表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀貨一枚から始まる物流革命 ~剣を持たない運び屋、世界の流れを支配する~  作者: 紅茶伝


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/31

第二十五話 帰路契約と小金貨二枚銀貨十一枚


 鉱山区での搬送が始まってから二日目には、積載場の空気そのものが少し変わり始めていた


 最初の頃は、個人運び屋が大型物流へ入り込んできたことを面白半分で見ていた者も多かったのだろうが、鉄骨運搬車が重い鉱石を積んだまま山道を安定した速度で往復し続け、さらに積載方法まで変えたことで搬送列全体の流れが目に見えて改善し始めると、周囲の商会員たちは次第にレインたちを見る目を変えていく


 特に分かりやすかったのは、積載待ちの列だった


 以前までは、鉱石箱を積めるだけ積み込んだ大型搬送車が山道で速度を落とし、その後ろへ次の搬送列が詰まり始めるせいで、積載場そのものが常に滞留していたのだろうが、レインが重量分散を優先して積載量を調整し始めてからは、街道へ出る搬送列の流れが明らかに止まりにくくなっている


 つまり一便ごとの利益ではなく、街道全体が止まらず回り続ける状態を作ったことで結果的に運べる総量が増え始めたのだ


 その変化は、積載場へ並ぶ鉱石箱の量を見ているだけでも分かった


 山みたいに積み上がっていた木箱が、以前より確実に減っている


 掘る側と運ぶ側、その流れがようやく噛み合い始めたのだろう


「……なんか空気変わったな」


 ミナが荷台へ腰掛けながら呟く


 夜の鉱山区では今も掘削が続いている


 山肌へ並ぶ魔導灯の光が暗闇へ細長く伸び、遠くからは岩盤を砕く鈍い振動まで響いてくるのだが、それでも最初に来た時みたいに物流が流れ切らず、空気そのものまで詰まり続けているような重さが少し薄れているのが分かった


 レインは積載場を見ていた


 搬送車が止まる時間や、積載員が木箱を運ぶ速度、それに街道へ出る順番まで視線だけで追っているせいで、多分もう頭の中では鉱山区全体の物流構造まで組み立て始めているのだろう


 その成果は金にも出始めていた


 最初に受けた銀貨四十五枚の契約へ追加搬送が重なり、さらに帰路便の鉱石搬送まで増えたことで、革袋へ入る硬貨の重みが以前とは別物になっている


 ミナは休憩小屋の机へ革袋を置きながら、小さく息を吐いた


「……また増えてる」


 小金貨二枚


 銀貨十一枚


 しかもまだ、帰路追加分の報酬まで残っている


 東部大橋で稼いだ金は、鉄骨運搬車を買ったことで一度減るはずだった


 だが実際には逆だった


 大型物流へ入ったことで、一回の搬送利益そのものが変わり始めている


「普通さぁ、デカい買い物したら一回貧乏になるだろ……」


 ミナが呆れた顔で言う


 鉄骨運搬車は高かった


 岩原馬込みで銀貨百五十枚


 普通の個人運び屋なら、何年掛けても届くか怪しい額だったはずだ


 だが今、その投資分が既に回収へ向かい始めている


 レインは帳簿を閉じながら小さく頷いた


「積載量が変わったので、利益率も変わりました」


「その言い方ほんと夢ねぇな……」


 だが実際そうなのだろう


 今までは荷車そのものが小さかったせいで、利益になる前に距離限界が来ていた


 だが今は違う


 大量に積んだ状態を維持したまま長距離へ入り、そのまま帰路便まで利益へ変えられる


 だから金の増え方そのものが変わる


 外では岩原馬が低く鼻を鳴らしていた


 長距離往復を終えたばかりなのに、まだ脚が死んでいない


 普通の馬ならとっくに潰れていただろう


 ミナは窓の外を見る


 夜の鉱山区では、今も搬送員たちが走り回っている


 魔導灯に照らされた積載場では鉱石箱を運ぶ人影が絶えず動き続け、その奥では新しい搬送車が次々街道へ出る準備を始めているせいで、この場所そのものが巨大な生き物みたいに眠らず動き続けていた


 つまりここは、止まれば金が死ぬ場所なのだろう


 その空気を見ながら、ミナは小さく笑った


「……もう普通の運び屋じゃねぇな、これ」


 レインは少しだけ考える


 以前なら、大型商会の後ろを小さな荷車で走るしかなかった


 だが今は違う


 東部大橋で物流そのものへ入り込み、その流れのまま鉱山区の大型契約にまで届き始めている


 しかもまだ止まっていない


 レインは窓の外を見る


 山岳街道を行き交う搬送列と、夜になっても止まらない鉱山区の光景を眺めながら、静かに口を開いた


「まだ足りません」


 ミナが吹き出す


「出たよそれ」


 だがレインの視線は、もう次を見始めていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ