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銀貨一枚から始まる物流革命 ~剣を持たない運び屋、世界の流れを支配する~  作者: 紅茶伝
三章

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第二十八話 最初の停滞と小金貨三枚銀貨八十九枚


 ギドが定期便へ加わってから数日後には、鉱山区と王都を繋ぐ搬送列の流れは以前とは比べ物にならないほど安定し始めていた


 ガルドが積載固定へ入ったことで荷崩れによる停止が減り、ベルンが街道側の搬送順を整理するようになってからは山道入口で搬送列が長時間詰まることも少なくなり、さらにリズが岩原馬の状態を細かく管理し始めたことで長距離往復後の回復まで早くなっているせいで、以前は常にどこかが限界だった搬送が、今ではようやく流れとして噛み合い始めていた


 その中でも一番変わったのはギドだった


 大型搬送車が入りにくい細道や、工房区内部への小型搬送を片っ端から引き受け始めたことで、今までレインとミナが無理矢理埋めていた細かい空白が少しずつ消え始めている


 しかもギド自身、大型商会へ入れなかった時期が長かったせいか、積載場で余っている仕事を見付けるのが妙に上手かった


 だから流れが止まらない


 定期便は毎日動き、帰路便まで埋まり始めたことで、以前なら空荷で戻っていた時間まで利益へ変わり始めていた


 ミナは王都へ戻ったあと、工房区近くで借りた小さな倉庫の中で帳簿を見ながら深く息を吐く


「……いや、増え方おかしくねぇ?」


 机へ並んだ硬貨袋は、もう以前みたいな重さではなかった


 小金貨三枚


 銀貨八十九枚


 橋契約の頃には考えられなかった額だ


 ギドはその横で乾いた笑いを漏らす


「俺まだ現実感ねぇんだけど」


「分かる」


 ミナも苦笑する


 だがレインだけは帳簿を見続けていた


 搬送へ掛かる時間や積載量、それに帰路便まで含めた利益を書き込みながら、人件費や岩原馬の整備費用まで計算へ入れているせいで、多分頭の中ではもう次にどこが詰まり始めるかまで考え始めているのだろう


 その時だった


 倉庫入口の扉が勢いよく開く


「レイン!!」


 飛び込んできたのはベルンだった


 だが様子がおかしい


 顔色が悪い


 息まで切れている


 ミナが立ち上がる


「どうした!?」


 ベルンは息を整えるより先に言った


「二便目が止まった」


 空気が変わる


 レインの視線も静かに上がった


「原因は」


「荷車じゃねぇ

 積載先だ」


 ベルンは悔しそうに奥歯を噛む


「南側工房区の受け取りが追い付いてねぇ

 荷下ろし待ちで搬送列が詰まってる」


 ギドが顔をしかめた


「……マジかよ」


 今まで考えていたのは、どう運ぶかだった


 だが違ったのだ


 流れが大きくなったことで、今度は受け取る側が処理し切れなくなり始めている


 つまり物流全体が広がったせいで、今まで見えていなかった限界が別の場所で出始めたのだろう


 ミナが舌打ちする


「なんだよそれ……

 運べても意味ねぇじゃん」


 だがレインは少しだけ考え込む


 鉱山区側は回っている


 街道も止まっていない


 なら今詰まり始めているのは終点だ


 つまり問題は、受け取った荷をどう流すかへ変わり始めている


 その瞬間だった


 レインの中で何かが繋がったのだろう


 静かに帳簿を閉じる


「倉庫を増やします」


 全員が止まる


「……は?」


 ミナが聞き返す


 だがレインは既に次を見ていた


「工房区へ直接流さず、一回こちらで荷を抱えます

 受け取りを分散した方が止まりません」


 ギドが目を見開く


「待て、それって……」


 物流の中継地点を、自分たちで持つということだった


 大型商会がやっているのと同じように


 ミナは頭を抱える


「お前また、とんでもねぇこと考え始めてるだろ……」


 だがレインの視線は、もう積載場だけを見ていなかった


 運ぶだけでは物流は完成しない


 どこで受け取り、どう流し直すかまで含めて初めて止まらない流れになる


 そして今、レインはその全体へ手を伸ばし始めていた

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!

もしよかったら感想などいただけると、とっても嬉しいです…!

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