13-2・ミコト&サリの魔法教室①
僕と真田さんは、説明が下手くそなホーマン姉妹には頼らず、ホーマン邸の広い庭に出て2人で魔法の練習をする。
「ピークエクスペリエンス発動っ!」
魔力発生のコツを覚えてからの真田さんは、あっという間に僕を引き離した。
「え~~~っと・・・光と水と風と火と土のどれかを想像するんだよね?」
僕が掌に作った魔力の色分けが1つもできないうちに、真田さんは白→黒→青→赤→黄色を変化をマスターしてしまう。
「尊人くん、振れてみてよ」
「・・・また?」
「できてるか確かめてほしいの」
女の子って解んない。バクニーさんの掌の間を触ろうとした時には蹴ったクセして、頻繁に「確認しろ」と言ってくる。
「また感電すんのは勘弁してね」
「火を試してみたいの」
「僕を燃やすの?」
まだ基本をやってるだけなんだから、それほどの火力が無いことは解っている・・・つもりなんだけど、前回の感電があるので、ちょっと怖い。恐る恐る真田さんの掌の間に手を近付ける。
「わっ!温かいっ!」
「あたしの体温じゃなくて、ちゃんと、火の温かさ?」
「・・・多分ね」
真田さんの才能は認めるけど負けてられない。
「ピークエクスペリエンス、ちょっと貸してもらって良い?」
「うん」
特殊能力をレンタルして、ゾーン状態で掌に魔力を作る。
「おぉっ!できたっ!」
真田さんほど明確な色は発揮できないけど、掌の間が薄らと青色を放つ。
「触ってみて良い?」
真田さんが手を伸ばしてきた。なんか、そのまま手を閉じて、小っちゃい手を捕まえたい衝動に駆られる。
「あっ!」
真田さんが触れる前に、掌の間に作った魔力が消えてしまった。多分、集中せずに、余計なことを考えてしまったからだろうな。
「尊人く~ん!マジメにやってよ!」
「・・・真面目にやってます」
単調な作業なんだけど、何度も繰り返していると頭が痛くなってくる。集中力を大幅に削っているんだから、当然の成り行きなんだろうな。あまり無理はせず、少し疲れたら休憩を入れる。
「密度の高い空気を作るのが魔力のスイッチ。
これだけは、自分の体から質量を持ち出していると思うんだよね」
「どうしてそう思うの?」
「若干の疲労感があるからね」
「ならやっぱり、魔力を作り続ければ痩せるってこと?」
「え~~~っとね、魔力を作り続けた場合は・・・」
空気に若干の質量を与えるだけなんだから、1回や2回やっただけでは体重は変わらない。そして、体重が変化をする前に集中力が切れるから、痩せるほどの魔力は行使できない。
「凄い魔法を使った場合は?」
「それはね・・・」
ホーマン家から借りた本を開いて説明する。
「あくまでも、僕の推測だけどさ。
魔力の攻撃属性を与えるまでは術者の質量から持ち出して、
その先は、どんな攻撃パターンにするか決めて呪文を唱える。
呪文が術者の作った魔力を経由して周りの大気や地面に反応して魔法になる。
・・・みたいな感じかな?」
青騎士達は、魔法で火の玉や雷を飛ばしたり、地震を発生させていた。あれほどのエネルギー量を体内から持ち出したら、即座にガリッガリにやせ細ってしまう。地震発生に至っては、人間の持つエネルギー量で足りるわけが無い。魔法が発動する前に術者が骨になってしまうだろう。
「尊人くん、詳しいね」
「想像と雑学知識ね」
ちなみに智人が火柱や稲妻を発生させたのは、多分魔法とは別の力。理由は、剣なんて魔法で出現させられる代物ではないから。僕達が与えられた特殊能力は、魔法の類いとは違う、もっと特別な力なのだろう。
「でもさ、魔法で大気を火や雷に変えるなら、
エネルギー的には、かなりたくさんの大気を集めなきゃだよね?
魔法使い同士が戦ったら、周りから大気が無くなっちゃうってこと?」
それは多分・・・。
「試してみたいから、もう一回ピークエクスペリエンス借りていいかな?
あと、僕の準備ができたら、魔法の本のこのページの呪文を、
僕が復唱できるように、ゆっくりと音読してもらって良い?」
呪文の指定をしたのち、掌に魔力を溜めて「水」を意識する。
「真田さん、呪文お願い」
真田さんの音読に習って呪文を唱えたら、掌の間に3㎝くらいの氷の塊が作られて足元に落ちた。頑張って魔法を使って小さな氷一個。恐ろしく燃費の悪い製氷機だ。
ピークエクスペリエンスを解除して集中力を途切れさせると、氷は消滅をした。
「溶けるんじゃ無くて消えちゃった。ど~ゆ~こと?」
「水を冷やした氷じゃなくて、魔法の氷だからね。
魔力が無くなった途端に維持できなくなって大気に戻ったってこと・・・かな」
「魔法が終われば大気に戻るから、大気は無くならないってこと?」
「うん・・多分。
前にさ、魔法ごっこやって、ダルダルになったことあったじゃん」
「うん、次の日までキツかったね。二度とやりたくないって思っちゃった」
「あれは多分ね、大気を使うってのは今と同じなんだけど、
魔力を作る基礎を無視して呪文を使っていたから、ああなっちゃったんだよ」
基礎が無いまま魔法の呪文を唱えたので容赦無く集中力や体力を削られ、しかも、基本が解っていないので魔法は満足に発動しなかった。
例えば「自転車」を知らないまま「自転車」と同じスピードで走ろうとする。言うまでも無く、「自転車」みたく速く走る結果を出せないまま、あっという間に体力は枯渇する。
要は、無知が無駄に張り切った結果、意味も無く疲れ果てたってこと。
尊人の仮説は、それなりにイイセンは突いている。
ただし「呪文を唱えると周りの大気が干渉して攻撃魔法になる」と表現したが、それは、モーソーワールドの世界観を知らないなりの解釈。実際には、モーソーワールドの大気中に存在するエネルギーが干渉して攻撃魔法が作られる。




