第220話 冥土の土産
およそ60メートルの距離で、2機のA級重甲機兵が対峙する。
柄の長さで15メートルの巨大な戦斧を、両腕で握るペルセウス型重甲機兵。もう一機は、ダラリと下げた右腕に打刀を握るジークフリード型重甲機兵。
深緑色のズングリとした体躯の機体は、重厚で丸みのある装甲を纏う。フルプレート型の甲冑を思わせる姿の機体である。
白い機体は、複数枚の金属板を組み合わせた垂れの鎧を纏っている。大きく張り出した肩部装甲により逆三角形のシルエットが特徴的なはずだが、ここにある機体は左腕を肩部から失っている。
2番機は、ゆっくりと前進してガガリウス機との距離を詰める。刃渡り8メートルの打刀よりも、ガガリウス機が手にする戦斧の方が間合いは長い。
2番機は、躊躇いもなく戦斧の間合いに脚を踏み入れた。
ガガリウス機は戦斧を振るう。
2番機は最小の動きで、機体を滑らせて戦斧を躱した。しかし、そこで前進するのを止め、後退して距離を取った。ガガリウス機に隙ができなかったからである。
ガガリウスもわかっている。大きく振り下ろす戦斧を躱されたら、再び振り上げる前に打刀の間合いに捉えらてしまう。だから、敢えて斧の振り幅を抑えて隙を小さくした。
2番機とガガリウス機は、互いに間合いを外した距離を確保する。
ガガリウス機と再び距離を取った2番機の、右肩に爆煙が上がる。右肩部装甲が弾けて吹き飛んだ。
そして右手の剣を地面に突き立てると、その空いた右手で胸部の鳩尾板装甲と腰部の草摺装甲を引き千切った。
更に、バックパックにある信号弾まで全て射出してしまう。
「肩も胸も腰も、装甲を排除しました。左腕もありませんから究極の軽量化です。バランス調整はお願いしますよ」
珍しく緊張気味の竜崎中尉が、有本大尉にサポートを要請した。
「任せろ。どんな動きにも、2番機を追従させてやる!」
地面に突き立てていた打刀を、再び右手に握る2番機。そして、それを見たガガリウスは口元をほころばせた。
「第2戦団最強のアルカナ機体が、この俺を相手に捨て身で戦ってくれるとはな。冥土への土産話ができたぜ」
戦斧を真横に構えて、右脚を引きながら機体の上半身を右に捻る。
縦に振り下ろすよりも、横に振り抜く方が振り幅は大きい。遠心力も乗せられ破壊力は増す。反面、動作が大きく間合いを外されたら隙だらけの右半身を晒してしまう。
それでもガガリウスは一撃に賭ける方を選んだ。
「小細工は無しだ。躱したところで、この巨斧が機体の一部でも掠めれば、剣を振るえねえところまで弾き飛ばしてやる!」




