12-5・子供扱い
朝食をご馳走になった後、もう一度、ボウィンさん&シリーガルさん&バクニーさんにお礼を言う。
「魔法のことを勉強したくなったら、遊びに来て良いですか?」
「『遊びに来る』だなんて、その様な言い方は水くさいですわ、サリ様。
夕食の席で存分に語り合いましょう」
「ありがとうござい・・・・・・・・・・・・・・ん?
あ、あの・・・夕食の席って?」
「晩餐は御一緒するのですから、積もるお話しは、その時にでも」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×2
食事のお願いなんてしていないのに、夕食はホーマン邸で食べることになっている。僕が「なんか頼んだ?」って目で真田さんを見たら、真田さんは「知らない」と首を横に振った。
すると、安藤さんが呆れ顔で大きな溜息を付いてから口を開いた。
「『屋敷を出て宿に泊まる』としか話していないから、
飯は今までと同じようにここで食うって解釈されたんだろ?
一切世話になる気が無ーなら、曖昧な言い方しないでハッキリと意思表示しろ。
この世界の連中は、チョット頭がアレで言葉の深読みできねーんだろうからさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×2
「その様な大荷物を持って動き回るおつもりですか?
こちらでお預かり致しますよ」
「これ、執事。ミコト様とサリ様に新しい道具袋をご用意して差しあげなさい」
「気が利かぬ執事で申し訳ありません」
「ああ・・・こちらこそ・・・なんかごめんなさい」
薬草がパンパンに詰まった道具袋は、ホーマン邸で預かってもらうことになった。・・・というか、僕がハッキリと意思表示をしなかった所為で、執事さんが怒られてしまった。執事さん、ごめんなさい。
「で、では・・・今までお世話になりました」
「ミコト様達の冒険者としての活躍のお話し、今晩も楽しみにしていますね」
「・・・はい」
ボウィンさん&シリーガルさん&バクニーさん&安藤さんに見送られて、「なんか思ってたのと違う」と感じながらホーマン邸から退去をする。「寝る時だけ僕と真田さんは別の場所に行く」ってゆーのは、あの人達からどう思われたんだろう?
「どうする、尊人くん?晩ご飯も要らないって言った方が良かったかな?」
「全部断ると申し訳ない感じがして言えなかった」
「・・・だよね」
「急に全部無しじゃなくて、ちょっとずつ遠慮するのを増やしていこうか?」
「うん、そうだね」
言うまでも無く、町の中心にある豪華なところには泊まれない。町外れで寂れた宿屋を探す。
宿泊場所を決めた後は、冒険者ギルドに行って、初級冒険者用の依頼を物色開始。
「この依頼書の、これとこれ、昨日いっぱい持ってきた薬草の中にあるじゃん」
「こっちの依頼書のやつもあるよ。尊人くんの袋の中にいっぱい詰めてある」
「・・・ってことは、該当しない3つを採ってきて、
あとはホーマン邸に置いてきた薬草を持ってくれば、依頼2個クリアできるね」
「昨日のうちに売らなくて良かった~」
真田さんの「欲張り作戦」が正解だった。
「今日は、依頼に無い薬草とかも、見付けたらどんどん採ってきちゃおっか。
そのうちなんかに使えるかも」
真田さんの提案は正しい!・・・が、それをやり出したら、他の冒険者さんの営業妨害になりそうだ。
欲張り作戦を実行するかどうかは後で考えることにして、受ける依頼は決まった。北東村で実行したのと同じように、僕と真田さんでパーティーを組んでいない単独冒険者のフリをして、時間差で2種類のクエストを受付に持っていく。
「HAHAHAHAHA
ボウズ、バカ言っちゃいけねーよ!これは遊びじゃねーんだ!
小便くさい小僧は、家に帰ってママの乳にしがみついてな!」
クエストを2つ同時に受ける作戦失敗。僕は無事にクエストの受付を完了したんだけど、真田さんは受付の人に鼻で笑われて追い返されてしまった。「冒険者に憧れる近所の子供」だと思われてしまったっぽい。
「あたしはボウズじゃねーし、トイレくさくないし、おっぱい求めてない!」
真田さん、もちろん怒っている。気の毒すぎて、どう慰めれば良いのか解らない。
「真田さん、可愛い女の子なのにね」
男装してるのが原因の1つだろうけど、ドレス着ても幼い見た目は変わらないし、今度は「HAHAHAHA」ではなく、「幼女が冒険者の真似事などどういうつもりだ!?」と怒られそうだ。
以前、智人が「この世界では17歳(この世界の換算では15歳)からが1人前として扱われる」と言っていた。真田さんは「その年齢に達していない」と思われたのだろう。
「尊人くん、今なんて言った?」
「真田さんは女の子って・・・」
「それじゃなくてっ!」
真田さんに視線を向けたら、3秒前までは激怒してたはずなのに、笑顔で目を輝かせて僕を見ている。
「・・・ん?」
なんか変なこと言ったっけ?僕は自分の行ったことを思い出して・・・「とんでもないことを言ってしまった」と気付いて赤面する。
今まで生きてきて、赤ちゃんや犬ならともかく、同世代の女の子に「可愛い」なんて言ったこと無い。柴田くんが言えば似合うんだろうけど、僕には全く似合わない台詞だ。
「なんて言った?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
真田さんは容姿はクラスのトップスリーの一角。僕は、真田さんの可愛さは櫻花ちゃんと互角と思っている。
「え~~~と・・・
真田さん可愛いから、受付の人から冒険者って思われなかったんじゃない?」
口から出てしまったものを引っ込めることはできないので、我ながら「無理がある」としか思えない言葉で固めてフォローをする。
「んふふふふっ!そっかぁ~~~~!尊人くん、そう思ってたんだぁ~~~!」
真田さんがニンマリと破顔する。
「仕方無いなぁ~!
尊人くんに免じて、受付のオッサンの暴言は水に流してあげよう!」
なんで今ので機嫌が直った?口癖の「ジェンダーレス」はどこに行った?なんで受付の人の暴言が、僕のフォローでチャラになる?女の子の思考が解らない。
尊人は早璃の好意には全く気付いていない。これは「鈍感だから」以上に、自分に自信が無くて「好かれるわけがない」と思っているから。
この関係は尊人の初恋相手が絡んでくるまでは変化しない。つまり、まだだいぶ先になる。




