仲間の行方
それにしてもこの世界は魔法が無いのに前世の世界より発展している。例えば今いる家の天井だ。今までわざわざ火を灯して光を確保していたが、何と、壁に付いているものを押すだけで炎よりも明るい光源が一瞬で出来てしまうのである。どういう仕組みかさっぱりわからないが意外とこっちの世界の方が便利なのかもしれない。しかも俺の記憶では赤ん坊がこんなにも介護されているのは初めてだ。衣食住がこんなにも整えられている。貴族でもあるまいし。しかも、ここの食事は美味いのだ。どろどろして不味そうな見た目をしているが、やけに美味く感じられる。多分それは、きっと赤ん坊だからだろう。
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さて俺は一歳になった。誕生日である。誕生日でこんなに豪華とは。甘い菓子が用意され、俺はそれを頬張る。うん、うまい。因みに俺もどんどん言語が分かるようになってきた。そしてどうやら俺の名前はアキトと言うらしい。よく両親に愛称でアキちゃんと呼ばれる。しかも俺が名前に呼ばれて親の元に行ったら大変喜んでくれる。よほど可愛いのだろうか。この頃になると泣くのも抑えられるようになり、大人しくしている。そのおかげか、両親の肌艶が良くなったような気がするな。
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そんなこんなで俺は順調に成長していった。俺は地元の公立高校に進学し勉学と部活に励んでいる。最初の内は慣れずに大変な時もあったが、この世界については殆ど分かってきている。今俺の隣で一緒に下校している奴はヒロトとユウキ、俺の少ない友人達だ。なぜ友人が少ないって?残念ながら、それは俺がコミュ障だからと言うわけでは無い。俺は中学校卒業まで死んだ仲間達の事を探すのに夢中になっていて寄って来る人達を蔑ろにしていたのだ。しかし冷静になって考えると、こんな広い地球でたった3人を見つけるのは不可能に近い。しかも俺も転生して手に入れた一つの命だ。あいつらを探すのに一生もかけてはいられない。だから俺は気ままに探そうと決めたのだ。それでも、あいつらは元気にしているだろうか?するとハッと仲間の顔が脳内に思い浮かぶ。
「い、いやぁーーー!!助けてぇーー!」
「ここは俺がやる!お前は逃げろ!」
「何してるんですか!早く逃げて下さい!」
あいつらの声が脳で響き続ける。やばい。呼吸が荒くなる。すると突然ドンッ急に肩を叩かれる。
「おい!アキト!何ぼーっとしてるんだよw」
「んぁ!?はぁ、はぁ、あー、いや考え事してて」
「お前よくぼーっとしてるよなぁ。」
「そ、そうか?そんな事は無いと思うが。」
「いやいや、そんな事あるって。」
とは言っても俺でも自分の状態については分かっている。何とか考えないようにしているのに毎回仲間の声が聞こえトラウマが呼び起こされそうになる。しかも、ああは言っても頭のどこかで、やはり仲間を探しているものなのだ。
「それじゃあ俺はここで。」
「おう、またな」
「おう」
分かれ道でヒロト達と別れる。そのまま真っ直ぐ家に帰る。
「ただいま。」
「あら、お帰りなさい、今日は部活はないのね。今日は早めに晩御飯食べましょう。早く支度しててね〜」
2階の自室に向かう。バッグを投げ捨て、ドサッ、ベットに倒れ込む。
「はぁ〜〜」
ため息をする。どうしたものか。一気に脱力したからだろうか、睡魔が襲って来る。
(少し寝るか。解決策はまた考えよう。)
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目を開けるとそこのは久々に見たあの野原であった。
そして前に目を向けると糸目で言葉では言い表せない様な美しさを持つ女がいた。
「お久しぶりです。ああ今はアキトと言うのでしたね。私のことは覚えていらっしゃいますか?」
俺は十数年前を思い出す。あの時、質問をしたのは良かったが結局は今は価値のない情報だ。
「ああ、もちろんだ。どう言う風の吹き回しか分からんが、何の様だ?」
「まあまあ、そう身構えずに。実はですね、私はあなたの事を助けてあげたいと思っています。」
「何?助ける?どういうことだ?」
「何って、あなたも分かっているではないですか。あなたのお仲間達の事ですよ。」
仲間と言われ、ドキッとする。
「俺の仲間が何だ!」
自分の動揺を隠す様に声を張り上げる。
「全くそんなに怒らないで下さいよ。私はあなたを助けると言ったのですよ?そんな態度をとるなら教えてあげませんよ?」
(ッチ、狡い奴め)
「わ、わかった。すまない。」
「それでいいのです。では初めから説明します。まずあなたはお仲間のことについて深く悩んでおりますね?そこで私が手を差し伸べてあげるという流れになっています。」
「それで?どんな風に助けてくれるんだ?」
「ふんふっふーんー、それは明日のお楽しみ〜〜。今日会いにきたのは、それだけを伝えたかったのですから。」
「はぁ!?意味が分からん!何を言っているんだ!」
一瞬暗闇が目を覆う。ハッ!目を覚ます。
「大丈夫?お兄ちゃん?」
「あ・・ああ」
「もう〜ご飯だからね!何寝てたの!」
「ごめんな・・・」
俺は妹であるミカに起こされる。
(・・・とう言う事は、戻ったのか。)
ミカは俺が5歳にの時に生まれた妹である。生まれた頃は、危なっかしかったが今ではご覧の通りしっかり者になっている。しかし女神の目的は何だ?助けるとだけ言って、すぐに帰ってしまうとは。
その後、俺は飯を食べ、風呂を浴び、寝る支度をする。早く明日のことが気になってしょうがないのだ。
(それは明日のお楽しみ〜〜。)
女神の言葉が頭の中で反芻する。一旦明日になってからじゃないと分からないんだから今悩んでも仕方がない。そう思い俺は颯爽と眠りについた。
朝日の光で目が覚ます。生前、目覚まし時計なぞ無かったから、体内時計で起きるのは得意になっている。
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「よぉ、おはよ。」
「おぉ、おはよう。」
俺は朝の内からずっと身構えていたが結局登校するまで、まだ何も起こっていない。
(心配するだけ無駄か?いや、いかん。油断は命取りになる。慎重に行こう。)
俺は学校に到着し席に着く。すると直ぐに担任が教室に入ってきてHRを始める。その後、一通りの出席が取れた後、担任は口を開いた。
「えー、皆さんにお知らせがあります。それは何とこのクラスに転校生が来ました!」
その担任の一言で一気にクラス内が熱気を帯びる。なにせ、ここの地域は移住して来る人が少ないのだ。まあ言うなればただの田舎なんだがな。
「女の子かなぁ?」
「ウッヒョー楽しみだぜ!」
「いい子だといいね〜」
ガラガラと扉が開く。その時、俺は転校生を見て目を見開く。クラスの皆んなは転校生が物珍しくざわついていたが俺は全く持って別の理由で驚いていた。
「皆さん初めまして。私の名前は八雲ツクミと言います。どうぞよろしくお願いします。」
なんと、その転校生の顔があの昨日会ったばかりの女神にとても似ていたのだ!




