第211話 戦闘直前:トーチス傭兵団
都市国家が同盟関係で繋がる帝国では、都市の防壁の外には法はない。嵯峨州の西門を出た先の荒野は、無法の地域である。ここでの制約は、地表圏と宇宙圏の各勢力が合意した『星間協定』のみである。
しかし、所属を偽装したトーチス傭兵団は『卑劣な戦闘行為』を行ったものとして一切の保護を失っている。武装解除して投降しても命の保証はない。
ガガリウスのA級ペルセウスに続いて、B級ペルセウス3機が軍用輸送車両から立ち上がった。3機のB級ペルセウスは、ガガリウスのA級機体の肩部に腕を乗せて接触通信の回線を開く。
「一機でも多く、地獄の道連れにしてやりましょう!」
3人の部下たちは、それを合い言葉のように意思確認をすると、各々の機体をフォーメーションの定位置に移動した。
3人ともガガリウスと、ここで死ぬ覚悟を固めている。
「最初から、こうすれば良かったのだ」
ガガリウスは、今更ながら後悔の念を抱いた。
「俺の部隊に、小細工など必要なかった」
ラインゴルド傭兵機団だろうと、第2戦団だろうと、正面から戦い叩き潰せば良かったのだ。本国の仕掛けた謀略とやらに踊らされていた自身を恥じる気持ちが込み上げる。
「第3戦団南部方面軍に取り入り、帝国の西方域を混乱させる計画だと? そもそも敵対勢力と内通するような腐敗した連中を信用するのが間違いだったのだ」
今更ではあるが、部下たちの覚悟を聞かされたガガリウスは、目から鱗が落ちる思いを味わった。
「俺が信用すべきは、謀略を画策する本国でも、腐敗した第3戦団でもなかった。俺に命を預けてくれる部下だったのだ」
西門の扉の向こうには、4機の重甲機兵の機影が見えている。正面スクリーンのサブウィンドウに、その4機の機影を分析した情報が表示された。
「A級が1機とB級3機か。最後にいい勝負ができそうだ」
彼我の戦力は互角。そして4機とも、第2戦団の機体である。
ガガリウスは、4台の軍用輸送車両へ東門を目指して移動する指示を出した。
「ここに第2戦団の機体が揃っているってことは、東門にはラインゴルド傭兵機団の機体が向かったはずだ。ラインゴルドなら、傭兵同士ってことで多少は情けも掛けて貰えるかも知れねえ」
軍用輸送車両には重甲機兵の整備を行う整備兵の他、衛生兵などの非戦闘員が乗っている。彼らだけでも何とか生き延びさせてやりたい。
皇城近衛軍の第2戦団に捕らわれるよりも、遙かに生き残れる可能性は高いはずだ。
「後は……第2戦団が東門へ向かわないよう、ここで足止めする。俺たちの命でな」




