第269話 御堂の疑問?
太陽光から膨大なエネルギーを得るZCS機関は、その稼動時に特殊な電磁波を発生させる。
ZCS機関を主動力とする重甲機兵と、それを運用する陸上戦艦では、その電磁波の干渉を受けてレーダーや無線通信が行えなくなる。そのため、主に音声や目視での情報交換に頼ることになる。
カイザー機のSユニットで、北方向に撃ち上げられた高高度信号弾をベルーナは確認した。南部方面軍の戦艦『ワイバーン』が、空中移送機を発進させた知らせである。
間もなく、空中移送機の機影は目視できた。空中移送機は1機のみで、その背にも重甲機兵を乗せてはいない。
カイザー機が収集した空中移送機のエンジン音、飛び方、その運動量をAIに分析させて、不自然な搭載物がないかを調べてみる。
「特に空中移送機の質量に不審な点はなし、ね」
Sユニットから身を乗り出したベルーナは、地上にいるカイザーに「異常を認めず」のサインを送る。
戦艦『胡蝶』では、御堂が青柳を付き添わせて左舷ドッグにいた。
「第2戦団の興田さんが、可愛がってた『嬢ちゃん』か」
興田主任から御堂のことは、この『胡蝶』にも伝わっていたらしい。おかげで『胡蝶』の工廠棟でもあっさりうち解けてしまう。この1週間の間に左舷、中央、右舷の各デッキを一通り見学させて貰えた。
三連型陸上戦艦は3つの各デッキが2機の重甲機兵を搭載できる。合計で6機の機体を搭載可能とするはずだが、今の『胡蝶』には左舷デッキで調整中のA級ジークフリードしか残っていない。
「右舷デッキの前部整備用台座は空席だったよね?」
「本庄郷領の第1戦団基地での修理に手間取ってるみたいですね。まだ編成を完了するには時間がかかりそうです」
ふーん……と返事をしつつ、ナーガオウ州議事堂包囲戦を思い出す。2番機が撃破した0066機や、御堂自身が戦った後に11番機がトドメを刺した0067機は主骨格に損傷を受けているかも知れない。それなら修復にも時間もかかりそうだ。
ふと、漠然とした疑問が御堂の脳裏を過った。
(11番機が格納庫にないってことは、日嗣皇子も出てるの?)
平和的な会談に「重甲機兵を持ち出すのか」と、やはり日嗣皇子を見直したことを、少し後悔する御堂だった。
S33中継基地の発着路。
戦艦『ワイバーン』から送り出された空中移送機が、着陸していた。空中移送機の周囲を、8機のB級ジークフリードが取り囲んでいる。
「もう少し、信用して欲しいものだな」
金塊の受け渡しに向かう兵を見ながら、東城准将はため息を漏らした。




