13-3・ミコト&サリの魔法教室②
「なら、今のあたしなら、格好良く魔法を使えるかな?」
「試してみる?」
「うん!やってみたい!」
魔法の本を捲って、格好良さそう&手軽にできそうな「火の玉」のページをチョイス。真田さんは、何度も呪文を音読して暗記をする。
「よしっ!やってみるっ!」
真田さんの掌の間から火の玉が飛び出して、人が歩くより遅いスピードで30㎝くらい移動して消えた。
「おぉっ!できたねっ!真田さんスゴいっ!」
「できた・・・のかな?」
「・・・多分」
「できてないんじゃね?」
「・・・かもしんない」
「あんなに遅く飛んだら避けられちゃうよね」
「てゆーか、30センチしか届かないなら殴った方が良いね」
一応、火の玉は飛んだ。だけど、熟練度が圧倒的に不足しているので、使い物にならない。
「これもやってみて良い?」
確認してみたら、「難易度・高」で、火を龍の形にして撃つ魔法っぽい。
「良いけど、難しそうだよ」
「ダメ元!手から龍が出たら格好良いじゃん!」
「呪文長いよ。しかも何語かよく解らないし」
「んっふっふ!暗記得意っ!」
自信過剰・・・ではなく、面白いことをしたいんだろうな。真田さんは子供みたいな笑顔を浮かべたあと、何度も呪文を復唱して暗記をする。
「えいっ!ドラゴンファイヤー!」
あえて「ファイヤードラゴン」ではなく「ドラゴンファイヤー」と叫んだのは、真田さんなりの拘りだろうか?
「呪文の名前、適当に付けた?それ、確か馬の名前ね」
真田さんの掌の間から、頭の直径が5㎝くらいで細長くて、燃える可愛いカバが飛び出して、人が歩くより遅いスピードで20㎝くらい移動して消えた。
「おぉっ!できたねっ!真田さんスゴいっ!」
「できた・・・のかな?」
「・・・多分」
「できてないんじゃね?」
「・・・かもしんない。ところで、なんでカバ?」
「カバじゃないよ。龍ってあんな形じゃなかったっけ?」
「だいぶ違う・・・かな」
火を龍の形にして打ち出す魔法は、術者の想像力次第で別の形になってしまうらしい。高度な魔法(失敗)で真田さんが著しく消耗したので、その場に腰を下ろして休憩をする。
「真田さんてさ・・・もしかして美術苦手?」
質問に対して、真田さんが口をへの字に曲げる。
「ちょっと・・・苦手かな。あんまり良い成績を取れなかった」
小学校時代に粘土で人を作ったら団子と言われ、蛇を作ったらうん○と言われた。
「・・・うん○?」
中学の美術で友達の顔を描いたら宇宙人と言われた。
「宇宙人に似てる子だったの?」
高校1年の美術で自画像を描いたら埴輪と言われ、「ならば試しに」と埴輪を書いたらトウモロコシと言われ、「ならば試しに」とトウモロコシを書いたらうん○と言われた。ちなみに真田さんは埴輪には似ていない。
「また、うん○?」
これは「ちょっと」ではなく、かなりの重傷だ。でも、不器用では無さそうだから、小学校の時の「蛇→うん○」評価が原因で苦手意識を持っちゃったんだろう。龍をカバ扱いしてしまったのは痛恨のミスだった。
「ところでさ・・・」
なんか申し訳ないので、やや強引に話を変える。
「魔法の本を見てて気付いたんだけどさ・・・」
本に記されているのは、五大元素の単体の攻撃魔法、及び、五大元素の幾つかを組み合わせた攻撃魔法。回復系の魔法は1つも無い。
「ゲームなら死にそうなキャラのHPを魔法で回復できるけど、
この世界には無いってことなのかな?」
「怪我したらそのまんまってこと?」
「前に力石先生が怪我した時、薬草を湿布みたいに貼ってた」
「そう言えば、薬草の本には、治癒の補助や体力回復みたく
漢方やお薬みたいなのはあるけど、傷を一瞬で治すのって無いね」
この疑問は、バクニーさんに聞いたら「そんな都合の良い魔法は無い」と言われた。
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様々な魔法を試したけど、魔法の「ま」の字すら解っていない僕等が、一朝一夕で敵を仕留める魔法なんて使えるわけがない。魔法の才能が有る真田さんでも、2~3日で火の玉や真空波を操るなんて無理。集中力を無駄に消耗させてしまうだけ。
魔法の奥深さを知った僕達は、変な背伸びはせず、初心に立ち戻ることにした。
確実にできることを選ぶ!それが、手に電気を溜める戦い方!雷でモンスターにダメージを与える選択肢は捨てて、電流ショックで麻痺させたのだ!
「やぁっ!!」
真田さんが振るったナイフが、ゴブリンBの腕に大きな傷を作った!もちろん、これで倒せるわけが無い。だけど武器を持つ腕にダメージを追い、戦闘力は大幅にダウンしたはずだ。
「次はっ!」
その間に僕は、押し寄せてきたゴブリンCへの迎撃態勢を整えた!ゴブリンAに対しては、まだ距離に余裕が有る!
モンスターの剣筋を見切って攻撃をする!・・・ができれば格好良いんだろうけど、まだ怖くてできない!だから、シールドアタックで体勢を崩してから首に剣を叩き込む!一刀両断!・・・ができれば話が早いんだろうけど、僕にそんな技量は無い!
「真田さんっ!次、こっち!」
ゴブリンCの首から吹き出した血を盾で防ぎながら押し倒す!
「はいっ!」
僕が離れたタイミングで真田さんが踏み込んできて、ゴブリンCに電流を流し込んだ!ゴブリンCは悲鳴を上げて全身を硬直させる!
「わぁぁぁっっっっ!!」
僕は夢中になって剣を突き出し、倒れているゴブリンCの腹を貫いた!
剣が生き物の肉に食い込む感触が剣先から手に伝わって気持ちが悪い。でも、そんなこと言ってられない。
「尊人くん!こっちのヤツもっ!」
ゴブリンBは、まだ麻痺から回復していない!真田さんは、僕を感電させた時よりも強い電流を操っているのだ!
「うんっ!任せてっ!」
ゴブリンBを剣で貫く!モンスターが悲鳴を上げてから動かなくなった!
やっぱり、生き物を殺す感触は気持ちが悪い。断末魔の悲鳴が耳から離れない。今日は嫌な夢を見そうだ。
だけど、トドメは全て僕が引き受けるつもりだ。真田さんには、この「嫌な感触」を体験して欲しくない。・・・いや、そんな立派なことを考えながら戦っているわけじゃなくて、とにかく夢中だった。
「あと一匹は・・・?」
「・・・あれ?」
交戦開始時は接近をしていたゴブリンAが、20mくらい距離を空けた状態でこっちを睨んでいる。
「あたし達が強いって知って、戦うのをやめたのかな?」
「それなら良いんだけど・・・」
僕が近付こうとしたら、その倍の距離を後退した。
「ゴブォォォォォォッッッ!!!」
ゴブリンが雄叫びを上げる。
「や・・・やばい・・・かも」
残る一匹を迅速に仕留められなかったのはミス。戦場を選ばず、移動しにくい森の中で交戦してしまったのは僕の判断ミス。
本に書いてあった。・・・いや、この世界に来た初日に実体験をした。ゴブリンは劣勢になると仲間を呼ぶ。そして、ボスに統率されたゴブリンも存在する。




