第二十七話 ギド加入と小金貨三枚銀貨四十七枚
定期便構想を口にしてから五日後には、レインたちは実際に人を集め始めていた
最初から大規模な商会を作るつもりだったわけじゃない
だが、今の搬送量を維持したまま定期便まで回そうとすれば、もう二人だけでは限界が近いことをレインは理解していた
だから必要だった
荷車を増やす前に、まず流れを止めない人間が
最初に加わったのは、元搬送員のガルドだった
三十代半ばほどの大柄な男で、以前は大型商会の積載係をやっていたらしいのだが、怪我で速度が落ちたことで契約を切られ、今は積載場の日雇いを転々としていたらしい
だが荷箱の固定は異常に上手かった
木箱がどう崩れ、どこへ重量が流れるかを感覚で理解しているせいで、積載速度そのものが目に見えて変わる
二人目はベルン
街道経験の長い中年運び屋で、山道の流れや搬送列の詰まり方に異様に詳しかった
そして三人目がリズだった
二十代前半ほどの若い女で、大型搬送獣を扱う牧場で働いていた経験があるらしく、岩原馬の扱いが妙に上手い
最初は警戒していた岩原馬も、今ではリズが近付くだけで鼻を鳴らして寄っていくせいで、ミナはかなり驚いていた
「なんで懐いてんだよこいつ」
「ちゃんと見てれば機嫌分かるよ」
「いや分かんねぇって普通」
そして、その三人目の横へさらに一人の男が立った瞬間、ミナは目を丸くした
「……え?」
積載場入口に立っていたのは、見覚えのある男だった
細身で、少し鋭い目付き
だが肩の力が抜けた立ち方は、昔とあまり変わっていない
男はレインを見る
「久しぶりだな」
ギドだった
王都へ来たばかりの頃、レインがまだまともな仕事すら取れなかった時期に、何度か同じ積載場で顔を合わせていた運び屋だった
小型荷車しか持てず、大型商会の後ろで余り仕事を拾い続けていた男で、レインが橋契約を取った頃から姿を見なくなっていた
ミナが驚いた顔のまま聞く
「お前、生きてたのかよ」
「失礼だな」
ギドは呆れたように笑う
だがその目は、以前よりかなり疲れていた
街道焼けした肌や擦り切れた革手袋を見れば、この数ヶ月まともな契約へ入れなかったことが分かる
ガルドが横から言った
「街道経験は長ぇぞ
小型便ならかなり上手い」
ギドは小さく肩を竦める
「まぁ、大型契約には縁なかったけどな」
その言葉に、少しだけ空気が止まる
多分昔なら、ここで終わっていたのだろう
大型商会へ入れない運び屋は、そのまま消えていく
積載場では珍しくない話だった
だが今は違う
レインはギドを見る
王都で荷車を引き続け、それでも積載場へ残り続けていた時点で、街道経験そのものは十分ある
足りなかったのは、流れへ入る機会だけだ
レインは静かに口を開いた
「定期便へ入りますか」
ギドが止まる
「……は?」
「小型便経験が必要です
補助搬送と街道確認を任せます」
ミナが思わず吹き出す
「うわ、相変わらず勧誘が雑」
だがギドは笑わなかった
多分理解したのだろう
これは一時的な日雇いじゃない
流れの中へ入れと言われている
積載場では今も大量の搬送員たちが走り回っていた
ガルドが荷下ろしされた木箱を固定し直している横で、ベルンが街道へ出る搬送列を調整し、さらにリズが岩原馬の脚具や水の量まで確認していくせいで、以前は長く止まっていた鉄骨運搬車が今ではほとんど積載場へ留まらなくなっている
その流れを、ギドは黙って見ていた
以前なら、大型商会だけの景色だったのだろう
だが今、その中へ個人運び屋だった連中が入り始めている
しかも本気で回している
やがてギドは、小さく笑った
「……お前ほんと、変わったな」
レインは少し考える
「多分、荷車が大きくなりました」
「そこじゃねぇよ」
ミナが即座に突っ込む
その瞬間、積載場の空気が少しだけ軽くなり、夜明け前の鉱山区でレインたちの定期便はさらに一人増えた状態で動き始めていた
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