12-3・クエスト再開
僕と真田さんは、智人が出動をした翌日から、冒険者ギルドで仕事(薬草採取の依頼)をもらって、町から少し離れた森の散策を開始した。「智人が居なくなった途端に羽を伸ばしている」みたいな印象だけど、タイミング的にこうなっただけ。元々、冒険者(の真似事)をするつもりだった。
まぁ、「智人に引っ張り回されなくなって時間に余裕ができたから、ギルドの仕事をしている」という結果論込みで似たようなもんだけど。
「え~と、先ずは体力増強のキノコ・・・草じゃないけどね」
キノコなんだけど薬草の本に記してある。この辺に関しては、本がアバウトなのではなく、僕達が勝手に「薬草の本」と呼んでるだけで、薬になる植物が一通り記されている本なのだ。
「確か松に似た木・・・え~~~と名前は・・・」
「木の名前は松でいいんじゃね?」
「松っぽい木の根元に・・・」
木の種類に関しては、松にしか見えないんだけど、この世界では違う名前が付いているので、気を使って「松に似た木」と表現したが、真田さんに却下されてしまった。
「あった!このキノコだ!」
依頼の指定数量は5本だったけど、真田さんは目の前にある全てを獲得してしまう。
「そんなに要らないでしょ?」
「冒険者ギルドの人に『要らない』って言われたら、
持って帰ってご飯に入れて食べようよ」
「松茸っぽいゴハン?」
「そこは『松茸ご飯』でいいんじゃね?」
「松茸かどうか解んないよ」
「薬草なら、食べても死ぬことはないよね」
「まぁ・・・そうだね」
どういう効能が有るのかは不明だけど、体力増強の材料なんだから、食べれば元気にはなれそうだ。
「次はね、ワレモコウっぽい草」
「生えてるのは日当たりと風通しが良い場所だね」
「さっすが、生物が得意な真田さん。本見なくても解っちゃうんだね」
直ぐに発見。50本くらい得れば良いんだけど、真田さんは手当たり次第に引っこ抜いてしまう。
「松茸にワレモコウ・・・今は秋なのかな?
あたしの体感だと、秋って感じがしないんだよなぁ~」
「この世界に春夏秋冬なんてあんのかな?
現実世界で天動説が信じられてた頃ってさ、
季節ってどう解釈されてたんだろうね?」
「急にどうしたの?」
「この世界は『天動説を採用してる』説を予想しているんだけどどう思う?」
「なんで天動説?」
僕は真田さんに「地平線が無い」と「天動説」or「超巨大惑星説」を説明する。
「なにそれ~、その説、面白いっ!
常識的には有り得ないんだけど、この世界自体が非常識なんだもんね。
でもさ、そうすると、この有り得ない世界は何なんだろうね?」
「誰かが作った世界?」
「何の為に?」
「解らない。・・・・・でもね」
リターンで見た「クラスメイト全員が仮死状態の教室内」を思い出す。力石先生がいない今、現実世界の状況を知っているのは僕だけ。真田さんを連れて行って見てもらえば、もっとハッキリと「この世界の仮想じみた感覚」を理解してもらえるだろう。
「どうしたの、尊人くん?急に黙っちゃって」
「ごめん、ちょっと考えごとしちゃった。
今は時間が限られてるからダメだけど、今度、連れて行きたい所があってね」
「どこどこ?夜景と星空が綺麗に見える場所とか?」
「・・・ん?」
「夜のセイトータワーに連れてってくれるの?」
「ああ・・・まぁ・・・セイトータワーなら、いつでもいいけど」
確かに、夜のセイトータワーに登れば、セイの町の夜景が一望できそうだ・・・が、どこで「わざわざ夜にセイトータワーに行く話題」に変わった?
「あっ!発見!あの草だ!」
雑談をしながら移動をしているうちに、次の薬草生成地に到着。またもや、真田さんが欲張って、指定数量以上を獲得する。次の薬草も、その次の薬草も、真田さんは「目の前のある分を丸ごともらう勢い」で獲得した。
前々から気付いていたけど、真田さんの方が粗いというか、僕より漢っぽい。
「うわぁ~・・・露天で薬草屋さんができそう」
「尊人くん、ナイスアイディア!空き時間でフリマやろっか?」
「・・・冗談で言ったつもりだったんだけど」
本日のクエストは、あと1種類を得れば終わる。獲得順を最後にした理由は、森の中の、やや込み入った場所に生えているから。つまり、モンスターとの遭遇率が高いから。
「真田さん、ここからは今まで以上に警戒してね」
「うん」
気楽に雑談をしていた今までとは違って、小さい斧で枝葉を払い落としながら慎重に進む。
「あった、あの草だ」
僕は周囲の警戒を担当して、真田さんが草を採取する。指定数量は30本だが、真田さんは今までと同様に欲張って採取する。
「そんなに取ってどうすんの?」
「フリマで売るか自分で使う」
「どっちもダメ」
「なんで?」
「その草、法違反的な種類のやつ」
「ホウイハン?植物にそんな分類の名称あったっけ?」
「植物の分類じゃなくて、犯罪的な分類ね。
日本だったら、持ってたり使ったり育ててたりしてて、
『逮捕』されたってニュースでやってるやつ。
そんなの使う気なの?指定数以外は置いていこうよ。
この国なら禁止されてないかもしれないけど、ちょっと罪悪感が・・・」
体力増強のキノコを食べて、ラリパッパになる葉っぱなんて使ったら、なんか色々と大変なことになりそう。
「そ、そうだね。・・・やめとこうか」
真田さん、欲張りで粗っぽいことがあるけど、ちゃんと解ってくれた。僕より漢らしいんだけど、僕がちゃんと説明をすると受け入れてくれる。だから、一緒にいると安心できて、とても話がしやすい。
たま~に、裏腿を蹴られたり、フライングニードロップ喰らったり、電流を流されることもあるけど。




