4-5・クビはイヤ
安藤さんが退室をしてしばらくしたら、柴田くんが戻ってきた。「どうにか綿穂(綿本)は機嫌を直してくれた」と報告を受け、「良かった」と返した以外に会話は無い。部屋の灯りを消してベッドで横になる。
僕と柴田くんが喧嘩をしたわけじゃないけど空気は重い。僕には「僕の所為で力石先生が死んだ」「待ちぼうけをした柴田くん達がモンスターに襲われて今川くん達が死んだ」って罪悪感がある。きっと、柴田くんも僕の所為って思ってる。
きっと、安藤さんと綿本さんの部屋は、僕達の部屋以上に空気が重いのだろう。僕が来なければ、もう少し仲良くやれてたかもしれない。何とかしなきゃなんだけど、どうすれば良いのか解らない。
「なぁ、源。寝たか?」
真っ暗な部屋の中で、柴田くんが僕を呼ぶ。
「寝てない。なに?」
真っ暗なんだけど、柴田くんが起き上がったのが、音と気配で解る。
「俺さ、安藤が源にキツく当たったの、チョット解る。
だから、オマエが責められてる時、何も言えなかった」
「・・・え?」
「みんなが、わけの解らない状況に追い込まれてさ、友達や先生亡くしてさ、
いっぱいいっぱいなんだよな。」
「・・・うん」
「源だって同じだろ?オマエが力石の命を奪ったわけではない。
わけが解らない状態で必死で藻掻いてたのに、力石が死んだ。
それで、もっとパニックになって、冷静な判断ができなくなった」
「・・・うん」
「俺だって同じだ。
今になって考えれば『なんで、今川達を置いて逃げたんだろう』って思うけど、
モンスターに襲われた時は、自分と綿穂を守るので精一杯で、
今川達のことまで考えてる余裕が無かった。
だから『見捨てた』って言われると反論できない」
「・・・・・・そうなの?」
「みんながそんななのにさ、オマエって全部が自分の所為みたいに言うじゃん。
そう言って変に開き直ってるように聞こえるっていうか・・・
もっと、生き残る為の言葉を聞きたいっていうか・・・
無理して気を張ってるぶん、
オマエの気弱な発言を聞くとイラつくというか・・・」
「・・・・・・・・うん」
「源が受け身で控え目な性格なのは解ってるつもりだけど、
誰も、オマエのスタンスを汲んでやる余裕が無いというか・・・
ぶつける場所が無いイライラをぶつけやすいところに向かわせるというか・・・
ゴメン・・・。上手く伝えられない。」
柴田くんのアドバイスに対して、具体的にどうすれば良いのか、僕にはよく解らない。でも、柴田くんの優しさは伝わった。
「ねぇ。柴田くん」
真っ暗なんだけど、少し目が慣れてきた。
「・・・ん?」
「僕さ、明日から柴田くんの手伝いしてもいい?」
「えっ?源が?死に場所でも求めてんのか?」
「それは無いよ。まだ死にたくない」
「モンスターと戦うこともあるんだぞ」
「うん・・・なんとなくだけど、解ってる」
「綿穂(綿本)と安藤にキツいこと言われたのは気にすんな」
「それもあるけど、そればっかりじゃない」
安藤さん、僕のことはバカにするけど、柴田くんのことは褒めてた。「男なら柴田みたく外で稼いで来い」って言ってた。安藤さんからクビ宣告されて、そのあと色々考えて、柴田くんにアドバイスされて柴田くんを格好良いと思って辿り着いた答えだ。
「源の富醒ってどんなんだ?」
「う~ん・・・戦闘ではあんまり使えない・・・かな。
人のスキルを借りる能力。大幅に劣化した状態でね」
「試してみたのか?」
「うん、力石先生のスキルをね。
力石先生は10人くらい入れそうな大っきい光の穴を作ったけど、
僕がやると、僕1人ギリギリ入れるくらいの穴しか作れなかった」
「そっか・・・使い処が難しそうな富醒だな」
富醒は転移者にとっては切り札だ。裏を返せば、使えない状態ではほぼ無能状態。そんな大切な切り札を、他人に貸してくれる人がいるわけない。現に力石先生は、僕にリターンを貸して丸腰状態になってるうちに、死んでしまった。
「剣を振り回すくらいはできるよな?」
「振り回すだけ・・・ならね」
現時点の僕の戦績は「ホブゴブリンに向かっていってアッサリ弾き返された」のみ。モンスターと遭遇して戦える自身なんて無い。
でも、僕にできることを見付けたい。何もできないままじゃ、安藤さんから「仲間をクビ」にされてしまう。
柴田と綿本は交際している。修学旅行で柴田が出かけていたのは、綿本と会っていたから。安藤はなんとなく2人の親密度に気付いているけど、尊人は全く気付いていない。そんなイメージで描きました。
第5話でようやく主人公の行動や思考に変化をもたらすキャラが登場します。




