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転生したけど、ここガチで中世ヨーロッパだった件。  作者: みっちーザッキー


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12/22

第12話 黒煙 ― ルヴァン防衛戦・序幕

お読みいただきありがとうございます。


第12話では、

戦争編の本当の始まり──

“最初の血” が地面に落ちる瞬間を描きます。


焦点は次の3つ:

•敵の存在が「音」から「死」に変わる瞬間

•仲間の崩壊と、国家による“粛清”という現実

•悠真の視点が一歩だけ“戦争”に踏み込む


ここから物語は完全に

《第一次ルヴァン防衛戦》へ突入します。


それでは本編をどうぞ。


■ 城壁下 ― 張りつめた空気


朝霧が薄く漂い、城壁は灰に沈んでいた。


どの兵士の手も震えていた。

まだ敵は見えない。

だが、死だけが確実に近づいている──そんな風だった。


縄を運んでいたリナが、低く呟く。


「……怖いです。

 でも、やるしか……ないんですよね?」


ナタリーは頷いた。

白い息を吐き、兵士の列を見渡す。


「恐怖は誰にでもある。

 でも“立てる者”が立たなければ、全員が崩れる。」


悠真はその横顔を見つめる。

昨日の祈りの声と重なっていた。


(……本当に強い人だ)


その時、


「捕虜を連れて来い!!」


怒号が城壁下に落ちた。



■ 捕虜の処刑 ― それは戦争の最初の血


兵二人に引きずられて来た男。

両手は縄。足は引きずり、泥に沈む。


ただの農民──ではない。


敵軍の伝令兵だった。

肩口に、矢羽根が折れた痕がある。


兵士が怒鳴る。


「夜明けの偵察で捕らえた。

 処刑は“示威”として行う!」


捕虜は血の泡を吐きながら叫んだ。


「……たすけ……てくれ……

 俺は……ただ命令で……」


兵士の一人が震える声で言う。


「や、やめませんか……?

 まだ息が……」


その瞬間、

指揮兵が顔色一つ変えず兵の胸倉を掴んだ。


「弱気を移すな」


そして──

短剣を抜き、


ズブッ。


捕虜の心臓へ、一撃。

胸骨を割り、血が溢れる。


男の口から空気が漏れ、静かに倒れた。

周囲の兵が一斉に固まる。


リナは震えながら呟く。


「……ほんとに……殺した……」


ナタリーは歯を噛みしめただけで、何も言わなかった。


悠真の手は汗で濡れていた。


(これが……戦争の最初の“血”……)



■ 威力偵察 ― 矢は警告として飛ぶ


その沈黙を裂くように──


ヒュッ……!


一本の矢が城壁の影へ突き刺さった。


兵士達が肩を震わせる。


「い、威力偵察だ!

 距離……近いぞ!!」


すぐに、二本目。

三本目。


矢の音だけで“死”をイメージできる距離。


リナは耳を押さえ、震える声で言った。


「……こんな……すぐそばに……?」


ナタリーは剣の柄を握り直す。


「敵は“殺すつもり”じゃない。

 これは──“心理戦”。」


悠真の背中に冷気が流れた。


(じゃあ……本気で殺す時は、どうなるんだ……?)



■ 逃亡兵の崩壊 ― 叫びから始まる


その矢音に耐えきれず、

前列の兵が叫び声を上げた。


「むりだ!!

 俺は戦わねぇ!

 死ぬくらいなら逃げる!!」


「いいぞ! ついていく!!」

「お前らも来い!! ここは終わりだ!!」


瞬間、列が揺れた。

兵の“逃亡”は、指揮を一撃で壊す。


ナタリーが叫ぶ。


「戻れ!!

 逃げれば全員が死ぬ!!」


だが聞かない。

恐怖は理性を食い潰す。


指揮兵が抜刀し、二歩で逃亡兵の背に追いついた。


ズシャッ!!


喉を横に切り裂く。

血が霧状に舞い、リナが悲鳴を呑む。


続けて二人目も倒された。

逃亡はわずか数秒で終わった。


周囲は静まり返る。


兵士の一人が震える声でつぶやく。


「……逃げる方が……

 真っ先に……死ぬんだ……」


悠真は目を逸らせずにいた。


(……逃げても死ぬ。

 残っても死ぬ。

 だったら……今できることをするしかない。)


ナタリーが小さく息を吐いた。


「“立てる者”が立つ理由は……これ。」



■ 黒煙 ― それは開戦の合図


その時だった。


丘の向こうで、黒い煙が三筋、立ちのぼる。


兵士達が一斉に叫ぶ。


「黒煙だ!!

 敵軍、本隊が動いた!!」


角笛が鳴り響く。

街が震えた。


悠真の膝がわずかに震える。


(……とうとう始まる……)


リナがそっと腕を掴む。


「……生きて……帰りましょう。

 お願い、死なないで……」


ナタリーも前を見据えたまま、静かに言う。


「立て、悠真。

 ここから先が──“戦争”だ。」


風が止まり、空気が張りつめる。


黒煙が空の赤を呑み込んでいく。


第一次ルヴァン防衛戦。

その幕が、いま上がった。


お読みいただきありがとうございます。


第12話では、

戦争の本質が“音”から“血”に変わる瞬間

を描きました。


今回のポイントは以下の通り:

•捕虜の処刑で “死” が可視化される

•威力偵察で “死が近い” ことだけが伝わる

•逃亡兵の粛清で “逃げても死ぬ” 現実

•そして黒煙で “戦争が始まる” ことが確定する


これでついに、

物語の核となる《第一次ルヴァン防衛戦》が開幕します。


次回、第13話

「初火 ― ルヴァン防衛戦・開幕」


いよいよ、本当の地獄が始まります。


【史実補足:中世の“開戦”】


◆ 逃兵の処刑

中世軍隊での逃亡は即死刑。

喉を掻き切る・刺殺・絞首刑が一般的。


◆ 威力偵察の矢

距離測定と士気崩壊を狙うため、射手は一撃で殺す必要がない。

“音の恐怖”が目的。


◆ 捕虜の“示威処刑”

敵軍への抑止、味方の統制のため、

開戦前に公開処刑が実際に行われた記録がある。


◆ 黒煙(三筋の狼煙)

中世フランスでは、

軍の進軍や布陣開始を知らせるための信号として使われた。



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