第217話 思惑と打算
『指揮官がガードナー少将であるなら、第2戦団に対しては強烈な復讐心を持っていると思われます』
戦闘開始の直前に、ネロが言っていた言葉が御堂の脳裏に蘇える。
『降伏するよりも、差し違える覚悟で挑んでくると考えておくべきでしょう』
真に、その通りになっている。
GV3Xのコクピットは、様々な思惑と打算が交錯していた。
ネロは、御堂を後退させるべきだと判断する。
経験の浅い御堂には、この戦場は過酷すぎる。そして実験機であるGV3Xは、強力ではあっても長時間の作戦行動には適さない。バッテリー補給の連絡線が確保された戦場あるいは陸上戦艦の搭載機として運用するのが適切なのだ。
御堂は違う捉え方をしていた。
GV3Xと言う特別な機体を与えられているのに、作戦途中で戦線離脱するのは任務の失敗に感じられる。
そして、理不尽な戦死を目撃したショックは大きかった。止められるものなら、自らの手で止めたい衝動に駆られていた。
(退きたくない!)
刹那。
GV3Xは、後方に控えていたA級ペルセウス機に突進し、打刀を振るっていた。
「御堂准尉、命令違反です!」
ネロの声がCユニットに響く。
A級ペルセウス機は、GV3Xの刃を巨大な戦斧の柄で受け止める。戦斧の柄と打刀の刃で、両機は鍔迫り合いをする構図となる。
(指揮官のガードナー少将さえ倒せば、もう誰も戦わないはずだ!)
短時間に……一刻も早く!
誰も死なないうちに!
(バッテリーが切れる前に決着を付けてやる!)
A級ペルセウス機が相手では、得意の脇構えからの横一文字斬りは使えない。切っ先に遠心力を乗せるための間合いは、敵の主武装である戦斧に遠心力を乗せる間合いにもなる。破壊力は、圧倒的に敵の方が高い。GV3Xが剣を振り抜く前に、戦斧がGV3Xを粉砕するだろう。
(接近戦から、急所を突く!)
鍔迫り合いからの斬り返しなら、小回りの利く打刀の方が有利である。
そして、もう一つの打算が御堂にはある。
鍔迫り合いで、2機の重甲機兵が拮抗している状況なら、操縦系からCユニットを切り離せない。
SV権限でCユニットを切り離したら、その瞬間にGV3Xは戦闘力を失い、撃破されてしまうから。
この状態ならば、ネロも御堂をサポートせざるを得ないはずだ。
「御堂准尉! 直ちに後退しなさい!」
「もう、誰も死なせたくないんです!」
ネロにとって、御堂の返答は意味不明である。御堂の感じた、無駄死に対する嫌悪感は、ネロとは共有されていない。
「諦めて、地獄に相乗りして下さい!」
「お断りします!」




