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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第八章

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206/232

第206話 ビジネス

 ガタン……。

 黒煙の中から、破壊された2番機の左腕が地表に落ちた。御堂の背中で、まるで自分の腕が失われたような悪寒を感じた。


「8時の方向、距離1500メートル。建設中のビル最上階からロケット弾による狙撃です!」


 GV3X(サンダーバード)の機械眼球が、鉄骨の骨組みを保護シートで包んだ建築物にいるB級ジークフリードを捉えた。重甲機兵用のロケット砲を、西門広場のラインゴルド傭兵機団に向かって構えている。


「ちぃ!」


 撃ち返してやりたいが、今のGV3X(サンダーバード)は近接武器の打刀しか持っていない。


「ネロさん、軍用輸送車両(クローラー)にロケット砲ありましたよね?」


GV3X(サンダーバード)は近接戦闘に備えていて下さい」


「あれ、敵の最後の機体ですよ!」


「脱出に失敗したトーチス傭兵団が、戻って来るはずです」


 そうなれば……左腕を失った2番機の穴を埋めるのは自分の役目だ。しかし、目の前にいるのは別の敵である。



 左腕を失った2番機だが、パイロットである竜崎中尉と有本大尉は至って冷静だった。狙撃より一瞬早く、1500メートル先の敵機を有本大尉は発見していた。

 刹那のタイミングで知らせを受けた竜崎中尉は、左腕を犠牲にして、損傷を最小に留めていたのである。


「12階建ビルの屋上ですか。どうやって登ったのでしょう?」


「建設中のビルだからな。大型機械を搬入するためのクレーンが設置されている。まだ床が施工されてないから、重甲機兵の機体を屋上まで持ち上げるのは可能だ」


 クレーンを操作する者がいるはずで、支援する工兵部隊と一緒だろう。


「あのジークフリードはどうしましょうか。空中移送機エアブースターで近づいても狙撃されてしまいます」


「放って置くしかない。近づこうとすれば狙撃されるが、逆にそれ以外の攻撃はできないし、身動きも取れないはずだ。1500メートル先に固定砲台を設置されたと思っておけ」


 不意打ちでなければ1500メートルの距離からの射撃は躱せる自信もあった。


「どうせB級だ。バッテリーが切れれば戦闘モードが強制解除されて射撃もできなくなる」


 工兵部隊が弾丸を補給できても、バッテリー交換はできない。せいぜい数時間しか機能しない固定砲台である。



 ネロも、有本大尉と同様に「ビル屋上のB級ジークフリードは捨て置く」ように指示を出した。

 GV3X(サンダーバード)も、標的にされないよう遮蔽物に機体を隠す。


「いっそ、こちらからロケット砲で撃っちゃいませんか?」


「建設中のビルを壊してしまいます。やる時は、第2戦団の機体にやって貰います」


 あくまでネロは、ラインゴルトの機体では都市に被害を出したくなかった。

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