣皇子と仮面の女性士官は、それを走って躱す。的を外した空中移送機は上昇し、S33中継基地の上空を旋回する。
「俺が説得する!」
S33中継基地の上空を旋回した後、再び発着路にいる日嗣皇子に向かう空中移送機を見た東城准将は叫んでいた。
第3戦団の戦団章をつけた6機の重甲機兵が、この場に現れたことは「東城准将との会談に現れた日嗣皇子を襲撃する」ためであることは間違いない。自身が「南部方面軍に騙された」のである。
戦闘の場から『グリフォン』搭乗員を避難するよう誘導しているラインゴルド兵に、東城准将は詰め寄っていた。
「この場は一旦、重甲機兵を退くのだ。カイザー指揮官に伝えてくれ。南部方面軍は、俺が必ず説得する!」
一方的に攻撃を受けているのはラインゴルドの側である。しかし、東城准将には、強固な防衛戦力が「南部方面軍を不安にさせた」と映っていた。
発着路のアスファルトの上。
発着路の敷地に入る直前で、日嗣皇子らと別れた2人の護衛兵が大急ぎで駆け寄って来ていた。仮面の女性士官は、駆けつけた護衛兵と共に戦艦『胡蝶』が停留する陸艦港の方へ駆け去って行く。
カイザーは、その様子をサブモニターで見ていた。
走り去る女性士官が仮面を外すと、その下の顔は月夜見ではなかった。あの月夜見は、ニセモノだったのだ。
「……と、言うことは?」
次の瞬間、日嗣皇子に向かっていた空中移送機の左の翼から火柱が上がった。重い轟音がアスファルトに反響し……空中移送機の進路が左方向にズレて行く。
「上です!」
ベルーナの声に、カイザー機の機械眼球が思わず上を見る。Cユニットのメインモニターに上空の映像が映し出される。空の黒い一点から、オレンジ色のビーム束が撃ち出されていた。
上空の黒い点が、サブモニターに拡大表示される。白い装甲のジークフリード型重甲機兵だ。
「11番機か!」
ジークフリード型の特徴的な肩部装甲に「XI」の刻印があった。
「なるほどな。仮面の女士官がいれば月夜見様だと思ってしまう。ニセモノを出しておいて、本物は11番機で上空に待機していたのか」
11番機は、30人の『グリフォン』搭乗員を乗せた空中移送機に対して、何の躊躇いもなくビーム砲を連射していた。空中移送機は、直撃するビーム束によって青白い閃光に飲み込まれる。
空中移送機は大きく左に逸れて、そのまま大地に激突し轟音で発着路のアスファルトを揺るがせる。




