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転生したけど、ここガチで中世ヨーロッパだった件。  作者: みっちーザッキー


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13/22

第13話 「初火 ― ルヴァン防衛戦・開幕」

お読みいただきありがとうございます。


12話では、捕虜の処刑、逃亡兵の末路、黒煙による本隊の接近が描かれ、

第一次ルヴァン防衛戦の幕が上がりました。


そして13話では、

ついに“最初の火”が城壁を襲います。


矢ではありません。

この時代の城壁戦では、

最初の殺しは「火」で始まることが多く、

その恐怖と混乱の瞬間を描きます。


そして今回、

リナが初めて悠真を呼び捨てで叫ぶ

重要な転換点となります。


それでは本編をどうぞ。

城壁上 ― 朝の静けさは“死の前触れ”


日がようやく昇り始め、

城壁の石はひんやりと冷たかった。


兵士達は緊張で喉が乾き、

誰もが黙ったままだった。


(……本当に始まるんだ)


悠真は胸の奥に、

昨日とは違う“重さ”を感じていた。


リナが縄を抱えながら言った。


「……怖い、けど……

 やるしか、ないんだよね……悠真。」


呼び捨て——

それは、初めてだった。


悠真は息を呑んだが、

返事する前に角笛が鳴り響いた。


「敵の動きあり!! 城壁、警戒!!」


ナタリーの声が鋭く響く。


その瞬間だった。



■ 最初の“火” ― 油壺への直撃


城壁の外側で、

誰かが叫んだ。


「油壺だ!! 準備しろ!!」


兵二人が油壺を持ち上げ、

城壁上から敵へ投げ落とそうとした――


その瞬間。


パシュッ──!


一筋の火矢が飛び込み、

油壺へ直撃した。


ボォンッ!!


爆ぜるような炎が一気に広がり、

兵士二人を包んだ。


「ぎゃあああああああ!!」


「助け……! あつっ……ああああ!!」


火は油を飲み込み、

皮膚が焼ける匂いが城壁に満ちた。


悠真は動けず、ただ見ていた。


(……これが……“最初の死”……

 もう……戻れない……)


リナが震え、

ナタリーが叫ぶ。


「消火!! 砂を持て!! 早く!!」


兵士たちが砂袋を投げるが、

油火はなかなか消えない。


丸焦げの肉が崩れ落ち、

誰かが嘔吐した。


そして――


その直後、

次の怒号が上がった。



■ 城壁への接近 ― 敵の“二段目の手”


「敵部隊が前進!! 歩兵、十列!!」


ナタリーが剣を構え、怒鳴る。


「伏せろ、悠真!! 顔を上げるな!!」


ガシャガシャと金属の音が近づく。


城壁を打つ矢ではない。

地を踏み鳴らす、軍隊そのものの音。


(……来る……本当に来る……)


敵兵たちは城壁の死角に入り、

こちらから姿は見えない。


それが、逆に恐怖だった。


その時――


バシャッ!!


下から投げ上げられた石が、

兵士の頭に直撃した。


「ぐっ……!!」


血が飛び散り、

兵士が崩れる。


次いで、別の兵士が盾ごと持っていかれるほどの

巨大な石が飛んできた。


「敵、攻城用投石!!

 壊されるぞ、距離近すぎる!!」


ナタリーの声に、

悠真の胸がひきつった。


(……これが……“序盤”なのか……)


城壁はまだ破られていない。

敵はまだ登ってすらいない。


それなのに——

こんなにも、人が死ぬ。



■ 悠真の負傷 ― 生きている証


その時だった。


ヒュッ。


嫌な空気の震えが、頬を掠めた。


次の瞬間、

悠真の左腕に激痛が走る。


ブスッ!!


矢が、浅く刺さった。


「……っ!!」


リナが叫ぶ。


「悠真!! 伏せて!!」


ナタリーが素早く駆け寄り、

矢を折って抜いた。


「まだ浅い。動ける!

 いいか、ここで倒れるな!!」


悠真は歯を食いしばりながら頷いた。


(……痛い……

 でも……俺、まだ動ける……)


リナが震える声で言う。


「死なないで……

 ほんとに……死なないでね……悠真……」


その呼び方に、

悠真の胸が少しだけ熱くなった。


だが、感情に浸る時間はなかった。


城壁の向こうで、

敵の戦鼓が鳴り始めた。


ドン……ドン……ドン……。


それは、

本当の戦争が始まる“合図”だった。


13話では、

第一次ルヴァン防衛戦の“開戦の瞬間”を描きました。


今回の主軸は3つ:


● 最初の死は、矢ではなく“火”で訪れる

● リナが初めて悠真を呼び捨てで叫ぶ

● 悠真が初めて戦場で負傷する


そして城壁戦はまだ序盤。

敵はまだ登ってすらいません。

本来はそこまで書こうと思ったのですが、そこまで至りませんでした笑



次回、第14話

「城壁の地獄 ― 死と炎の五分間」


・攻城梯子の接近

・城壁上での肉弾戦

・味方兵の連続死

・敵の重装兵の出現

・ナタリーの指揮の限界

・リナの初めての“死の看取り”


物語はもう、後戻りできません。



【史実補足:中世の攻城戦と“初火”】


◆ ① 攻城戦の“最初の死”は火が多い

油壺・松脂・ピッチなどは非常に燃えやすく、

火矢一つで爆発的に広がった。


◆ ② 城壁上は“落ちるか焼けるか”

矢よりも、

・油火

・投石

・松明

が多く死傷者を出す。


◆ ③ 投石は敵の士気を削るため

石を投げ上げて兵の頭を割る行為は

心理的ダメージも大きい。


◆ ④ 軽傷(矢が浅く刺さる)は最も多かった

鎖帷子や厚い布で致命傷は防げるが、

腕・肩・足などに浅く刺さる負傷は日常的だった。


◆ ⑤ 呼び捨ては“戦場ほど急になる”

死線では人間関係が一気に近くなる。

本作のリナの変化は、むしろ自然。


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