9-4・チートvsサファイ騎士団
道中でゴブリンやオーガと遭遇したけど、白騎士達がやっつけてくれた。ゴブリンくらいなら僕も戦いたかったけど、「下がってください」と言われて手を出せなかった。
「急に戦おうとするなんてどうしたの?尊人くんらしくない」
「・・・なんとなく」
真田さんに違和感を指摘されてしまったけど、君には言われたくない。弱いままの僕を「いつも通り」って目で見られたくない。
30分くらい歩いて、平坦とは言えないけど、木が少ない場所に到着した。4000~5000㎡くらいの広さはあるだろうか?
「尊人達は、ここで見ていてくれ。
オマエ等(白騎士)、護衛は任せたぞ!」
「はいっ!」
智人は、僕達を端に残して、たった1人で平坦地の真ん中まで歩く。
「目黒、ここで文句無いだろ?」
「上等だ!」
目黒くんと青騎士達がゾロゾロと歩いて、総勢18人で智人を囲んだ。
「1対1で俺が18回戦う。
1対18で纏めて勝負を付ける。
戦場を変える希望を聞いてもらえたんだ。戦い方は目黒に合わせるぞ」
「バーカ!ヒーロー気取って、いつまでもイキってんなよ!」
ムチャクチャだ。相手は戦闘のプロだ。1対1の18回戦、1対18、どちらにしても智人の敗北は確実。何か作戦が有ることを期待したいけど、智人は突っ立てるだけで、秘策があるようには思えない。
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智人と仲良くなったばかりの頃、家に招かれて、オンラインのアクションゲームで腕前を披露してもらった。
智人の操作するキャラが、身長差が3倍以上はありそうな巨人と戦っている。智人のキャラが派手なエフェクトの飛び道具(魔法)をガンガンぶつけるんだけど、巨人は全然倒れてくれない。
「メチャクチャ強いモンスターじゃん!倒せるの!?」
「もちろんっ!」
「どうやって!?なんか作戦有るの?」
「力押しっ!」
「えぇっ!?それだけっ!?」
「作戦なんて、一個予定通りにならなければ破綻するだろ」
「まぁ・・・そうかもしれないけど」
「考えても無意味ってことなんだよ。」
10分後、智人の操作するキャラは、ゴリ押しで巨人を討伐した。【ノーロピアンワールド・アクション】というゲームが流行っているのは知っていたけど、僕は初見。智人のプレイを見ていて、「僕なら岩場や森に誘い込んで隠れながら戦うな」と思った。
その後、智人のキャラを操作させてもらって、ゲームの難しさと、トモの上手さを知る。
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「・・・智人」
目黒くんが憎い。彼の所為で僕は死ぬ寸前まで追い詰められた。真田さんまで巻き込まれ、柴田くんと綿本さんは狩られ、安藤さんは心を折られた。智人に勝ってほしい。目黒くんへの復讐をしてほしい。だけど、智人が1対18を覆せるとは思えない。
「いつでもどーぞ!」
智人は、30mくらい離れた目黒くんに向けて手を突き出し、手の甲を向けて人差し指をクイクイと曲げ、「かかってこい」のゼスチャーをする。
「西の英雄を叩き潰し、パルー騎士団の勢いを削ぐ!
者共、かかれっ!!」
目黒くんの隣にいた中年の青騎士が号令を発した。今までは気付く余裕が無かったけど、彼のヘルメットだけ、モヒカンみたいな青毛が生えていて、他の青騎士よりも風格がある。
「なんだ、目黒?隊長はそいつ?君は隊長じゃなくてヒラだったのかよ?」
「う、うるさいっ!」
僕は今の一連を聞いて、これが智人と目黒くんの喧嘩の延長ではなく、大都市に所属する軍隊同士の戦争と把握した。
改めて考えなくても解る。この世界に転移して2~3週間程度で軍隊を掌握できるわけがない。・・・でも、トモは隊長のように振る舞っていた。トモだけが、たった数日でそんなに出世をした?
青騎士6人が、智人に向けて掌を翳しながら呪文を唱える!
「サンダー!」×3
「ファイヤー」×3
青騎士達が発した火の玉とイナズマが智人に襲いかかった!
「富醒・イメージ!ガイア!!」
智人の周りの土が迫り上がって火とイナズマを防ぐ!
「へぇ・・・さすがは、サファイ騎士団の隊長だな。
2属性を同時に飛ばして、相剋防御を封じるなんてやるじゃん。
だけど・・・俺には通用しない!」
「くっ!第三波っ!やれっ!!」
「クエイク」×3
別の青騎士3人が呪文を唱えたら、戦場にだけ地震が発生して、地面が割れながら智人に向かって伸びていく!
「土の防壁を地震で砕くか・・・これも悪くない!
富醒・イメージ!ユグドラシル!!」
智人の周りを無数の木が覆って、地面を伝わるエネルギーを吸収!地割れは智人まで届かない!
「火・雷・土・・・お手本を見せてやるよ。
先ずは、火からっ!富醒・イメージ!カグツチ!!」
智人が、先ほど火の玉を発した青騎士達に向けて掌を翳す!途端に、青騎士3人の足元から火柱が上がって、灼熱の中で消滅させた!
「次は雷っ!富醒・イメージ!ゼウス!!」
智人が腕を上げ、天に向けて人差し指を向ける!空から雷が落ちて、先ほどイナズマを作った青騎士3人が、一瞬で黒焦げになった!
「最後は土っ!富醒・イメージ!ゲブ!!」
智人が拳で地面を叩く!戦場だけが揺れ、地割れが発生して、目黒くんの周りにいた青モヒカン兜の隊長と、その他2人の青騎士を飲み込み、何事も無かったかのように地割れが消えた!
「あれっ?ごめん、地震で攻撃したの、隊長さんじゃなかったな。
あまりにも隙だらけだったから、間違えて攻撃しちゃったよ。ははははっ!」
智人が反撃に転じてから、多分30秒もたっていない。たったそれだけの時間で、青騎士の半数が倒された。
「サファイ騎士団、弱すぎ。
これ以上の恥をかきたくなかったら、残り全員、まとめてかかってこいよ!」
逆撫でされた青騎士達は、ある者は呪文を唱え、ある者は武器を握って突進をする!
「富醒・イメージ!ヘパイストス!!・・・俺の一番好きな攻撃手段だ!!」
智人が掌を頭上に翳すと、空に無数の剣が出現!青騎士達に向かって飛んで、次々と容赦無く串刺しにした!
「・・・智人」
ここまで来ると一方的な虐殺だ。僕は、目の前で起きていることなのに、まるで映画でも見ているような錯覚をしていた。だけど、魔法という「非常識な力で消滅」ではなく、「刃に貫かれて絶命」を目の当たりにして、徐々に頭の中で思考が廻る。
この世界で僕達が死んだ場合は、残った人達が多数決で「現実に帰る」を成立させてくれれば生き返る。だけど、この世界の人達が死んだ場合はどうなる?
「あれ?2人討ち洩らしたか?どうする?まだ続けるか?」
目黒くん以外では、後衛で呪文を唱えていた2人が生き残っていた。
「ひぃぃっっ!」 「化け物だっっ!」
2人の青騎士は慌てて逃げていく。
「続ける以外の選択肢は無いんだ!後の禍根を残すわけねーだろ!」
智人が逃走する2人に掌を向けた!
「智人っ!待ってっ!!」
僕は、何らかの意図があって駆けたわけではなかった。だけど、血生臭い光景に耐えられなくて、親友に残酷なことをさせたくなくて、智人の前に飛び出していた。
「もういいよ、智人!もう止めてよっ!」
「・・・尊人?」
智人は呆気に取られた表情で僕を見詰める。
「なんのつもりだ?奴等は君を殺そうとしたんだぞ!」
「わ、解ってる!
怖くてしかたなくて・・・君が来てくれなければ僕は死んでた!
でも、君のおかげで助かった!もう決着はついたっ!だからもうっ!」
言葉が上手く口から出ない。ちゃんと伝えられていない。でも、智人は僕の眼を見て笑ってくれた。
「安心したよ、君は相変わらずお人好しだな。
解った。尊人に免じて、奴等は見逃してやるよ」
「あ、ありがとうっ!」
智人は、僕の願いを聞き入れて翳していた手を下ろした。
「だけど・・・許せない奴がいる」
智人が、1人取り残された目黒くんを睨み付ける。
「・・・え?」




