10-4・セイの町
朝は、智人が部屋に運んできてくれたパンとミルクとフルーツを一緒に食べる。
「さて、行くぞ尊人」
「どこに?」
「もう忘れたのか?町を案内するって言っただろ」
「えっ?もう行くの?」
「いつ任務が入るか解らないからさ、
時間が有るうちに君に町を見せてやりたいんだ」
「そっか、智人、忙しいんだもんね」
朝食を終えた僕と智人は、早速外出の準備をする。
「おいおい、剣は要らねーだろ。どんだけ警戒心が強いんだよ?」
僕がいつものクセで先生の剣を背負おうとして、智人にツッコミを入れられる。
「ああ・・・そうだよね」
「もう、尊人が剣を装備する理由なんて無いんだ」
「うん」
屋敷の前には馬車が駐まっており、シリーガルさんとバクニーさんが見送りに出てくれた。
「馬車で観光すんの?僕は歩いても構わないよ」
「はははっ!君が良くても俺が困るんだ。町中での俺の人気、見ただろ。
徒歩で民達に囲まれてしまったら、観光どころではなくなってしまう」
「ああ、そっか。人気者は大変だね」
「さぁ、理解したら馬車に乗ってくれ」
「うん」
馬車に乗ろうとして違和感に気付く。
「あれ?真田さんと安藤さんは?まだ寝てるのかな?」
「お嬢さん達の接待は、俺の恋人達(シリーガル&バクニー)に任せてある。
俺は君と2人で行動をしたいんだ。」
「・・・そっか。解った。
シリーガルさん、バクニーさん、真田さん達をよろしくお願いします」
「シリーガル、バクニー、客人をショッピングにでも連れ出してやってくれ」
「かしこまりましたわ」
「今日はセイトータワー方面にを廻る。
何か急用があったら、早馬を寄越してくれ」
僕と智人を乗せた馬車が出発をする。
「チート様だ!」 「チート様!」 「チート様!」 「チート様万歳!」
まだ朝早いので人出は少ないが、ホーマン家の馬車を見た人々が足を止めて、智人の名を呼んで手を振る。
「馬車移動で正解だったってこと?」
「ああ・・・徒歩だったら皆に握手を求められてしまうからな。
英雄にはプライベートは無い。英雄を背負ってしまった者の宿命ってやつだ」
「智人、凄いね」
「どうだ、気に入った子いるか?」
「ん?」
「気に入った子がいたら、二つ返事で調達してやるから遠慮無く言えよな」
「なんの話?」
「お嬢さん達を同席させなかった理由・・・
君には女の子を知って大人になってほしい。
君を素敵な子に巡り会わせてやりたいんだ」
現実世界では見られなかった智人の一面にチョット・・・というか、かなり引く。2人も恋人いるのに、町の女の子をナンパしてたんだっけ?それって「プライベート有る」なんじゃね?それとも、そこまで大っぴらだと「プライベート無い」になっちゃうのかな?ナンパされた女の子達が「チート様とHした」って言いふらすって意味?「忙しい」って言ったのに、そ~ゆ~時間は有るのかな?
僕だったら恋人が1人いてくれれば気持ちと時間が手一杯になりそうだ。「女の子を知って大人になる」の意味もよく解らない。健康的な男子の自覚はあるから、そ~ゆ~のには憧れるけど、特に急いでいないし、可愛ければ誰でも良いってわけでもない。
「あっ!」
「どうした、気に入った子がいたか?」
僕は、雑多の中に立つ「人間と少しだけ違う人」に目を奪われた。凄く綺麗な人だけど、別に「気に入って部屋に呼びたい」わけではない。
「いや、そうじゃなくて・・・耳が妙に長くて尖った人がいたから・・・」
人なんだろうか?町にモンスターが住んでいる?
「ああ・・・あれはエルフな。人間とは別の種族だ。
エルフならノスにもいただろう?」
「いたかもしんないけど、わかんない」
北都市の町はロクに見て回れなかったから、よく解らない。外地にはエルフ&ドワーフという種族が存在していて、異文化交流の為に内地に来ているらしい。
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西都市の町には大きい塔が2つあって、今日はそのうちの1つ、町の東側に建つセイトータワーに昇る。周辺監視用の塔なんだけど、普段は一般開放されていて、でも今日は「チート様が昇る」ってことで一般立入は禁止になっていた。
「なんか、僕達が昇る所為で・・・町の人に申し訳ないね」
「気にすんな」
高さは50mくらいかな?僕はテンション上がり気味に螺旋階段をポンポンと駆け上がる。智人は「ミコは子供だな~」なんて言いながら、後からゆっくり上がってきた。
「この塔って、どうやって建ててあるの?」
「急のなんの質問だ?」
「レンガを積んであるだけだよね?倒れないのかな?」
この世界にも鉄はあるけど、鉄筋や鉄骨やコンクリートがあるとは思えない。二階建てくらいならともかく、大きい建物はどうやって維持しているんだろう?
「ああ、そーゆー意味ね。魔力だよ。
塔のあちこちに魔力精製されたレンガを入れて、魔力で繋いでいるんだ」
「へぇ・・・魔法ってすごいね」
ただし、日を追うごとに魔力が弱まるので、数十日ごとに魔力メンテナンスをするらしい。
「塔のレンガを繋いでいる魔法より凄い魔法をぶつければ崩れちゃうってこと?」
「物騒なこと考えるなぁ」
「そうかな?」
「崩したこと無いから解らんが、面白い発想だよ。俺が攻撃すれば倒せるかもな」
「結局、智人が一番凄いってこと?」
「かもなっ!・・・はははっ」
「そこ、否定しないの?智人の方が物騒」
一番上まで上がって景色を眺める。いつも見上げている町や森の木が下に見える。
「うわぁ~・・・良い景色だね!」
「嬉しそうだな」
「バカと煙は・・・とか言わないでよね」
「言いそうになった」
西側を向けばセイの町の全域と、その先の外地が見下ろせる。街の外側は広い穀倉地があり、その外側は基本的には全域が森になっていて、所々に平地っぽい場所がある。
「あっ!あっちの方、煙が上がってる。・・・火事かな?」
「小さな村だろうな」
「そっか・・・そう言えば、小さい村がいっぱいあるんだっけ?」
東側と北東側と南西側は森に繋がる街道が延びていて、その先は靄がかかっていて良く見えない。街道以外の場所は起伏が多く、場所によっては大きな山になっていて、街道部分ではなだらか。北東村にいた時から解っていたんだけど、高い塔から一望したことで、この世界の地形がハッキリと解る。




