第222話 戦いの後
「GV3X型ジークフリートの部品は、欠片一つ残さず回収しろ」
興田主任の声が、スピーカーから響き渡る。『朱雀』中央デッキの整備員は、艦を降りて荒野に散らばっていた。総出で赤い砂の上に散らばった破片を回収するためである。
アルカナ機体『13番機』の実験機であるGV3Xの設計は、50年を過ぎた現在でも極秘事項だった。
「2時間後、半径200メートルの範囲をナパーム弾で焼却する。それまでに回収できるものは全部回収するんだ!」
中枢機構の部品も飛び散っている。機密保持のための判断である。
破壊されたGV3Xは、中央デッキに運び込まれ、現在は整備用台座に腰掛けている。
「……酷い!」
中央デッキに残っていた山根エリカ軍曹は、思わず声を上げた。
戦斧で砕かれた頭部は四散して、顔に相当する部分は残っていない。鳩尾の辺りまで食い込んだ斧によって、コクピットのある胸部は引き裂かれている。
「これ……修理できるんですか?」
縋るような気持ちで、興田主任の答えを待つ。
「B級だからな……何とか修理する術もあるんだが……」
天然のゼナ・クリスタルを骨格とするA級機体なら修理不能だ。B級機体は、人造ゼナ・クリスタルを合成し直すことで骨格自体の再生も可能ではある。
しかし、今は一刻も早くコクピットを取り出さなくてはならない。
「こっちはいい。嬢ちゃんのところへ行ってやりな」
「はい」
興田主任に促され、エリカは御堂がいるはずの更衣室へ向かった。
更衣室。
御堂は、下着姿のままロッカーの前で立ち尽くしている。御堂の頭もようやく落ち着いてきて、何が起こったのかを整理ができてきた。
GV3Xのバッテリー残量がゼロになり、戦闘モードが強制解除された。その直後、SV権限で「Cユニットは緊急脱出」をさせられたに違いない。
戦闘不能になったGV3Xが撃破される直前に、ネロは御堂を脱出させてくれたのだ。
バッテリー残量の警告がCユニットに表示されなかった理由も今ならわかる。
実験機であるGV3Xには、最初からバッテリー残量を警告する機能は搭載されていなかったのだ。
(青柳少尉もやったんだよね)
青柳礼子をSVとして迎えた際に、2番機と数度の模擬戦を行った。その時に、およそ1時間の戦闘でバッテリー切れを起こして戦闘モードが強制解除されたことがあった。
(あの時も、警告は出なかった)
ネロは、バッテリー残量を繰り返し警告してくれていた。それを無視していたのだ。
「サクヤ、大丈夫?」
エリカが、更衣室の扉を開けて入って来た。




