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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第八章

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207/234

第207話 指揮官室制圧

 安永やすなが少佐は、西門・防衛施設の指揮官室に1人だった。


「酷えなあ。この指揮官室に来てくれる味方が1人もいねえのかよ」


 司令官が逃げた……などと、大々的に施設内放送があれば状況を確認すべく部隊の幹部たちが、指揮官室へ確認しに来るはずではないか。そうならないと言うことは、駐屯部隊司令官のライル・バイル中佐とその取り巻き連中全員が一緒に逃亡を謀ったと考えられる。


「ラインゴルドさんよ。あと第2戦団でもいいから、早く指揮官に来て占領してくれよ」


 指揮官室が占領されれば、施設内での戦闘も終わる。そうすれば無駄に兵員が命を捨てなくていいはずだ。安永少佐は、本気でそれを願っていた。


「バイル中佐におべっかを言っておけば、俺も一緒に逃げれられたのかなあ」


 いや、そうなれば施設に立て籠もった兵員は、司令官逃亡を知らずに1人残らず死ぬまで戦うことになったかも知れない。敵が指揮官室に辿り着いた際には、自分が状況を説明することで少しでも早く事態を収拾できるかも知れない。

 今は、自分にそう言い聞かせていた。


「余計なことをしないでくれよ」


 モニター上の、1500メートル先の建設中のビル最状態に陣取ったB級ジークリードの映像を拡大表示させて、安永少佐は呟いた。

 機体が手にしているのは、対重甲機兵用のロケット砲。着弾して爆発すれば、粒子ビームほどではないが、都市の建築物にも多大な被害が出る。


「地下バイパスの隔壁を数枚ぶち抜いてるだろうな」


 地下部分の搬入ルートを逆に辿って地下バイパスへ出て、更に隔壁を破壊して移動したのだろう。ラインゴルドの背後を取った奇襲作戦としては秀逸だった。

 本当は施設前の広場で展開する2機のジークフリードを支援するための作戦だったのだろうが、唐突に現れた2番機によって計画を狂わされたのだろう。

 たった一機だけで孤立してしまったのだ。



 指揮官室の扉の外に、武装した兵士数名が現れた。ラインゴルドの軍服である。

 安永少佐は両手を上げて、兵士に向き合う。指揮官と思われる兵士から簡単な質問を受けながら、施設の状況を説明した。

 ……駐屯部隊司令官のライル・バイル中佐の逃亡

 ……施設を管理するセキュリティコードが改変されていること

 セキュリティコードの改変と聞いたラインゴルドの指揮官は怪訝な顔をしたが、指揮官室の扉が銃で施錠を破壊されているのを見て納得した。



 西門・防衛施設の屋上に、ラインゴルド傭兵機団の軍団旗が高く掲げられた。施設の占領を示す正式な合図である。


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