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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第九章

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第229話 誰かを守るための戦い

『近衛軍は、帝国民を守るためにあるの! 違うって言っても、そうなるのよ。絶対に、そうなるの! あたしが近衛軍の幹部になって、内側から近衛軍を変えてあげるから!』



 今となっては、途轍もなく昔のことに思える3軍合同演習。砂糖入りブラックコーヒーを受け取りながら、入鹿と交わした会話だった。


「玲とは、しっかり約束したわけじゃないです。でも……あたしは、あの時に『本気でそうしよう』って思ったんです」


 ナーガオウ州軍、イルドラ公国軍そして第2戦団による3軍合同演習……フラッグ戦の前日に、入鹿と交わした会話を、御堂は刀自古に伝えた。


「あたしのせいでネロさんを死なせてしまいました。その、ネロさんのおかげで、あたしはこうして生き延びているんです。本当なら生き延びた命で、その恩を返すべきだと思います」


 御堂は言葉を一旦切る。


「でも」


 刀自古は、御堂の話を黙って聞いていた。お花畑脳に付き合わされた「入鹿玲」に同情しつつも、御堂の迷う理由は何となくわかった気がする。


「ラインゴルドは、あくまで傭兵部隊ですからね。『誰かを守る』ために戦う集団では、決してありません」


「はい」


 刀自古の言葉に、御堂は反射的に顔を上げる。誰かを守るために戦う……その思いを刀自古が言葉にしてくれたことに少し嬉しくなる。


「とは言え……近衛軍は、御堂咲耶を採用しません」


「……」


「万が一、御堂咲耶を採用したいとの意見があっても、安全保障局が身元調査を行う際には、わたしが『不適格』と判定します」


「貴女が原因ですか!!!」


 やはり、この女は天敵だ……と御堂は再確認する。


「士官大学の進路希望の書類で、配属希望欄に『第4戦団』と記入したらエラーが出て提出できなかったんですよ。それも、相楽さがら行政官のせいですか?」


 士官大学の進路希望の件は、刀自古も初耳だった。


「いくら妾でも、そんなローカルな嫌がらせはしませんよ?」


「グローバルにされるより、ローカルでされる方がマシです!」


 大声を上げ始めた御堂を無視して、刀自古は少し考え込んだ。


「第4戦団は、他戦団からの移籍も含めて、おそらく募集をしていないのでしょう。月夜見つくよみ様が一人一人声を掛けて回っているようですから」


「有馬将軍が?」


「降格されたので、今は大佐ですよ。あの、人を見る目がない(・・・・・・・・)女に人選を任せるなんて……大兄おおえ様が心配でなりません」


「人を見る目がない女って……酷い言い方ですよ?」


 月夜見の『才能を見る目はあっても、人を見る目がない』を決定づけたのが御堂の存在だったのを、御堂本人は知らない。

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