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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第八章

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198/252

第198話 ネロの誤算

 午前7時45分……時間を確認したネロは、焦燥感を覚えていた。

 西門の前に立つ3機のジークフリードのうち1機が施設の中へ消えた。今、西門の前には2機しかいない。


「ネロさん、1機が門の中へ戻りました。外にいるのは2機です、チャンスじゃないですか?」


 Cユニットの御堂は、一気にたたみ掛けるチャンスではないかと思った。


「いえ。まだです」


 こちらから『朱雀』へ送った空中移送機エアブースターは、無事に合流を果たした。それから『朱雀』が撃ち上げた信号弾で、都市外でのトーチス傭兵団の回収を阻止したことも知れた。

 合流に失敗した4機のペルセウスが、短時間で西門に戻って来てしまう。


「敵は、B級機体のバッテリー交換のローテーションを回し始めたのでしょう。こちらも準備が必要です」


 正直に言えば、現状はネロの想定外の状況である。

 嵯峨さが州も第3戦団駐屯部隊も、共に帝国側の陣営で「身勝手が過ぎる不良やんちゃ坊主にお仕置きする」ような仕事だと考えていた。しかし、不良やんちゃ坊主は既に反国家勢力に取り込まれて『お仕置き』ではなく、本格的な『戦争』になってしまった。

 短期決戦を想定していたラインゴルド傭兵機団は、バッテリー補充の連絡線が脆弱だ。



 西門の防衛施設にも非常用の発電装置があるため、敵・重甲機兵は直ぐ間近で補充を得られる。対して、ラインゴルドの重甲機兵は、南門の陸上戦艦に戻らなければならない。

 ここ(・・)から南門まで、空中移送機エアブースターでも往復には30分を要する。軍用輸送車両(クローラー)での移動なら往復に2時間近くかかるだろう。駐屯基地が無事であったなら、そこを拠点とすることもできた。

 駐屯基地とその周辺施設を自爆させたのは、ラインゴルドの重甲機兵に大きな足枷を付ける効果はあったと言える。



 施設内に一旦消えたB級機体は、20分程度で再び配置に戻った。そして別の機体が施設の中へ入って行く。


「消耗したバッテリーを、満タン充電したバッテリーと交換してるのでしょう」


 20分あれば、2機のB級ジークフリードを撃破する自信は御堂にはある。しかし、ライフル型の粒子ビーム砲を乱射するであろう敵の攻撃で、都市への被害を最小にする方法が思いつかない。


「住民の方々は、避難できたんでしょうか?」


「想定される戦闘領域での避難は完了しています。西門から半径5キロメートルには、住民はいないはずです」


「……5キロ」


 大気と地磁気により威力が減衰されると想定した避難距離だろう。粒子ビームの到達距離はもっと長い。


「やっぱり、撃たせちゃいけないんだ」

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