第210話 ガガリウス
西門に到着した4台の軍用輸送車両は、その頂部に掲げられたラインゴルド軍団旗を見て停止した。
「帝国近衛軍とは、こんなにも情けないものか」
ガガリウスはライル・バイル中佐を嘲笑った。
「たった1~2時間を、持ち堪えられないとはな」
その1~2時間で、自分を迎えに来たはずのたえ本国の陸上戦艦と4機のペルセウスが撃破されたのだ。これは自分自身に向けた皮肉でもあった。
ガガリウスとバイル中佐の目の前で、東門の大扉が観音開きに開き始めた。
幅20メートル、高さ30メートルの巨大な扉が中央からゆっくりと外に向かって開いてくる。大扉の向こうには、4機の重甲機兵の機影が見えた。
「そうだ、まだ東門がある! 東門の防衛施設で籠城すればいい!」
バイル中佐は、東門への移動を進言した。
「ああ、そうだな」
ガガリウスは、その進言を肯定した。しかし、それは本気ではない。ここにいる重甲機兵が4機と言うことは、既に東門に機体を送っている可能性が高い。
(こうなった以上、ここを死に場所にするしかなくなったな)
トーチス傭兵団の4機のペルセウスは軍用輸送車両の上で稼動準備は完了していた。
「俺のA級も出すぞ! 今更、隠しても意味はない」
量産型のB級と違い、A級は機体ごとに固有の癖がある。A級を出撃させれば、その機体の所属は明るみに出る。
「あ、あの4機を撃破すれば……何とかなるんだよな?」
第3戦団南部方面軍・嵯峨州駐屯部隊の司令官であるバイル中佐は、縋るような視線をガガリウスに向ける。
駐屯基地を失い第3戦団南部方面軍に居場所を失ったバイル中佐は、トーチス傭兵団の背後にある国家への亡命を画策してガガリウスについてきた。しかし、ガガリウスを迎えに来た陸上戦艦との合流に失敗したために、亡命も希望も潰えてしまった。
「俺たちが眼前の4機を引きつける。後ろから追ってくる第2戦団の旗艦を振り切って東門へ向かえ」
それが叶ったとしても、バイル中佐が目にするのは東門に翻るラインゴルドの軍団旗かも知れない。それでも、今この男から希望を奪う必要はない。数時間、数十分でも期待していればいいのだ。
ガガリウス自身は生き残ることは考えていなかった。正規軍が傭兵に偽装して他国へ介入を図ったのだ。星間協定で『卑劣な戦闘行為』とされる行動を取った主犯として、本国からも切り捨てられるだろう。
「俺たちのことは構うな。一機でも多く、道連れにしてやるからな」
ガタガタと身を震わせているバイル中佐の肩を軽く叩くと、ガガリウスは自分の機体に乗り込むために操縦室から外へ出た。




