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転生したけど、ここガチで中世ヨーロッパだった件。  作者: みっちーザッキー


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11/22

第11話 戦端 ― 血煙の前夜

お読みいただきありがとうございます。


第11話では、

10話で描かれた“死の後処理”の直後、

ついに 戦争そのものが近づく瞬間 を描きます。


焦点は3つ:

•国家の命令は、神以上に人を縛る

•戦の前夜ほど、人は弱く、そして強くなる

•悠真の中で、エマと現在が重なり始める


ここから“戦争編”の核心へ入ります!

作っていた私も手に汗握りながら、作りました!


それでは本編をどうぞ。

■ 城壁の影 ― 黒い風の匂い


夕暮れの光が傾き、

ルヴァンの城壁は血のような赤に染まっていた。


角笛が低く鳴り、間を置かず二度、三度。


兵士たちが色を失った顔で耳をふさぐ。


「……来るぞ。

 敵軍が、丘を越えた」


その声は震えていた。


悠真は胸の奥が冷えるのを感じた。


(昨日まで名前を書いていた死者たち……

 明日は、俺たちかもしれない)


リナが袖をつかむ。


「……怖いです。

 でも、逃げられませんよね?」


ナタリーは短く頷く。


「逃げれば、秩序が崩れる。

 秩序が崩れれば、村も街も……すべてが死ぬ」


その言葉の後、風が灰を巻き上げた。


焦げた布と鉄の匂い。

まるで敵軍そのものが空気を乗り換えてくるようだった。



■ 兵の分隊 ― 人足は“戦闘の外側”へ


「人足は前線の補給だ! 壁の下に集まれ!」


怒号で列が動く。


悠真・ナタリー・リナは、

外郭の影に設営された補給テントへ向かった。


兵士が縄の束を配りながら叫ぶ。


「城壁の上に荷を上げろ!

 矢束、石袋、水桶――なんでもいい、間に合わねぇ!」


リナがすがるように聞く。


「私たちは戦わなくていいんですか?」


兵は鼻で笑う。


「お前ら? 戦えねぇよ。

 死んでも代わりが来る階層だからな。」


ナタリーの目が鋭く光る。


「……人を、階層で語るなんて」


「国家ってのはそういうもんだ、姫さん。」


悠真は拳を握る。


(秩序の列が……

 今度は“死ぬ順番”の列になるのか)



■ 夜の城壁 ― ナタリーの祈り


日が完全に落ち、

城壁の上に冷たい風が吹く。


兵士たちが震える手で槍を握る。


恐怖は感染する——

だからこそ、ナタリーは前に立った。


白い息を吐き、両手を胸に当て、

静かに、しかし力強く祈った。


「天よ、どうか聞いてください。


 私たちは神を冒涜しようとしているのではありません。

 生きようとしているだけです。


 立てる者には勇気を。

 倒れた者には赦しを。


 そして——

 この灰の大地でなお、

 人を人として見られる“心”だけは、どうか奪わないでください。」


兵士たちの肩が、すっと軽くなる。


悠真の胸が熱くなる。


(……エマに、似てるな)


白い病室。雪の道。

あの温かい手。


「諦めないで、悠真」

あの日の声が重なる。


ナタリーは振り返らない。

ただ城壁の向こうを見つめていた。


その後ろ姿が、エマと重なって見えた。



■ 黒い丘 ― 敵影


風が止まった。


街の空気が凍りついたように動かない。


そのとき——

丘の向こうで“揺れ”が起きた。


最初は黒い影。

次に、影が揺れる音。


兵士が呟く。


「……馬だ。

 敵軍の偵察だ」


角笛が鳴る。

兵たちが槍を立てる。

緊張が一気に城壁を駆け抜ける。


悠真は喉を奪われたように息ができなかった。


(これが……戦争の始まりか)


膝が震えそうになる。

だがリナがそっと背中を押した。


「立って……ください。

 立てる人が、今は必要なんです。」


ナタリーも頷く。


「立て。

 書く者は、死なない。」


ベルナールが静かに言った。


「異国の者よ。

 お前は火をくぐり抜けた。

 なら——灰の先で、何を見る?」


悠真は乾いた喉で答えた。


「……人が、まだ立ってることです。」


その瞬間——

丘の向こうで炎が上がった。


戦いの狼煙だった。


角笛が、夜空を裂いた。

第11話では、

•“戦の前夜”という最も恐怖が高まる瞬間

•国家が神より重く人を縛る構造

•エマの記憶とナタリーが重なる兆候

•悠真が“書く者=生き残る者”として覚醒


を描きました。


ここから先は、

物語の“柱”である 第一次ルヴァン防衛戦 に突入します。


次回、第12話

「黒煙 ― ルヴァン防衛戦・序幕」


・初めての敵影

・負傷兵の処理

・矢が届く距離

・人足と兵士の境界

・ナタリーの指揮と恐怖

・リナの最初の救護

・そして…………最初の“戦場の死”


すべてが動き出します。



【史実補足:戦前夜】


① 脱走は“戦前夜”が最も多かった

恐怖・寒さ・鐘の音が兵の精神を壊し、

神父や指揮官は祈祷で兵の心を保った。


② 捕虜・人足は“盾にはされないが、死ぬ順番は早い”

戦闘員ではないが、

矢の補充・石袋運搬・死体処理など

“最も危険で最も軽んじられる仕事”を強制された。


③ 当時の城壁戦は“夜の偵察”が最初の戦端

敵軍は夜に馬を使い、音と影で揺さぶる。

心理戦を仕掛け、士気を落とすのが目的。


④ 祈祷は“士気の維持”として軍の正式任務

戦うより祈る方が重要という時代。

ナタリーの祈祷は史実そのもの。


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