第227話 卒業を控えて
帝国の首都・不死鳥京。その、都市の中央から少し北に寄った小高い場所に『皇城』と呼ばれる帝の本拠地がある。
この場所は、元はピラミッドのような自然な山があった。
その山の南側を大規模に切り土した後に、山全体が要塞化されたのである。この巨大な要塞をして『皇城』と呼び、帝が居住する宮と帝を代行する皇城府が置かれている。
そして、皇城近衛軍第1戦団と安全保障局の本拠地でもある。
安全保障局の本部。その来客用応接室で、御堂は相楽刀自古行政官を待っている。
刀自古は、安全保障局から第2戦団統括司令の月夜見の元へ秘書官として出向していた。月夜見が目をかけていた御堂とも、若干の遣り取りをする間柄ではあった。
今は、月夜見が第2戦団統括司令を更迭されたために出向の任務を解かれて、本部へ戻って来ている。
しばらくして刀自古が、応接室に到着する。第2戦団で月夜見の秘書をしていた頃とは異なる、安全保障局の制服姿だった。
第2戦団の制服は赤を基調にするが、安全保障局の制服は藍を基調にするようだ。そのせいか刀自古の印象が違って感じられる。
「御無沙汰してます」
御堂が立ち上がってお辞儀をする。
藍色の制服の刀自古は、第2戦団の頃の尖った感じが薄れている。そのことに御堂はホッとしていた。
「1ヶ月ぶりですね。御堂准尉も士官大学の方へ戻られているのかしら?」
御堂も、嵯峨州解放戦の後で仮配属を解かれて第2戦団を離れた。士官大学の卒業式までは春期休暇である。
「座間領の実家に戻ってました。士官大学は……ゴタゴタしてますから、落ち着かなくて」
「ああ、そうでしたね」
本年度の帝国士官大学は、創設以来の大混乱であった。
第3戦団が、叛逆行為により『帝の敵』を皇城府から宣言されたために、その第3戦団に仮配属していた士官候補生の処遇が問題となる。
第3戦団が『帝の敵』とされると直ぐに、士官大学は「第3戦団へ仮配属している候補生」に招集をかける。しかし、招集に応じた者は一部で大多数は戻らなかった。
「招集に応じなかった者は、第3戦団の一員として帝国直轄領では反逆者として指名手配されました。招集に応じた者も卒業は取り消されましたから……本年度の卒業生は、例年の5分の1だそうです」
「反逆罪での指名手配39名、卒業を保留された者11名。本年度の士官大学卒業者は14名ですね」
刀自古が、御堂の情報を補足する。秘密警察である安全保障局は、詳細まで把握している。
「御堂准尉。貴女は、数少ない本年度卒業生の1人ではあります」




