20.就職と女の子
よろしくお願いします。
※2018.5.13.0:58現在、重複投稿してしまったため、片方を消去しました。
混乱させてしまった皆様、申し訳ございませんでした。
【蒐集家】の話なんて、どうして出てきたんだろうか。
ユーカたちに尋ねると、特殊なアイテムが必要ということだった。
「どうしても最高のお茶会が開きたいの。本当は私が外に出ていけたらいいのだけど、今日はラトに外出禁止って言われてるし…。誰かに頼むしかないの」
「そこで、カゲツを紹介したってわけ。あなた、ちょうど無職でしょう?【蒐集家】はなかなか優秀な上に、就職する条件もそろってるのよ?今がチャンスじゃない」
いや、うん。
パンナ姫からの依頼だろ?
こんなにいい子のためならやるけど、ユーカは来ないのか?
偉そうに俺のことをパシろうとして…。
「ユーカもくればいいじゃないか。俺1人だと結構時間がかかるものでも、2人でいたら早く終わるでしょ」
「ばかね。話を聞いてなかったの?私は、アリスちゃんの服を作らないといけないの。あなたに付き合ってる暇はないのよ」
「ごめんなさい。私、まだデザインを選びきれてなくて…」
うっ。
パンナ姫にそういう目をされると、弱いなあ。
ユーカが若干愉快そうににやけているのが気にくわないけど、今回は見なかったことにしよう。
「はあ、分かったよ。特に俺にできることもないみたいだし、おとなしく外に行くか」
「ありがとう!カゲツお兄ちゃん!これで最高のお茶会ができるわ!」
「よかったわね。カゲツお兄ちゃん?」
「…ユーカ後で覚えてろよ?」
やっぱりユーカは許さないことに決めた。
そりゃ、妹か弟がいたらかわいいかなあって考えたことはあるけどさ。
からかわなくてもいいだろうに。
「それで、どうやったら就職できるの?俺は一回も就職したことないからわからないんだけど」
「【職業】には、いくつか就職するためのルートがあって、ハロワでデフォルト【職業】に就く方法と、いろんなイベントとか条件を満たして、自分で【職業】に就く方法があるの。今回は後者ね」
「私の【職業】、【蒐集家】になるには、現在【蒐集家】の人に、“蒐集図鑑”ってアイテムを貰う必要があるの」
パンナ姫はそう言うと、とてとてと走り出し、ベッドの方へ向かった。
何やらごそごそとしたかと思うと、すぐにこちらに戻ってきた。
腕に抱えてきたのは分厚くて古めかしい本だった。
「これ!これが“蒐集図鑑”なの。【蒐集家】になったら、あってもなくても変わらないからあげちゃうね」
「え、ありがとうございます」
「むー。さっきまで親し気に話してくれたのに、急に敬語になった!」
「いや、さっきもユーカと話していただけで、パンナ姫には敬語を使おうと…」
俺が言い訳していると、パンナ姫が頬を膨らませてうなり始めた。
す、拗ねてる…?
ユーカが横からささやいてくる。
「パンナちゃんはお姫様といっても、まだ小さい女の子なのよ?フランクに接したがってるの。察しなさいよ」
「そんなこと言われても…」
「…カゲツお兄ちゃんが、普通に話してくれるまで、これ、渡さないから」
「えぇ…」
もともとほしいって言ったわけじゃないんだけど…。
とりあえず、パンナ姫に合わせてタメ口で話すか。
こんなに不機嫌な表情されちゃかなわないしなあ。
「わかった。ごめんね。これからこうやって話すけど大丈夫?」
途端に、パンナ姫は明るい表情になった。
満面の笑みでうなずく。
「うん!ありがとう!」
「はあ、俺、小さな女の子にも思い通りに使われるのか…」
「残念だったわね。女の子はみんな強いのよ」
ユーカのいうことは案外正しいのかもしれない。
“蒐集図鑑”を差し出して、にこにこ顔のパンナ姫は、女の子ではなくしたたかな女性のようにみえる。
「ありがとう。それじゃあ、これは受け取るよ」
“蒐集図鑑”を手にした途端、システムメッセージが目の前に現れた。
――――――――――――
<ATTENTION>
あなたは【蒐集家】になる権利を得ました。
【職業】を【蒐集家】に変更しますか?
はい / いいえ
――――――――――――
なるほど。これに答えたら【職業】が変わるわけか。
初めて【職業】を持つから、少し緊張するな…。
はいのコマンドをタップする。
――――――――――――
<CONGURATULATION>
おめでとうございます!
あなたは【蒐集家】になりました!
これにより、以下の通りの変化が起きます。
・ステータスに【蒐集家】ステータスが追加されました。
・【蒐集家】の技能“蒐集”を獲得しました。
・“蒐集図鑑”がコマンドに追加されました。
・今までに目にしたアイテムとモンスターが、“蒐集図鑑”に登録されました。
・【職業】経験値を得ました。
・【職業】レベルが5になりました。
・初回就職ボーナスで、基礎レベルが20になりました。
・ステータスの変化を確認して下さい。
【職業】ステータスによる追加部分は【】内に±Xの形で表されます。
――――――――――――
なんか、ゲームを始めてから一番長いメッセージだった。
こりゃあ、基礎レベルだけ上げてたら舐められるわけだ。
「どう?ちゃんと就職できた?」
「うん。できたみたいだ。この、技能ってやつが使えたら、目的の茶葉を採ってこられるわけ?」
「そうなの!あんまり森の奥の方にはなくて、外に出られたら私でも採ってこられるから、危険もないよ」
それはありがたいな。
まだまだ戦闘面には不安が残るから。
今、【職業】を得て、全体的にステータスが向上したけど、やっぱりレベルが高くないから、効果もそこまでではないみたいだし。
「わかった。その茶葉の特徴を教えて」
「口で説明すると面倒だから、私の“蒐集図鑑”を見せてあげる」
パンナ姫はそう言って、コマンドをいじりだした。
この世界ではNPCもコマンドを使えるからな。
プレイヤーがコマンドを使っていることに違和感を覚えなくて済むっていう点ではありがたい気づかいだ。
「んしょっと」
そうしてパンナ姫が取り出したのは、かわいく飾られた“蒐集図鑑”だった。
いかにも彼女の趣味らしい、ゆるふわなテイストに仕上がっている。
“蒐集図鑑”がアイテムにできることと、細かいところまでこだわるパンナ姫に驚いた。
「えっとね、これだよ。“クラウン茶葉”。自然な甘みがあふれてくるような感じで、とってもおいしいの!」
「これ、この国でしか味わえないのよね。イベント期間じゃなかったら売ってるんだろうけど、今回は人が集中しすぎて特産物の類はあらかた品薄らしいわ」
「それを確実に飲みたいから俺にとって来いってことね。了解」
VRMMO世界じゃ、おなかは膨れないけど味が何となく感じられるっていうのも、少し考えものだよなあ。
まあ、そのおかげでVR飯なるものを現実で作るのが一種のブームになってるみたいだけど。
「あ、あとね!お菓子がいくつか買ってきてほしいの。やっぱりお茶会にはお菓子が必要でしょ?」
「確かにそうかもな。でも、何を買ってくればいいんだ?」
「それは、お菓子屋さんにお任せでいいんじゃない?ここはとってもいっぱい店があるから見つからないってことはなさそうだし」
確かに、来る途中にもたくさんのお菓子屋さんがあったな。
人の量はやばそうだけど、何か買ってくるかな。
すると、パンナ姫がパチンと手を合わせた。
何かを思いついたようだ。
「そうだ!お使いだから、お金を渡さないと!」
「そ、それはちょっと遠慮しておくよ。俺のほうが年上だし」
パンナ姫にとっては今回のお茶会はかなりのイベントなんだろう。
だからとっても張り切っているのはわかるんだけど、お小遣いをもらうのはさすがに気が引けるというか。年下にお小遣いをもらうのってどうなんだろうって思うよね。
だが、パンナ姫は案の定引き下がらなかった。
「いいの!カゲツお兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、私はいちおー王女様だから!王女命令です!」
「うえぇ!?」
そ、そこで王権発動するのかよ!
なんというか、まあ、ユーカの説は正しいらしい。
「ね、言ったでしょ。女の子は強いのよ」
俺は軽い溜息を吐いて、ユーカの言葉に頷いた。




