第208話 2番機の復讐
施設内の兵員で最も階級が高い安永少佐は、ラインゴルトに対して速やかに投降した。ラインゴルド傭兵機団は西門・防衛施設の指揮官室を制圧した。
今は、西門の最上部にラインゴルドの軍団旗がはためいている。
左腕を失った2番機が、ラインゴルドの軍用輸送車両へ近づいてロケット砲を取り出した。
「どうするつもりだ?」
Sユニットの有本大尉が、Cユニットの竜崎中尉に問いかけた。
「決まってるじゃないですか。さっきのお返しをするんです」
2番機の指揮下にある2機のB級GV4に指示して、ロケット砲へ弾を装填し、右肩に担がせた。そして砲身を1500メートル先のビルの最上階にいるB級機体に向けた。
「既に施設の占領は完了したのだから、あのB級に戦う理由はない。投降の勧告をするべきだろう?」
「あの機体が、投降の信号弾を撃ち上げる前に撃ちます」
その言葉が終わらぬうちに、2番機が構えたロケット砲から装填した全弾が撃ち出される。とは言え、竜崎中尉の剣技は超一流だが射撃は上手ではない。
5発のロケット弾は、建設中で骨組みだけのビルに立つ動かない重甲機兵には当たらなかった。5発のうち3発は、重甲機兵の上方へ逸れる。そして2発が、ビル骨組みの鉄骨に命中し、炸裂した高熱で鉄骨を溶かす。
溶けた鉄骨は崩れて、ビルを大きく傾ける。足場を失った重甲機兵は12階の高さから地表へ落下してしまう。
B級のパイロットに、自由落下状態の機体を主推進機関で制御するテクニックはなかった。地表に叩き付けられた機体は、半壊状態でパイロットも生きているとは思えなかった。
そして、12階建てのビルを飛び超えた3発のロケット弾は市街地へ落下し炸裂した。
「……おい」
「住民の避難は完了してます」
市街地の火柱を見た有本大尉上げた声に、竜崎中尉はサラリと応えた。西門から半径5キロメートルの範囲で住民は避難しているはずだった。
「どうせなら、指揮下のB級に撃たせれば良かったんだ。お前より、射撃は上手だろう」
「あら、そうですね。妾、頭に血が上っておりました」
竜崎中尉に声のトーンが僅かに変わった。
「やっぱり、有本様の指示を仰ぐべきですね。間違いがありませんもの」
どうやら本当に頭に血が上って衝動的に動いていたらしい。普段から「超」の付く天然ぶりだが、それでも愛機の損壊に関しては感情的になっていた。
「後は、トーチス傭兵団だな」
嵯峨州都市内の戦力は、これで全て鎮圧した。
合流に失敗したトーチス傭兵団が西門に向かって反転したはずで、残る戦力は4機のペルセウス型である。




