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勇者が来た原因は……

「どうも、落とし穴に落ちた魔王のカルワーです」

「宰相のキモサクです」

「メイド長のエスミルです」


 仕切り直して挨拶から始める勇者との話し合いの席で、


「なぜ、魔王が正座させられているのでしょう?」


 カルワーは地面に正座させられていた。


「大丈夫です。足の上に石は置きませんから」

「大丈夫じゃないよ! 何で拷問が前提なの!」

「そうだ! 言ってやって!」

「え? 石乗せてほしいんですか?」

「ボクハ、魔王トシテシンシニハナシヲキクタメニ正座デキキマス」


 カルワーは脂汗を流し震えている。


「エスミル、そこまでにして。カルワー様、席にお座りください」

「キモサク、座っていいの?」

「座らなきゃ始まらないでしょうから」

「エスミル! 椅子用意して!」

「はい。……こちらに」


 ーー手足拘束して電流が流せるーー


「電気椅子です」

「よっこいしょ」

「座るの!?」

「それでは、こちらにきた用件をお願いします。勇者様」

「スルー!?」

「さっきからうるさいよ。 おさげの子」

「スイッチオン!」

「あばばバババ!」

「お客様にたいしてそんな口聞いちゃダメでしょ? 魔王の威厳というのを考えてください」

「電気椅子に座らされてる時点で無いと思うんですけど?」

「まったくです」


 キモサクがため息をつく。


「で? 勇者は何しに? そちらの国で何か問題でも?」

「えーと……」


 おさげの子が勇者を見て言いよどむ。


「一週間ほど前に、アミリオが王様に『魔王国に行ってこい!』って籠ってた部屋から叩き出されたんです」


 勇者アミリオがゲームから顔もあげずに涙を流している。


「いいかげん、荷台から降りろ!」

「電気椅子座ってる人が何かいってまーす」

「え? バカにしてんの? 魔王バカにしてんの?」

「キモいやつにメンチ切られてるんですけど?」

「宰相、呼ばれてるよ?」

「そこで、ふるな!」


 カルワーとアミリオが額が付く距離で睨みあってる。


「あわわわわ、誰か止めてください」

「殴り愛から始まる男の友情」

「なに、不良マンガみたいな事言ってるんですか!」

「大丈夫ですよ」

「大丈夫じゃないですよ! アミリオは勇者なんだから強いんですよ!」

「え? そうなんですか?」

「聖剣に選ばれたんですよ! 強いに決まっています!」


「よし! 配管工の爆走レースで勝負だ!」

「レースか面白い」

「ふ、目の前を走るなら気を付けろよ? ファイヤータートルの餌食にしてやる」

「抜かせ! ドドリアンタートルでお前の時間を止めてやる」


「…………ゲームしようとしてるね?」

「…………そーですね」


「2人でするのも何だから、オンラインで他のヤツも呼ぼう!」

「24時間耐久でトータル順位で……」

「チーム戦もありだな」

「飯は1日食わなくても?」

「いらん。栄養ドリンクで充分!」

「よし、勇者よ! 我がアジトで決着を着けよう!」

「魔王! 我等の安寧の為に決着を着けてやる!」


 2人は肩を組んでその場を後にしようとして、


「行かせません」


 エスミルに捕まった。


「エスミル止めるな! これは魔王ニートとしての聖戦ゲーム!」

「そうだ! これは勇者ニートの存在意義をかけた戦いだ!」


 ズルズルと魔王と勇者を引きずっていくエスミルは気がついたように足を止めた。


「おさげのあなた名前は?」

「名乗ってませんでしたね。私はミスリエ。第2王女です」

「それは失礼しました。ではミスリエ王女」

「はい?」

「駄犬のしつけ方をお教えしましょう」

「…………はい?」

「着いてきてください」


 そうしておさげのミスリエ王女を加えてエスミルは出ていった。

 

「まさか王女までこちらに来るとは……」


 キモサクは困った表情でこの後どうやって帰ってもらおうかと考え始めた時にミスリエが座っていた席に封書を見つけた。

 取ってみると魔王宛だ。

 中身を見てみるとキャバクラの請求書と王からの手紙が入っていた。


『これを読んでいるという事は勇者が魔王の所に着いたという事だな。

 困るんだよねー魔王放り出されちゃ。こっち来てサキュバスに捨てられたとかでキャバクラでつけ倒して城まで来たから立て替えといたけど。

 お礼はいいのよ。ただお願いがあってさ、勇者がニート化しちゃってるからそっちで預かってほしいのよ。今なら王女も付けてお得よ。

 PS 魔王は新しい恋人ができたとかでうちから金借りて出ていったから。それも含めて勇者の件でちゃらにするからヨロシク!』


「…………魔王……アノ野郎!」


 と、いうわけで魔王ニートの元で勇者ニートが暮らすことになりました。


「エスミル師匠! 駄犬の縛り方はこれでいいでしょうか?」

「ミスリエ! ほどいて!」

「まだまだ縛り方が甘いわね。ここはもっと、こう……」

「ギャアアァァァ、痛い痛い!」

「勉強になります」


 泣き喚く勇者の隣に同じように縛られた魔王が、


「エスミルが増えた」


 顔を青くしてつぶやいた。

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