↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
53/76

9-3・英雄降臨

「尊人くんっっっっっ!!!」 


 真田さんの叫び声が聞こえる。柴田くんと綿本さんは付き合ってたんだっけ?だから綿本さんは柴田くんに殉じたのかな?真田さんはどうするんだろう?僕に殉じる理由なんて無いんだから、降伏すんのかな?生き残って欲しいけど、気持ちが折れた真田さんも見たくない。


「僕、何を考えてんだろ?」


 今から死ぬ僕には、真田さんのその後を見ることなんて不可能なのにね。守ることができなくてごめんね。

 痛いのかな?柴田くんや綿本さんは痛かったのかな?それとも一瞬なのかな?僕は、何の抵抗もできずに、その時を待っていた。


「させねーよ」


 突風が吹き荒れ、僕を貫こうとしていた槍が止まる。


「・・・・・・・え?」


 次の瞬間には、周りの大木が次々と倒れてきた!僕を囲んでいた青騎士達が後退をする!


「なに?」


 倒れた大木が青騎士との間の遮蔽になったおかげで、僕はフリーになった。


「やれやれ・・・ギリギリセーフだな!」


 道の中央に3頭の軍馬に繋がれたチャリオット。その両翼に白い鎧と白いマントの騎兵が計4騎。チャリオットには、掌を翳した彼が立っていた。


「迎えに来てやったぞ、尊人(ミコ)!」

「智人(トモ)っ!?」


 騎士の服を着て白マントを羽織り、見慣れたいつもの親友とは違う印象を受ける。だが、間違いは無い。


「トモ・・・か。懐かしい呼び名だな。

 今の俺はな、何の因果か『西の英雄・チート』と名乗っている!」


 その白い騎士は、徳川智人だ!


「やっぱり、西の英雄って智人(トモ)のことだったんだね!?

 でも、なんでここに!?」

「情報が入ったんだ。

 尊人(ミコ)がペイイスの村からノスの町に向かってるってな。

 それなら、全任務を放棄して迎えに来るのは当然だろ」


 目黒くんが智人(トモ)を睨み付けた!


「チートっ!」


 智人(トモ)は、僕に向けて穏やかに微笑んだ後、目黒くんを睨み付ける!


「やぁ、目黒。相変わらずカスだな。

 見知った顔は真田と安藤。

 誰が味方で、誰が敵なのかは解らないが・・・それは後から確かめよう。

 とりあえず、目黒が敵ってのは間違いないよな」


 目黒くんは、しばらくは智人(トモ)を睨んでいたけど、急に笑みを浮かべる。仲間に会えた喜びの笑みではない。黒い目をしたドス黒い笑みだ。


「チート!餌に釣られてくれて嬉しいよ!」

「ん?何のことだ!?」

「源がペイイスの村からノスの町に向かってるって情報な、

 バラ蒔いたのは俺なんだよ!」

「何の為に?」

「決まってんだろ!西の英雄とかって名乗ってるオマエを誘き出す為だ!

 源がオマエと合流する前に狩られても、俺は痛くも痒くもない。

 合流しても、ヘタレが追加されただけなら、オマエの戦力は変わらない。

 オマエが誘き出されてくれればベスト。・・・そういうことだ!」


 僕の所為で智人(トモ)が危険に晒されている?謝ろうとしたけど、智人(トモ)は「大丈夫」って目をしてくれた。


「なるほどな。先程、目黒を『相変わらずカス』と表現したけど訂正しよう。

 見事なくらいにカスっぷりに磨きがかかったな」

「俺はノーリスク・ハイリターンの賭けをして勝ったってことだ!」

「なんか色々と能書きを垂れてたみたいだけどさ、今のが遺言で良いか?」

「いつまでもイキってんなよ!オマエはもう詰んでんだよっ!」

「『詰んでる』って言うのは、俺が君の伏兵に気付いていないって意味か?」


 智人(トモ)は背後に向けてヒラリと掌を翳す。


「富醒イメージ!アヌビス!!

 ・・・永遠なる眠りへの誘い!」


 木陰に隠れて銃型の弓(クロスボウ)を構えていた3人の青騎士の前に真っ黒で半透明の狼が出現!咆哮を上げながら突進をして、青騎士達の体を通過した!

 変な表現になんだけど「体当たりをする」ではなく、間違いなく「通り抜けた」のだ。


「・・・ぐぁぁ」


 途端に、3人の青騎士は卒倒する。


「サファイ騎士団の先駆け・・・

 俺を挟み討つ伏兵にするつもりだったんだろうけどさ。

 目黒って、一緒にゲームやってた時から、騙し討ちばっかりだったよな。

 俺が君の卑劣な魂胆に気付かないとでも思っていたのか?」


 僕は智人(トモ)の後に弓兵が隠れていたことすら気付かなかった。そう言えば、目黒くんと接触する前に、10人くらいの青騎士がノスに向かって街道を走っていた。彼等は、目黒くんが智人(トモ)を追い詰める為に準備した別働隊だったんだ?


「チートっ!何をしやがった!?」

「ただの即死攻撃さ。

 君の本隊は君を除いて10人。別働隊は3人脱落して残り7人。

 俺が正面10人を相手にして、護衛の4人に後の7人を任せても楽勝だけど、

 周りに木が生い茂った狭い場所で戦ったら、

 お嬢様方(真田&安藤)に危害を及ぼす可能性が高い。

 どうする?戦場を広い平原に移す要求を飲んでくれるなら、

 俺の衛士達には手出しをさせず、1対17でも構わないぞ」

「ムカ付くっ!サファイ騎士団を舐めるなっ!

 俺だって真田や安藤が巻き添えで潰れるのは望んでいない!

 チートの要望・・・受け入れてやるよ!」

「ふふっ・・・感謝する」


 智人(トモ)が家来の白騎士と一緒に地図を見て、付近の平原を提示する。


「街道から離れる・・・道中でモンスターと遭遇する可能性があるな。

 おい、オマエは尊人(ミコ)の、オマエは真田の護衛をしろ」

「はいっ!」×2

「オマエとチャリオットは、この場で待機だ」

「はいっ!」

「おい、目黒!安藤くらいなら、サファイ騎士団で守れるんだろ?

 不安なら、俺の部下を廻してやるが?」

「サファイ騎士団をバカにするなっ!」

「了解。なら安藤は任す」


 白騎士2人が僕と真田さんを守る為に寄ってきた。智人(トモ)の先導で街道から森に踏み込み、枝葉を掻き分けて近くの平原を目指す。


「尊人くん、怪我は無い?」


 真田さんが寄って来て、僕を労ってくれる。優しい言葉が辛い。


「・・・・・うん」


 あまり喋りたくない。あまり話しかけてほしくない。自分が情けなくて顔を合わせられない。


「・・・強く・・・なりたい」


 絶望を免れた安心が半分。もう半分は悔しかった。智人(トモ)はメチャクチャ格好良い。目黒くんは僕ではどうにも成らないほどの武力を持っている。


「力が・・・ほしい」


 僕は真田さんを守れなかった。僕を信頼して一緒に来てくれたのに、何もできずに危険に晒してしまった。悔しくて仕方が無い。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。