第272話 襲撃
戦艦『ワイバーン』からの空中移送機が、甲高いエンジン音を響かせる。発着路のアスファルトに吹き付けられた熱風が、地面に伝って東城准将やカイザーに届く。
空中移送機は、ゆっくりと垂直に上昇しはじめる。
東城准将は、上昇する空中移送機から視線を離して、こちらに歩いてくる仮面の女士官と若い男の士官を見つめる。若い男は背筋を伸ばして、歩く姿勢が美しい。
(有馬将軍が鍛え上げたか?)
月夜見が、日嗣皇子を第2戦団で匿っている……との噂もあったのを、東城准将は思い出す。
上昇し、遠ざかる空中移送機のエンジン音が、幾重にも反響して聞こえて来た。
「!」
反響ではなかった。
S33中継基地を取り囲むように、何機もの空中移送機が現れた。しかも、その背には重甲機兵を搭乗させている。
ラインゴルドのB級ジークフリードが、即座に反応して右手のロケット砲を構える。
空中移送機の上の重甲機兵も、バックパックの主推進装置を点火して宙に舞う。
何が起こっているのか東城准将は困惑する。その隣にいるカイザーは、平静な顔でベルーナに指示を送っていた。
「これは、何事かぁ!」
東城准将は、カイザーに向き直って大声で怒鳴った。東城准将は、突然現れた重甲機兵はラインゴルドの機体だと思い込んでいた。
「よく見て下さい。胸部の所属章は、第3戦団のものですよ」
「何だと?」
空中移送機から飛び降りた重甲機兵は6機。ジークフリード型が1機で、残る5機はペルセウス型である。その6機の胸部には、緑地の黒不死鳥が描かれている。第3戦団の戦団章だ。
カイザーは、第3戦団の襲撃を予想していた。それでも、重甲機兵と空中移送機をそれぞれ6機も一気に出現して来たのは意外である。
(これほど上手に、機体を隠していたとはな)
数秒ではあるが、確実に先手を取られてしまったと思う。
ラインゴルドの白兵戦部隊を指揮する指揮官に、東城准将と残る60人の一般兵を託して自らはA級ジークフリードへ乗り込む。
「敵の重甲機兵は?」
既にSユニットから送られた情報が、Cユニットのコンソール画面に流れていた。それを確認しながら、腋下部に神経同調ケーブルを接続する。
「A級ペルセウスが2機です。他にGV3型B級ジークフリードが1機、B級ペルセウス3機!」
ベルーナの報告がCユニットに届く。
「機体制御をCユニットに渡せ。2機のA級ペルセウスは、俺が片付ける!」
ブゥゥーン……と、脳が揺れる。身体が2重になるような奇妙な感覚の後、全高17メートルの巨人はカイザーと一体化した。




