第200話 ネロの打算
西門の大広場を遠巻きに監視していたGV3Xの近くに、2機の空中移送機が着陸した。搭乗していたのは『朱雀』で、2番機の指揮下にいるGV4である。
2番機が仕掛ける奇襲のために、合流を求める信号弾を敢えて上げなかったようだ。GV4が、GV3Xの左肩に腕を触れさせて接触回線を開いた。
「これより、2番機以下3機はラインゴルド傭兵機団の指揮下に入ります」
「指揮下に入るって、かなり勝手にやってらっしゃるようですけど?」
「……竜崎中尉ですので」
そう言われて、ネロ自身も思わず納得してしまう。
まあ、いいだろう……とネロは考える。第2戦団との戦闘で都市に被害が出ても、それはラインゴルド傭兵機団のせいではない。都市への賠償や補償が発生するなら、第2戦団か皇城府に対応を押しつけられる。
第3戦団の2機のジークフリードは、2機ともにビーム砲を2番機に向けて連射している。
「あら?」
この近距離ならば、粒子ビーム砲を捨てて打刀を抜くはずと思っていた竜崎中尉は、2機のジークフリードの戦い方に少し困惑する。
「あくまで、粒子ビーム砲を手放さないつもりでしょうか?」
「練度が低いために、武装の切り替えができないのかも知れないな」
2本の腕を有する人型兵器の利点は、状況に応じて武装を持ち替えられることだと言える。そのために重甲機兵は、火器装備で出撃する場合でも標準装備の剣は必ず携帯している。
既に敵機は、2番機の剣の間合いに入っていた。それでも剣を抜かずに粒子ビーム砲を、2番機に撃ち続けている。
「早く片付けておけ。光学兵器のエネルギーを減衰させると言っても、バリアーを張っているわけではない。マグレ当たりも有り得るからな」
「承知しました」
右脚の踏み込みに合わせて、バックパックの主推進装置をフル出力にする。
対峙していたジークフリードのパイロットの眼には、主推進装置の強烈な閃光に残像を残して接近する2番機は瞬間移動したように見えた。
2番機の突き入れた剣の切っ先は、腹部で金属板を組み合わせる垂れと垂れの隙間を突いてコクピットを下から貫いた。
2番機が第3戦団の1機を屠ったタイミングで、ネロはGV3Xに信号弾を撃ち上げさせた。『突入せよ』の合図である。
西門の防衛施設周辺に散らばっていた5機のジークフリードは一斉に施設を目指して移動し始める。
「3機と聞いていたのに、あと1機しかいませんよ?」
ラインゴルドの動きを意に介さない竜崎中尉は、獲物が予定より少ないことだけを気にしていた。




