9-5・英雄が下す審判
逃げようとした目黒くんを白騎士が取り押さえて、僕と智人の前に引き摺り出す。
「チートっ!俺が悪かった!なんでも言うことを聞く!命だけは助けてっ!」
「後ろ盾が無くなった途端にそれかよ?相変わらず無様だな」
智人は呆れ顔をしている。僕は目黒くんが憎い。ちょっと前までは、本気で「殺してやりたい」と思っていた。でも、命乞いをしている姿を見ていると、可哀想に思えてくる。
「ねぇ、智人。反省してるみたいだし、許してもいいんじゃないの?」
「俺の富醒は、転移した奴等の位置を把握できる!役に立つだろ!
俺とチートが組んで仲間を集めれば、パルー騎士団の無双状態だ!」
「へぇ・・・そのスキルで尊人を探したり、俺の接近を把握できたのか。
確かに便利だな。それさえあれば、仲間が簡単に見付かる」
「だろっ!」
「目黒さ、尊人に興味深い説を言ってたな。
『デスゲームの方略法』・・・反対意見を淘汰する・・・だっけ?
真っ先にそこに気付くなんて、さすがはゲーム好きだな。確かにその通りだ」
「・・・お、おう。チートの富醒があれば余裕だろ?」
「聞くまでも無く、俺と目黒は同じ意見だろうな」
「そうそうっ!俺を減らすのは、チートにとっては損失だっ!」
「うん・・・目黒の言いたいことは解った。・・・だが、関係無い」
「・・・・・・・・・・え?」×2
驚いた僕と目黒くんが、同時に智人の目を見る。
「無力のクセに、青騎士の力を自分の実力みたく振りかざしてイキってたよな。
俺さ、目黒のあーゆー態度、大っ嫌いなんだ」
「・・・チート?」
「確かに目黒の富醒があれば、転移した奴等を集めやすくなる。
だけど俺には必要無い。集める必然性が無い。
俺の仲間は尊人だけで良い」
「・・・智人?」
「目黒の命運はな・・・
青騎士を俺に差し向けた時点で・・・
いや、尊人を嬲り殺そうとした時点で尽きているんだ」
「智人っ!ちょっと待ってっ!!」
僕は反射的に智人と目黒くんんの間に入って止めようとした。目黒くんは慌てて逃げ出す。
「ひぃぃっっ!」
「富醒・イメージ!アスフォデルス!!・・・冥府に沈め!」
だけど、智人は容赦無く特殊能力を発動させた。
「ひぃぃぃぃぃっっっっっっっっ!!」
目黒くんの周りの地面が液状化をして、目黒くんの体が沈む。
「いやだっっ!助けてっっ!!」
液状化した地面から蔦が伸びてきて目黒くんに絡み付き、必死で抵抗する目黒くんを更に沈める。
「尊人が味わった恐怖を思い知りながら逝け!」
「智人っ!僕の仇討ちは、もう考えなくて良いからっ!」
僕は沈んでいく目黒くんに手を伸ばした。だけど、僕の手が目黒くんと交わることは無く、目黒くんは地中に消えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・めぐろ・・・くん」
僕は、目黒くんが沈んだ地面に両膝を付き、呆然とする。さっきまで液状化していた土は、今は普通の硬い土に戻っている。
「尊人は優しすぎる。君は目黒の性根を解っていない。
許せば必ず災いになる。・・・ずっとそうだったからな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
僕が殺されていれば全てが丸く収まったとは思っていない。でも、目黒くんが惨殺されるのが正解だったとも思えない。
「手を汚すのは俺、背負うのは俺、これが英雄に選ばれた者の宿命だ。
尊人は気にしなくて良い。甘い考えのままで良い」
智人には感謝している。智人と会えたのは嬉しい。でも、今は智人が怖くて、顔を見ることができない。
「セイの町に来いよ。俺の屋敷に招待してやる」
「・・・う、うん」
目黒くんの断末魔の悲鳴が耳から離れない。
「今まで苦労した分、ゆっくり休め」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
手で土を掘って目黒くんを救出できるとは思えない。ここに居ても意味が無いのは事実だ。智人に促されて立ち上がる。
「君達も来るんだろ?」
手招きをされた真田さんと安藤さんが頷く。
「さぁ、行くぞ」
白騎士達に護衛されながら街道に戻る。真田さんや安藤さんも喋ろうとしない。きっと僕と同じで気持ちの整理ができていないのだろう。
柴田くん、綿本さん、力石先生、今川くん達、青の騎士団、そして目黒くん・・・こんなに簡単に死んで良いわけが無い。僕は、この世界には馴染めない。僕の居場所は、この世界には無い。脳内は混乱したままだけど、それだけはハッキリと解る。
出席番号12番【柴田俊一】・・・脱落
隣のクラス【綿本綿穂】・・・脱落
出席番号34番【目黒明介】・・・脱落
尊人の危機一髪で智人が登場した感じになってるけど、実は違う。智人は、そのタイミングを待って「真打ちは遅れて登場」を意識している。調子に乗ってポロッと暴露しちゃってるけど、尊人は気付いていない。




