第218話 諸悪の根源
15メートルの巨大な戦斧。
その長さは、重甲機兵の全高にも等しい。斧の刃の部分は2メートル程度、刃も決して鋭くはない。先端部の刃に遠心力を乗せて、その打撃力で敵の装甲を破壊するための武装である。
距離を詰めた鍔迫り合いは、この武装をしている機体には非常に戦いにくい。
しかし、ガガリウスが感じている不快感はそんなものではなかった。
「何故、2番機が出て来ねえんだ? 第2戦団は、俺に死に場所すら選ばせねえ気かよ!」
主武装の戦斧で予測された通り、トーチス傭兵団の正体は元アルメニア軍のガードナー部隊である。
奇しくも、因縁の2番機が最後の相手となるのは、戦場に生きた軍人として心地よさすら感じていた。その、軍人としての矜持に水を差してきたB級機体は、ガガリウスには不協和音でしかない。
「このB級を叩き壊して、2番機を引きずり出してやるよ!」
そして、同じ不協和音を2番機のコクピットも感じていた。
「あれは、妾の獲物です」
普段からおっとりして面倒くさがり屋の竜崎中尉が、戦いの相手に執着するのは珍しいことだった。
「あの方は、妾と戦うために祖国を捨ててイルドラに亡命したのでしょう。妾が相手をするのが、戦場に生きる者の礼儀です」
有本大尉は、2番機を臨戦態勢にしている。GV3XとA級ペルセウス機の間に隙間ができれば、すぐに2番機は飛び込める状態だった。
しかし、御堂はその隙を作らず、A級ペルセウス機から離れない。
御堂の戦績には、3機のA級機体を撃破した実績がある。そのうちの2機は、このGV3Xでの勝利だ。
御堂は、A級機体に対する劣等感を克服していた。しかし「自信」と「驕り」は紙一重でありながらも全く違う。
「御堂准尉、後退しなさい。バッテリーが持ちません!」
ネロは最悪の状況を想定せざるを得なかった。このA級ペルセウス機は、これまで御堂が倒してきたA級機体とは覚悟が違う。
「後退して下さい、間もなく戦闘モードは強制解除されます!」
「その前に勝ちます!」
バッテリー残量がゼロに近づけば警告が出るはずだった。警告からおよそ5分は戦闘モードは継続する。
(5分あれば、何とかできる!)
御堂には、このA級ペルセウス機が諸悪の根源に見えていた。
『帝国への復讐のために、祖国を捨てて戦い続けているわけですか』
元アルメニア軍のミハエル・ガードナー少将……その怨念が、勝敗の決したはずの戦争を長引かせて、理不尽な死者を増やしていると思えるのだ。
「……ここまでか」
一方、ネロは覚悟を決めた。




