第197話 籠城戦
陸上戦艦との合流に失敗したトーチス傭兵団長ガガリウスは、反転して嵯峨州の西門防衛施設を目指していた。重甲機兵1機を輸送する軍用輸送車両の中で、第3戦団南部方面軍のライル・バイル中佐に詰め寄る。
「どうして、第2戦団の旗艦が出てきた? それもラインゴルトと連携しているのは、どう言うことだ?」
「し……知らん。今の第3戦団には、皇城府からの情報は一切入ってこないんだ」
「あの、仮面女が更迭されたと言ったのは、お前ではないか!」
統括司令であった月夜見が更迭され、第2戦団は司令官不在のはずである。それ故に第2戦団が機能不全に陥っていると判断して、第3戦団の周防崎統括司令は皇城府に対しても強気の対応をする決定を下した。
『現在の皇城府に、第3戦団を駆逐する戦闘力はない』
『ラインゴルド傭兵機団の攻撃さえ凌げば嵯峨州は維持できる』
ガガリウスにそう提言したのは、バイル中佐だった。当初の目論見は全て破綻したと言える。
嵯峨州の発電施設を占拠し電力供給を人質として議会に圧力をかける作戦は、嵯峨州が本庄郷領から機甲路経由の有線ケーブルで電力供給を受けることで失敗した。
トーチス傭兵団の背後組織を悟られないために、撃破された機体を駐屯基地ごと爆破したしたにも拘わらず、都市外の荒野で遭遇した『朱雀』に陸上戦艦まで拿捕されてしまった。トーチス傭兵団の実態は把握され、第3戦団南部方面軍の外患誘致は動かぬ証拠を握られることになるだろう。
駐屯基地を失ったバイル中佐は、既に第3戦団南部方面軍にも居場所はない。ガガリウスと共に嵯峨州を脱出し、トーチス傭兵団の背後にある国家に亡命するはずだったが、それも潰えた。
「本国も南部方面軍も、このまま黙ってはいない。一日か二日のうちに増援部隊を派遣してよこすはずだ。それまで、西門防衛施設を拠点として籠城するぞ」
ガガリウスの籠城作戦に、バイル中佐は反発する。
「そ、それなら……駐屯基地を自爆させなければ良かったんだ。その方が、籠城しやすかったものを……」
「お前の不確かな情報のせいだろうが! 第2戦団の旗艦が待ち受けているなら、誰が都市外へ逃げるものか」
旗艦『朱雀』の重甲機兵は、第2戦団の精鋭であり、戦団最強の2番機がいる。B級機体だけの現有戦力で『朱雀』の重甲機兵と戦えるはずがなかった。
「とにかく2日だ。2日間、西門の防衛施設で籠城する。2日を過ぎたら、お前たち第3戦団は、投降するなり好きにしていい」
ガガリウスは、ガタガタと肩を震わせているバイル中佐の背中を叩いた。




