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11-5・公爵令嬢の魔法教室

「生命力の扱いは同じかぁ~~」


 見た目は似てるけど全く別の生物なら、僕達に「MP」が無いのは納得できる。でも、その辺は一緒だった。


「この世界に来る前に、真っ暗なところで声がして、

 『熟練度はゼロだけど学べば使えるようになる』って言ってたよね?」

「えっ?そうなの?」


 僕、光る声の説明、全然聞いていませんでした。てっきり夢を見てると思ってたもんで・・・。


「なら、諦めるのは早いね。もうちょっと頑張ってみよう」

「うんっ!

 あたしと尊人くんで、どっちが先に魔法を使えるようになるか競走だね」


 バスケのドリブルだって、最初は2回くらいしかできなかったけど、いつの間にか、ボールを見なくてもずっとドリブルを続けられるようになった。シュートだって、最初は届かなかったけど、今ではちゃんと決められる。

 魔法も同じ!最初は上手にできなくても、続けていれば、きっとできるようになる!


・

・

・


 昼食を挟んで夕方まで頑張った!・・・が、共に指先や手の平の間が歪む現象にすら辿り着けない。そもそも論として、魔力が理解できていないので、何を前提にして意識をすれば良いのか、未だに解っていない。

 シリーガルさんとバクニーさんは、「なんでできないんだろう」「簡単なのに」などと言いながら、掌の間や指先の空気を歪ませている。


「あのモヤモヤって質量があるのかな?」


 ただ単に空気が歪んでいる?それとも何かを発している?


「バクニーさん、触らせてもらっていい?」

「どうぞ」


 許可を得たので、バクニーさんに近付いて、胸の前で両掌の間にある空気の歪みに手を伸ばした。


「尊人くん、サイテー」


 僕が靄に触るより先に、いつもより強めの真田さんのローキックが、僕の裏腿に入る。


「いてっ!」

「何で急にバクニーさんの胸さわんの!?

 尊人くん、大っきい方がイイ派なの!?」

「違う違う!胸じゃなくてモヤモヤを・・・」


 真田さんに指摘されて「バクニーさんの胸に手を伸ばす僕」を想像する。触る気なんて全く無かったけど、周りから見れば触ろうとしているようにしか見えない絶対ダメな光景だ。


「真田さん、お願いします。

 バクニーさんが発してる歪みが、ただの空気か、それとも質量があるか、

 確認してください」

「ありゃ?胸に触ろうとしてたんじゃなかったの?」

「そんな大それたこと、するわけないでしょ」

「周りが見たら誤解するから、気を付けてね」

「・・・すみません」


 真田さんの勘違いって解ったのに、なんで僕は謝ってんだろ?


「う~ん・・・質量、あるっぽいね」


 真田さんが空気の歪みに触った印象は「手は通過するんだけどモヤッとして普通の空気とは違う」だった。


「でもこれが、何かのヒントになるの?」

「ヒントになるかどうかは解らないけど、これで解ったことはあるよ。

 歪みの質量が、バクニーさんから発せられているのか?

 バクニーさんの魔力に干渉して、解りの空気が圧縮されて質量を持ったのか?」


 前者の場合は、質量を体内から消費していることになる。つまり、凄い魔法を使えば使うほど、使用者はカロリーを消費する。


「魔法を使うと痩せるってこと?」

「体内から発している理屈ならね」

「便利~~~。超簡単にダイエットできちゃうじゃん」

「そこで羨ましがるの?」


 後者の場合は、魔力とは周りに干渉する為のスイッチで、この世界の大気中には、魔力に反応する成分が含まれてることになる。


「僕達に使いこなせるかどうかはともかく、

 有るか無いか解らない魔力を漠然と想像しているよりはマシになるよね?」

「尊人くん、すご~い!質量が有るってだけで、そこまで解っちゃうの?」

「魔法を使えるバクニーさん達なら解りますよね?

 今の僕の2つの仮説、正解はどっちですか?」


 僕には、かなりイイ線を突いてる自信がある。五里霧中だった魔法に対して、ようやく一歩目を踏み込めそうだ。


「さぁ・・・よく解りませんわ」

「・・・え?」

「私達、魔法を使うと痩せるのでしょうか?お姉様、どう思います?」

「考えたこともありませんでしたわね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×2


 魔法の概念を解らずに魔法を使ってる?この人達、もしかしてバカなの?


「ねぇねぇ・・・尊人くん」


 戸惑っていたら、真田さんが耳打ちをしてきた。


「そう言えばさ、この世界に来る前に、真っ暗なところで声がして、

 『この世界の人は、現実世界の人より知能が低い』って言ってたよね?」

「えっ?そうなの?」


 僕、光る声の説明、全然聞いていませんでした。てっきり夢を見てると思ってたもんで・・・。


「そ、それは・・・困ったね」


 あんまり頭が良くないんだ?普段の僕なら「せっかく教えてくれてる人に対して失礼な評価をするなんてやめるべき」と思うだろうけど、真田さんの言ったことを否定できない。バクニーさん達に対して「意志の無い人形」と感じた第一印象を思い出してしまう。


「どうする、尊人くん?」


 道理で教え方が下手だと思った。・・・と言うか、全然できない僕達に対して、空気の歪みを作って見せてくれるだけで、別のアプローチ方法を全く考えてくれないと感じていた。


「どうしよう?」


 師匠の選択を間違えたっぽい。今日一日かけた「魔法教室」の大前提が崩壊した。

 魔法の表現については、少々手こずってしまった。現代人が魔法世界に来た状況での「魔力ってなに?」が説明できない。念じただけで使えるなら「魔法は誰でも簡単に使える物」になってしまう。契約をすれば使えるようになるなら、金に物を言わせて契約を掻き集められる富裕層ほど強くなる。つまり日銭暮らしの冒険者では金持ちに勝てない。向き不向きがあるとすれば、「念じただけで使える」は排除することになる。

 ハナっから魔法世界に居る住人なら、魚が水の中を泳ぐのと同じような解釈で、「物心が付く前からMPを認識していた」で済むかもしれない。だけど、魔法の概念を持たない現代人では不可能。急に魔法が使える、今までは無かったMPを認識できるが、どんな状況なのか全く想像できない。

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