13-1・ゴブリン遭遇
気持ちを切り替え、獲得できた一件分の依頼を握り締めて出発する。採取する薬草は2種類だけ。あとは、昨日乱獲してある。素早くクリアして、可能ならばもう一つくらい依頼を受注するつもりだ。
「尊人くん!あの草っ!」
真田さんが指さした方向を見る。探してるのとは別の草だ。しかし真田さんは、踏み込んでいって片っ端から引っこ抜く。
「さっき見た別の依頼書にあったよ!
採っていけば、依頼を受けた5秒後にクリアできるんじゃない?」
「暗記したんだ?」
「んへへっ!生物は得意分野」
さすがは、成績上位組の真田さん。だけど、その作戦は、僕達が冒険者ギルドに戻るまで、「その依頼書」が残っていなければ成立しない。
「何個か採るのは良いとしても、乱獲は止めようね」
「なんで?ついでじゃん」
「この草を探している冒険者さんがいたら可哀想だから」
他の冒険者が「その依頼書」を受注した場合、営業妨害になってしまう可能性がある。
「僕達が探してる薬草を別の冒険者さんに全部取られて、
僕達は森の奥まで行って探し回らなきゃならないってのは困るよね」
「そっか~・・・尊人くんの言う通りかも」
「譲り合い・・・だね」
薬草認定された草葉を片っ端に採って道具屋に売れば、「薬草探しの依頼」は成立しなくなる。それで困るのは、僕達のような初級未満の冒険者だ。
乾燥させて使用する薬草もあるが、大半は鮮度が必要。調合する場合は、「取れたての含水量」も重要らしい。冷蔵庫や保温庫が無いので採取した草葉の保存が難しく、且つ、魔法で保存をするとコストが上がる。つまり、「薬草の大量確保」という商売が成立しないのだ。
「解ってくれてありがとう。じゃ、予定の薬草を探しに行こっ!」
僕達は指定された薬草を探して森の中を進む。ところどころで真田さんが「あの草、5番目に見た依頼書にあった」「これ、3番の目依頼書の花だ」と寄り道を望むので、「採っても良いけど必要数だけ」と決めて集める。真田さんが参加しているから実行可能な、営業妨害ではないけど営業妨害に近い作戦だ。
「あっ」
「どうしたの?」
「・・・まずい。真田さん、落ち着いてあっちを見て」
背中に冷たい汗が流れる。寄り道をしすぎて、まだ予定の薬草は採取していない。だけど、ゴブリンと遭遇してしまった。30mくらい先で、僕達を認識して睨んでいる。薬草うんちくに意識が向いてしまい、周囲警戒が散漫になっていた。
「げっ!ヤバいね」
本で得た知識によれば、ゴブリンは好戦的だが魔法を使えない。数人単位で行動をしているが、初級冒険者でも充分に戦えるモンスターだ。ただし、ボスに統率されたゴブリンも存在する。そして、昨日蹴散らした(?)オークとは違って、劣勢になると仲間を呼ぶ。
「尊人くん・・・後にもいるっぽい」
「マジ?」
指摘されて見廻したら、25mくらい離れた背後に1人(ゴブリンB)、20mくらい離れた横に1人(ゴブリンC)。正面の奴(ゴブリンA)を含めて、3人のゴブリンに包囲されていた。交戦は回避できない。
「大丈夫。ゴブリンだけなら、北東村にいた時に何度か倒してる」
動揺気味の真田さんを安心させる為に、若干の誇張を混ぜる。僕は牽制しただけで、倒したのは全て柴田くんだった。だけど、交戦で一定の経験は積んでいる。
「真田さん・・・作戦通り、できる?」
「うん、頑張る」
僕は持っていた荷物袋を置き、背負っていた剣を抜いて盾を構える。真田さんは剣を置いて大きなナイフを構える。本心ではメッチャ怖い。実は足が震えている。だけど、自分でも驚くほど冷静だった。多分、「僕がシッカリして真田さんを守らなきゃ」って意識が働かなければ、もっと動揺していると思う。
「挟み撃ちにされないように、最初に狙うのは後のヤツね」
「うん」
ゴブリンには「息の合った連携」をするようなチーム力は無い。先ずは、いつでも逃げられるように、突破口を作る。
「いくよっ!・・・わぁぁぁっっ!!」
僕の気勢を合図にして戦闘開始!枝葉を避けながらゴブリンBに突進!直ぐ後ろから真田さんが続く!
武器を構えているゴブリンBにシールドアタックを叩き込んで体勢を崩し、剣を叩き付ける!剣の達人なら、今の一撃で仕留められたんだろうけど、僕には無理!でも、一定のダメージは与えることができた!
「真田さんっ!今だっ!」
素早く横に飛んで、真田さんの正面を確保する!
「はいっ!・・・富醒・ピークエクスペリエンスっっ!!」
次の瞬間、真田さんが立てた人差し指に魔力が発生して放電をした!小さい雷を発した手でゴブリンBに触れると、ゴブリンBは小さく悲鳴を上げて全身を硬直させる!
魔法は、ホーマンさんの屋敷でお世話になっている時に、超初心者なりに学んだ。
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