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転生したけど、ここガチで中世ヨーロッパだった件。  作者: みっちーザッキー


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14/22

第14話 城壁の地獄 ― 死と炎の五分間

いつもお読みいただきありがとうございます。


13話で描かれた、“最初の火”による戦闘開始。

そして隊列の崩壊と、悠真の初負傷。


14話では、

敵が本格的に城壁へ肉薄し、城壁戦の“本物の地獄”が始まります。


火、石、梯子──すべてが同時に襲いかかる、

わずか“五分”の戦闘を描きます。


それでは本編をどうぞ。

城壁上 ― 朝の光は血の色に変わる


太陽は昇りきっていたが、

城壁の上は冷え切っていた。


悠真の左腕には、抜いた矢の傷が鈍く疼いている。


(……まだ、痛む……

 でも、立ってないと……死ぬ……)


リナが包帯を握りしめながら言った。


「少しでも動かしたら……また開くよ。無理しないで。」


ナタリーは、城壁下を見つめたまま言う。


「無理しないと死ぬの。

 今は立てる者が立ち続けるしかない。」


その言葉が終わらぬうちだった。


城壁の外で、空気の震えが変わった。


ズウゥゥン……ッ!!


地面そのものが唸るような重い振動。


悠真の脊髄が凍りつく。


(……これ……“揺れ”じゃない。

 何か……投げられた……?)


次の瞬間。


■ 投石機の初撃 ― “世界が割れる音”


ゴオォォォォンッ!!


巨大な石塊が城壁にぶつかり、

衝撃で石が砕け、破片が嵐のように飛び散った。


「うわあああッ!!」


「目を覆え!! 伏せろ!!」


兵士の叫びが上がる。


破片が頬を切り、腕を裂き、

一人の兵士が足を押さえて転がった。


「痛っ……! 痛い……折れ……折れて……」


横にいた兵が声をかける。


「落ち着け! 動くな、今……!」


だが次の瞬間。


二撃目の石塊が落ちてきた。


ドゴォォッ!!


足を押さえていた兵士の頭上に直撃。

脳漿が石畳に飛び散り、

体は一瞬で形を失った。


隣の兵が叫ぶ。


「やだ……やだやだ、嘘だろ……

 ついさっき……家の話してたのに……!」


その“日常”は、残酷に断ち切られた。


悠真は息ができない。


(……これが……本物の投石……

 生き物を“物”として潰すためだけの……)


投石機の第三撃が、遠くで唸りをあげる。


ナタリーが怒鳴る。


「頭を下げろッ!! 立つな!!」


城壁全体が震え、石粉が霧のように舞った。


だが──地獄は連続する。


■ 攻城梯子 ― 本物の“登攀戦”の開始


「梯子!! 東側!! 複数!!」


見張りの叫びが響く。


悠真が城壁端へ走り寄ると、


十数本の木製の攻城梯子が、一斉に立ち上がり始めていた。


テコで押し上げられ、

人力で支えられ、

ギギ……ギギギ……と軋む音が城壁へ迫る。


ナタリーが叫ぶ。


「投げ落とせ!!

 梯子が掛かったら終わるぞ!!」


数人の兵が鉤竿を構え、梯子を押し返す。


階下から敵兵の怒号が響く。


「押せッ!! もっと押せ!!」

「梯子を立てろォ!!」


リナが震えた声で言う。


「……あれだけ……押し寄せるなんて……

 本気で……城を殺しに来てる……」


悠真は歯を噛みしめる。


(……恐怖は……本当に……移る……)


一本の梯子が、城壁に届いた。


ガンッ!!


敵兵が次々と登り始める。


■ 斬り落とされる敵兵 ― “最初の近接”


「来るぞ!! 槍を前へ!!」


最初の敵兵が姿を現した瞬間、

城壁の兵が槍で突き落とした。


「うおおおおおあああッ!!」


悲鳴を上げて落ちる敵兵の背中が弧を描き、

地面に叩きつけられた衝撃音が城壁まで響く。


(……人が……落ちる音って……こんな……)


だが、敵は止まらない。


二人目、三人目が梯子を登る。


兵士が叫ぶ。


「押し返せ!! 押し返――」


その兵の頭上に、

敵兵が投げた石が直撃。


ぐしゃり、と嫌な音がして、

男は崩れ落ちた。


リナが小さく悲鳴を漏らす。


「……死んだ……」


ナタリーは震えを押し殺し、剣を構える。


「怯むな!!

 落とし続けろ!!」


戦争は、“落ちてくる死”と“登ってくる死”の挟撃だった。


■ 悠真の決断 ― 生きるために“動く”


悠真は、倒れた兵士の鉤竿を拾った。


(俺だって……できる……!

 少しでも……高さを奪えば……!)


梯子へ鉤先をかけ、

全身の力で押し返す。


「ぐっ……!」


梯子の向こうから、

敵兵の怒号が聞こえる。


「押し返せ!! あの異国を落とせ!!」


(……わかってる……

 俺は……“敵”だ……)


体が震える。

腕が軋み、傷口が開きかける。


その瞬間──背後で声が飛んだ。


「悠真!! 下がれ!!」


ナタリーの叫びだった。


振り返ると──

巨大な影が、城壁の上へ跳ね上がってきた。


敵の重装兵が、梯子ではなく投石の衝撃で跳び上がったのだ。


鎧が光り、

長い戦槌が唸りを上げる。


「……嘘……だろ……!」


悠真が固まった瞬間──


ナタリーが間に飛び込んだ。


ガンッ!!


剣と戦槌が火花を散らす。


ナタリーが歯を噛みしめる。


「退け!! こいつは私が受ける!!」


リナが悠真の腕を掴んだ。


「悠真!! 逃げて!!」


だが悠真は動かない。


(逃げたら……ナタリーが……殺される……)


震える足を前に出す。


「ナタリー!!

 俺も……やる!!」


敵重装兵の視線が、

初めて悠真に向いた。


その瞬間だった。


■ 終わらない地獄 ― 五分は永遠に感じられた


角笛が鳴り、

兵士の叫びと悲鳴が飛び交い、

投石機の第三射が唸る。


地獄はまだ終わらない。


むしろ、ここからだった。

14話では、第一次ルヴァン防衛戦の序盤、

“五分間の地獄” を描きました。


主軸は以下の通り:

•投石機による“世界を砕く”衝撃

•複数の攻城梯子による同時侵攻

•モブ兵の“日常の一言→即死”で恐怖を最大化

•ナタリー vs 重装兵の初対面

•悠真が初めて“逃げずに前に出た”瞬間

•リナの叫びと、3人の関係性の深化


そして、戦争はまだ序盤。

ここからさらに加速していきます。


次回、第15話

「崩壊寸前の壁 ― それでも立つ理由」


・重装兵との本格戦闘

・ナタリーの防衛線

・リナの初めての“敵の死の目撃”

・悠真の覚醒

・そして初めての“敵の侵入”


物語は、さらに深く地獄へ進みます。


史実補足:中世城壁戦の“序盤五分”


◆ 投石機の初撃=戦闘の合図

もっとも精神を破壊する攻撃で、死傷者が出なくても士気が大幅に落ちた。


◆ 攻城梯子は“数十本同時”が普通

数の暴力で壁上の兵を疲弊させ、突破点を作る。


◆ 近接戦は“押し出し”が基本

剣よりも槍・鉤竿・石の方が有効だった。


◆ 重装兵は“城壁突破の切り札”

登攀に成功した一人の重装兵が、

十人以上を一度に退けることもあった。


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