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9-1・裏切り者

 目黒くんの特殊能力はディテクション。一定範囲(数日前に聞いた時は半径10㎞)の転移者を感知できるスキルだ。

 真田さんは隠れ続けることを望んだけど、20m離れた僕達の位置は捕捉されている。


「出てこないなら、こっちから行くぞ」


 目黒くんが、僕達の隠れている方向を指で示して、「あの茂みを物色しろ」と指示をする。青騎士2人が馬から下りて踏み込んできた。


「目黒くんっ!僕達だよっ!」


 クラスメイトに対して隠れたり逃げる必要なんて無い。僕が立ち上がったら、真田さんの少し遅れて立ち上がった。


「源と真田か。

 まぁ、『だろうな』とは思ったけどさ。

 そんなところに突っ立ってないで、こっちに来いよ」

「うんっ!」


 真田さんは戸惑っている。僕は真田さんに安心してもらう為に、自信を持った足取りで、目黒くんに近付いた。だけど、5歩くらい歩いたところで、根拠の無い自信は掻き消される。


「バカッ!何やってんだオマエ等っ!逃げろっ!!」


 馬車の幌から安藤さんが顔を出して、大声で僕等を制止する。


「安藤さん?」

「余計なこと言うなっ!」


 目黒くんが、馬上から剣の腹で荷台を叩いて威嚇する。安藤さんは悲鳴を上げた。


「えっ!?」


 今のパワーバランスには違和感しかない。安藤さんはクラスで一番発言力がある藤原グループの1人。クラス内での発言力は安藤さん>>>目黒くんだ。

 驚いた僕は、目黒くんと視線を合わせる。そして真田さんが言った「黒い目」の意味を理解した。それは、怒った目ではない。人を見下し、支配してやろうとする目。蔑んでいるんだけど卑屈な目。確かに智人(トモ)や目黒くんは、この目をする時がある。藤原グループでは、遠藤君と加藤くんが、僕や智人(トモ)を小バカにする時に、そんな目をしている。


「目黒・・・くん?」


 パワーバランスの歪さと同時に、僕にはもう一つの疑問が浮かんだ。


「安藤さん・・・だけ?柴田くんと綿本さんも一緒?」


 なんで目黒くんが青騎士側にいるのかは解らないけど、安藤さんは「青騎士団」の秘境者狩りに遭遇してしまったと想像できる。なら、一緒にいたはずの柴田くん達はどうなった?逃げたの?目黒くんの特殊能力から逃げられるの?「今川くん達を見捨てた」って後悔していた柴田くんが、安藤さんを見捨てることなんてできるの?


「源さぁ・・・接触者の数、チェックしてねーの?」

「接触者?・・・なんの話?」

「バーカ!『オープン』で表示される数だよ!」


 それなら何度か確認している。レベルだと思っていたのに違った?昨日確認したら「3」だった。4日前には「4」だったのに数字が下がったから「妙だ」とは思っていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・え?ちょっと待って」


 小学校1年生で習う計算式なのに、頭の中で処理できない。数が減った意味が理解できない。

 仮に「3」が接触数だとして、隣にいる真田さんと、目の前にいる目黒くんと安藤さんで3人。柴田くんと綿本さんがカウントから除外されている。


「死んだよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え」

「俺の提案を拒否してな」


 目の前が真っ暗になる錯覚に陥る。脳内が真っ白になる。全身が寒気と怖気に包まれる。目黒くんが言ってる意味が理解できない。笑いながら「冗談だよね」と聞きたい。でも、目黒くんの黒い眼を見ていると、口から言葉が出ない。


「どういう・・・こと?」 


 それが、今の僕が言葉にできる精一杯だった。


「サファイ騎士団に誘ったんだ。だけど、柴田は拒否をしやがった。

 柴田ってもう少し頭が良いヤツだと思っていたのにさ、想像以上にバカだった。

 拒否をすれば排除される以外の選択肢は無いのにさ。

 拒否った柴田が見せしめ喰らって・・・

 そしたら、綿本が泣きながら突っ掛かってきて・・・

 結局、受け入れたのは安藤だけ。

 真田に至っては俺の知らねーうちに村から出ていたからさ、

 保護してやる為に、こうやって追っ掛けてきてやったんだ」

「最初から・・・僕達を狩るつもりで、合流してきたの?」

「8割正解。村で接触した時点で、勧誘をするつもりだった。

 だけどその中に、源は入っていない。

 使えないヘタレを仲間にしても意味が無いからな」


 まだ、目黒くんの言うことがちゃんと理解できていない。心のどこかで目黒くんと安藤さんが「嘘だよ」と笑ってくれるのを期待している。だけど、黒い目をした目黒くんの笑みはドス黒く見えた。安藤さんは悔しそうに俯いている。

 全ての状況が、「柴田くんは脱落した」を否定してくれない。


「うわぁぁっっっっっっっっ!!!!」

「尊人くんっ!」

「真田さんっ!逃げてっっ!!!」


 後になって冷静に考えれば、これが一番の悪手ってことくらいは解る。でも、思考が停止していた僕には、他の行動なんて思い付かなかった。

 背負っていた先生の剣を抜刀して、真田さんを後に付き飛ばし、目黒くんに突進をする!


「バーカ!」


 青騎士の1人が馬を駆って目黒くんを庇うように前に出て、僕に向かって槍を振るった!僕が振るった剣はアッサリと槍に弾かれ、柄を背中に撃ち込まれて転倒する!


「コイツはどうでも良い!真田を捕まえろっ!」


 既に下馬をしていた青騎士2人が、真田さんを捕まえる為に藪の中に踏み込む!


「真田さん、早く逃げてっ!」


 僕は這って青騎士に追い付き、足を掴んで妨害をする!もう1人の騎士に背中を蹴られるんだけど、必死でしがみつき続ける。


ディテクション

使用者:目黒明介

 空中に自分しか見えない地図を展開させて、転移者の位置を確認できる。熟練度が上がればモーソーワールドの内地全域を把握できるようになる。

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