12-2・真田さんの才能~トモ出動
「富醒!ピークエクスペリエンス!!」
現実世界に僕等では満足に認識できない「第六感」が存在するように、この世界の住人には僕等では意識をできない「MP」という感覚が有り、当然のように魔法を使う。・・・てゆーか、そう解釈する以外に説明が付かない。
僕等では「MP」を扱うことができないので、代わりに超集中力を消費して魔法を使う。もしくはピークエクスペリエンス(ゾーン状態)で研ぎ澄まされる感覚の「第六感」や「第七感」が「MP」に近い感覚なのかもしれない。僕はそう仮定した。
「うわっ!これでいいのかな!?」
僕の仮説は正解だった。特殊能力・ピークエクスペリエンスを発動させた真田さんは、アッサリと掌の間に圧縮空気を作ることに成功したのだ。その歪みは、僕やバクニーさんが作った歪みよりも濃く歪んでいる。
「尊人くん!ちゃんとできてるか、触って確かめてみてっ!」
「ああ・・・うん」
催促されて、真田さんの掌の間に右手を入れてみる。手は通過するんだけどモヤッとして普通の空気とは違う感触だ。
「どう?できてる?」
「多分、できてると思うけど・・・」
昨日、バクニーさんの作った圧縮空気に触ろうとして真田さんに邪魔された。だから比較ができない。困惑しながらバクニーさんに視線を向けたら、笑顔で頷いてくれたので、「基本はクリアした」と判断して良さそうだ。
「昨日、バクニーさんは、掌の間で色を発生させてましたよね?」
「はい、攻撃魔法の基本となる光、水、風、火、土を意識しました」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×2
ま~た、雑な説明だ。アニメやゲーム知識のおかげで、魔法で火や雷を操れるのは想像できる。だけど、想像しただけで掌から火や雷を出せるわけがないだろう。
「バクニーさん、呪文とか、そーゆーのは・・・・・・ふんぎゃぁぁぁっっ!!」
いきなり右手から全身に電流が走り、僕は腰を抜かす。
「わっ!わっ!大丈夫、尊人くん?」
電気ショックで動けなくなった僕を、真田さんが寄り添って介抱してくれる。若干の痺れは残ってるものの、3秒くらいしたら動けるようになった。
「あ、ありがと。なんか急に痺れて驚いちゃった」
「ごめん。尊人くんをちょっとピリピリさせるつもりで、電気を想像しちゃった。
まさか、あんなに感電するとは予想してなくて・・・」
「・・・・・・・・・・へ?」
そう言えば、右手は真田さんの掌の間に突っ込んだままだった。見てなかったけど、真田さんが掌に発生させた電気魔法を喰らったってことなのかな?
困惑しながらバクニーさんに視線を向けたら、笑顔で頷いてくれたので、「真田さんは電気魔法をクリアした」と解釈して良さそうだ。・・・てゆーか、この状況で笑顔のバクニーさんバカなの?
「・・・・・・・・・・・・・・・・さ、真田さんの攻撃だったんだ?」
この世界での僕への物理面での初ダメージは真田さんのフライングニードロップ、魔法面での初ダメージは真田さんの雷・・・真田さん、もしかして僕のこと嫌いなの?
まぁ、燃やされたり凍らされるよりはマシだけどさ。
「尊人っ!今日も魔法の勉強か?」
朝食には参加しなかった智人が、シリーガルさんと一緒に顔を見せる。
「ああん、チート様、おはようございます。
昨夜は寂しゅうございましたわ」
それまで魔法の先生をしてくれていたバクニーさんが、僕等そっちのけで、甘えた声を上げて智人に寄っていった。
「・・・智人の恋人なんだから仕方ないけど・・・」
「態度が露骨に変わりすぎ」
いつもなら智人は、この時間帯ならもう少しラフなのに、今日はマントまで着けて余所行き用の格好をしている。
「北西村の治安維持に呼ばれた。
尊人、すまないが、しばらくは相手をしてやれない」
智人は現実世界で接していた時のような“ただの友達”ではない。西都市の統率者・ホーマン公爵の代理で、周辺地域の警護を任されているのだ。
「そっか、智人は大変だね。気を付けてね」
「ああ!行ってくる!3~4日で帰ってくるつもりだ!」
智人を見送る為に、皆で屋敷の外に出る。バクニーさんとシリーガルさんが「連れて行け」とか「寂しい」と言いながら別れを惜しみ、智人も満更ではない表情で相手をする。僕も少しくらいは智人と話したいんだけど入り込む隙間が無い。15分くらいラブラブしているのを見せられたあと、智人は運転手付きのチャリオットに乗って出動していった。
「どうする、尊人くん?バクニーさんの魔法教室、続けてもらう?」
「バクニーさん、泣いてて頼みにくいね」
「3~4日で帰ってくるんなら、泣かなくても良いじゃんね」
「魔法の本を借りて、僕達だけで勉強しよっか?」
「うん、そうしよっ」
真田さんは、まだ僕がクリアできていない攻撃魔法(の基礎)をイタズラ感覚でクリアした。真田さんの方が魔法の才能が高いのは認めるしかないけど、「魔法は任せっぱなしでいいや」と考えるつもりは無い。魔法の才能が低いなりに、僕にもできることをやりたい。
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