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Only Life of Arcadia  作者: kaisen
第2章 タルトレット
48/103

47.スタッフカゲツの戦績

一日投稿できず申し訳ありませんでした。

よろしくお願いします。

<BATTLE START!!>


 遂に攻城戦が始まった。

 この競技の勝利条件は、相手の陣地にあるフラッグを取ること。

 つまり、攻撃戦力である俺は、相手の陣地に突っ込んでフラッグを奪取すれば良いのだ。


 ただ、問題はこちら側も敵側も、初めは互いの陣地がどこにあるのかがわからないということだ。

 だから、攻撃戦力は探索することから始めなければならない。

 そこで、環境調査が活きてくるのである。

 全くわからない土地を闇雲に探してもしょうがない。


 俺たち攻撃戦力は、分かれてまずは索敵及び探索に集中することにした。

 防御戦力は、自陣に残って周辺警戒。コータは自陣付近で遊撃と索敵だ。


 俺は探索において、コータと考えた作戦を使うことにした。


「“拓く航路、反転する潮流、燃え盛る灯は此方に。迷える魂よ、泡末の現へ”<外ツ國(トォート)()還リ來タル禍ツ舟(ヴィシュワート)>!!」


 走りながらオーブの詠唱をする。


 いつも通りに、天に昇った光が魔法陣となって降りてくる。

 しかし、キャロンを呼ぶ時よりも遥かにコンパクトなサイズである。


 地面にそれが接し、現れたのは、“ローディア大丘陵地帯”の“怪鳥ギール”だ。

 空を飛べるモンスターは今まであまり出会っていないが、やはり空中にいられるというのは大きなアドバンテージだ。

 俺はこいつにフラッグを探して攻撃するという指示を出して放った。


 今回のギールの役割は、フラッグを空中から探すとともに、相手の守備戦力の位置を確認することだ。

 もし仮に相手の守備戦力にやられたとしても、空中にいたはずのモンスターが消えれば、モンスターの ポップしない“スイーティオの森”では相当に目立つ。

 やられた場所から逆算して、敵の位置、あわよくばフラッグの位置を確認しようという戦法である。


 そして、俺はギールの飛んで行ったのとは別の方向に走る。

 これで相手の目を撹乱することもできるだろう。

 そう思い、いよいよ本格的に周辺を探そうとした時だった。


 バチバチバチ!


 と大きな音が聞こえて、俺は歩みを止めた。


 周りを探っても特に変化はない。

 何の音だったのか疑問に思うも、答えが分からず動けない。


 埒があかないので、ここはひとつ実験をしてみる。


「“拓く航路、反転する潮流、燃え盛る灯は此方に…”」


 その瞬間、またバチバチバチと音が聞こえ、今度は何か光の帯のようなものが俺に向かって飛来した。

 サッと身を躱すとその光は後ろの木に当たって燃える。


 炎か電撃の類だ。

 つまりは、敵が近くに潜んでいる。


 出てきてくれれば嬉しいけれど、出てきてくれるとも思えない。

 ここは、撤退しよう。


 攻城戦では、一度死んでしまうとその回の競技に出られなくなる。

 無理に突っ込んで死ぬよりかは、確実に生きることを選べってコータにも言われたからな。

 

 俺が撤退する方向でバックステップを踏んでいくと、攻撃が苛烈になった。

 しかし、避けられないほどではない。

 確実に避けながら下がっていく。


 すると、相手が大声を張り上げた。


「ちょっ!えっ!逃げるわけ!?」


 いや、逃げるでしょ。

 と思いながらも、全く声を出さずに撤退する。

 今回、スタッフはなるべく声を出さないでほしいというラトさんからの申し送りがあったからだ。

 そりゃ、戦闘に必要な詠唱とかは別だが、身バレも怖いから黙って頑張ることにした。

 無視してるから気持ち良くは無いけど。


「マジで待てって!ちゃんと戦えよ!」


 いやいやいや、さすがにそれはおかしいでしょ。

 あなた守備戦力じゃないの?

 敵が逃げてありがたいとか思えよ。


「くそっ、こうなったらとことんやるしかねぇな!」


 コイツ、ルール理解してないんじゃないか?

 こんなのを守備に置いて大丈夫なんだろうか。


 期せずして誘い出しが成功したので、俺はなるべく遠くに逃げることにした。

 本当は合流して数の優位を保って、安全に倒したいが、人数の関係でさすがに厳しいため、これは一人で対応するしかないだろう。


 追いかけながらあまり攻撃を仕掛けて来ないことを見ると、相手は”召喚型”か“兵器型”だろう。

 俺は、詠唱の暇を作らないために、なるべく複雑な進み方をした。

 ちょうど何度か採取に来た場所だったので、俺自身に迷いはない。


「ちょこまかとめんどくせーな!もう止まれよ!」


 俺もそろそろ決着をつけに行かなければならないと思っていた。

 少しだけ、ステップを緩めて木立の中に身を隠す。


「はっはー、ようやく止まりやがったか!っしゃ!俺の最強のオーブの力を見せてやるよ!」


 なんかテンション高くて面倒な人だなあ…。

 とりあえず、詠唱してキャロンを呼んでみるか。

 そう思った直後だった。


「<サンダーボルト>!!」


 うおっと!

 バチバチという異音が俺の耳に届いたかと思うと、近くの木々が燃えていった。

 直前に見えた白い閃光は先ほどと同じものだろう。

 今見た感じ、これは電気系の攻撃が木々を発火させているのだと思う。

 速度がある攻撃だから、正面切って躱すのはちょっと無理がある気がする。

 どうしたものかと考えていると、あいつの声が高らかに響く。

 

「出て来いよ!ビビってんじゃねーぞ!!」


 俺の隠れている木立の近くに大量の雷撃が着弾する。

 一気に炎が燃え広がり、俺の木まで危なくなってくる。

 ここは攻めるしかないか。


「“拓く航路、反転する潮流、燃え盛る灯は此方に。迷える魂よ、泡末の現へ”<外ツ國(トォート)()還リ來タル禍ツ舟(ヴィシュワート)>!!」


 周囲が燃えている中、光が天に昇っていった。

 俺は燃える森に身を隠しながら、様子を伺う。

 降りてくる魔法陣は、ギールの時よりは大きい。

 地面に降りてくる魔法陣を警戒してか、相手の攻撃も一時的に収まった。


「オーブを使われちまったか…“召喚型”か?まあいい。なんにしろプレイヤーを倒してしまえばこっちのもんよ!<サンダーボルト>!!」


 マジか!

 俺の退避した場所付近に、雷光が飛んで来た。

 驚くべきはその軌道だ。

 さっきまで俺のいた場所に飛んでいったかと思ったら、途中でえげつない角度で曲がってこちらへ来たのだ。


「あ、テメェそっちか!」


 相手の向きが変わる。

 俺の場所をわかっていなかったということだろう。

 恐らく、奴のオーブは“魔術型”で雷撃を飛ばすのが基本だ。

 そして、そこに軽いホーミング機能が付与されているのだろう。

 単純ながら、侮れない能力だ。


 しかし、惜しむらくは使用者の戦闘センスの無さだ。

 俺ならこのオーブを近接戦に持ち込んで使う。

 近距離で放たれる早くてホーミングしてくる攻撃なんて躱す方法がないからだ。


 残念ながら、俺の方を攻撃してもいいことはない。

 先程呼び出したのは、“大角牛”4体だからだ。

 中級モンスターは放っておいてどうにかなるものではないし、やつらは頭数が増えるほど、濃密な突進攻撃をお見舞いしてくれる。

 俺は実際に受けたからよくわかる。


「ブルムォォオ!!」


 解き放たれた四頭が思い切り敵プレイヤーを引きに行く。

 結構な近距離で召喚したから、ほとんど間もなく攻撃が当たる。


「な…!ブゴフォァ!!」


 敵プレイヤーは盛大に吹っ飛んだ。

 悠長なことしてるからそうなる。

 確かに相手の言ってるように、召喚系とか設置系の能力を持つオーブは持ち主を倒せば意味がなくなるが、だからといって放っておいていいものではない。

 要するにあんまり対人練習をしていないプレイヤーが知識だけで行動した結果なのだ。


 俺は初めて間もないけど結構な対人戦をやってるから、もう慣れてきたし、コータがいろいろ指導してくれることで分かっていることも多い。

 つくづく仲間の大切さを実感する。


「くっそ!あがっ!!この、牛ども、結構つよ…!!」


 バァンと派手な音を立てて敵プレイヤーが吹っ飛ぶ。

 結構な体力を持ってったはずだ。


「くそがぁぁぁあ!!<サンダーボルト>!!<サンダーボルト>!!<サンダーボルト>!!」


 やけくそになったのか、雷撃が連射される。

 そんな適当にはなった攻撃が当たるわけがない。

 しっかりと躱して槍を構える。

 まあ、多分、“大角牛”が何とかしてくれるだろうけど。


 墜落して地面に体を打ち付けた敵プレイヤーに“大角牛”が接近していく。

 雷撃が何度か飛んできているが、全員を倒すには至らない。

 俺から注意が逸れているので、俺は場所を移動して背後を取りに行った。


「くっそうぜぇな!!倒れろよ!」


 癇癪でも起こしているんだろうか。

 少し、俺よりもプレイ歴が浅い感じだ。

 もう、終わりにできるな。


 俺は背後から一撃を加えた。

 短い断末魔とともに、敵プレイヤーの姿が光の粒子に変わっていく。

 

 ちょっと後味が悪いけど、しょうがない。

 これは、対戦なのだから。


 俺は、暴れまわってくれた“大角牛”を消した。

 俺のオーブはやっぱり、多対一を人工的に作れることにあるなということを実感しつつ、俺は今倒したプレイヤーと邂逅したあたりを目指して走り出す。


 攻城戦はまだ始まったばかりだ。


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