第214話 戦場の違和感
ネロには、御堂が感じている違和感の正体はわかっている。本庄郷領での2番機との模擬戦で、竜崎中尉から指摘されたことだ。
……ルージュピーク演習場での掃討戦。
……ナーガオウ州都での議事堂包囲戦。
仮配属の士官候補生としては、御堂は格段の実戦経験を積んでいる。しかし、死を賭して戦う敵との戦闘経験は、やはり浅い。ルージュピーク演習場でのナーガオウ州軍との戦いも、議事堂包囲戦での第3戦団南部方面軍との戦いも「降伏よりも死を選ぶ」敵ではなかった。
「やはり、GV3Xは東門へ移動させるべきだったわ」
ネロは、御堂に聞こえないように呟いた。
2番機の損傷に関して、ネロには負い目があった。
西門防衛施設での戦闘で、地下工廠に侵入した味方機からの「地下工廠に重甲機兵がいない」との報告を受けるまで、敵の「地下バイパスを移動して背後へ回る」作戦を想定しなかったことである。
窮地に追い込まれた敵が取りうる作戦……想定されて然るべき動きを予測できなかった。
その負い目から、「2番機のサポートをするためにGV3Xが残る」ことを容認してしまった。
第2戦団の061機はタイガー機と、088機はイーグル機と交戦していた。
ここでトーチス傭兵団の動きに変化が見られる。タイガー機とイーグル機は、優位に戦いを進めているスネーク機と合流しようとしている。対GV3Xに戦力を集中して、一気に撃破するつもりだろう。
それを061機と088機が、足止めしている展開である。
「信号弾での指示や連絡もなく、目視の状況判断でだけ綿密に連携できる……よく訓練された部隊ね」
ガードナー少将が、アルメニア軍からイルドラ公国軍に亡命した際に付き従った兵士による部隊だろうか。規律も忠誠心も乱れたイルドラ公国軍の現状を知るネロには、イルドラ軍兵士とは考え難かった。
「そうすると、パイロット一人一人が第2戦団に強い敵愾心を持っているわけね。この面倒な仕事の追加料金は、月夜見様に請求してもいいのかしら」
嵯峨州から第3戦団を排除せよとの依頼に、第1戦団と調整中のラインゴルド傭兵機団に割って入ったのが月夜見だった。
いや。むしろ月夜見は、第3戦団南部方面軍の背後にある面倒な存在を予測していたのかも知れない。前統括司令官の月夜見が間に入ったことで、旗艦『朱雀』の派兵が当然の如く決まる。
併せて「御堂咲耶と言う才能だけはある」パイロットにGV3Xが委ねられていること、そして「実力を確かめて欲しい」との私的な通信があった。




