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5-1・初クエスト

 僕達が冒険者ギルドで請け負った仕事は薬草探し。何種類かの薬草を指定の数だけ摘む。採取地は村の北にある森。さすがに、村の中や村の直ぐ外の平原に生えてる草など、誰でも取れてる草にお金を払う人はいない。


「まぁ、稼げる報酬はお駄賃程度だけどな」


 依頼者は道楽好きの金持ちや、研究が忙しくて自分で採取する時間が無い学者。超初級冒険者向けの依頼なので、上手くクリアしても、もらえるのは高校生のバイト代程度。つまり、僕等に相応しい仕事だ。


「柴田くん、あの草じゃね?」


 とりあえず、柴田くんから宛がわれた任務は、借りた本を見ながら薬草を探すこと。生物の授業は得意ではないけど、本に書いてある絵を暗記して同じ物を探すのは苦手ではない。


「待て、あっちにモンスターがいる」


 言われて身を隠す。柴田くんが指で差した方を見たら、2足歩行の犬みたいなヤツが数人で彷徨いてた。


「ホントだ。犬人間だ」


 柴田くんの役割は、僕が草を探してる間、周囲を警戒すること。昨日、現地の人と組んで同じような仕事をして、「これなら僕達2人でできる」って判断したらしい。


「なら、別の場所に行って探す?」

「そうしよう」


 柴田くん曰く「犬人間なら素手じゃなければ僕でも倒せるレベル」らしい。でも、戦闘が目的ではない。「相手が弱ければいいや」とかではなく、可能なら生き物を殺したくない。

 だけど、モンスターの方が目が良かったり鼻が利いたりする。全部、隠れてれば済むわけでは無く、見付かって襲われることもある。


「源、牽制頼む!無理はしないようになっ!」

「う、うん!」


 ゴブリン3匹が攻めてきた!僕は、右手で背負ってる先生の剣を抜いて、左手に革の盾を握って半身を隠しながら、剣を振り回してゴブリンの群れに突っ込む!


「わぁぁぁっっっ!!」


 ゴブリンと言えば、この世界に来た僕が最初に遭遇した因縁のモンスターだけど、「あの時の無念を晴らす!」なんて気持ちは一切無し。怖くて仕方がない。

 僕の振り回した剣がゴブリンに当たる・・・とは言っても、剣の振り方がなってないので、ポイント(切先)やカッティングエッジ(刃)がヒットするのではなく、フラーやブレイド(剣の平らな部分)がぶつかっただけ。チョットは痛がってくれるかもしてないけど、もちろん倒せない。あと、距離感無視で突っ込んだので、シールドがぶつかって1人を弾き飛ばした(シールドアタック成功)。


「よしっ!ナイス、源っ!」


 ゴブリン達の注意力が僕に向いたタイミングで、剣を構えていた柴田くんが走る!


「富醒発動!ブーストッ!!」


 柴田くんの全身が風に乗って加速!あっという間にゴブリンに接近して剣で貫いた!残る2匹が動揺する!その間に柴田くんは2回目のスキル発動をして、2人目を切り捨てた!3人目が逃げ出す!


「ま、待てっ!」


 僕は咄嗟にタックルをしてゴブリンと絡み合う!どうにかマウントポジションを取れたけど、縺れ合った時に手放してしまった剣は、3mくらい離れたところに転がっている。


「こんにゃろうっ!」


 仕方が無いので革のシールドで叩く。1回叩いたくらいでは全然ダメージを受けていないので、何回も叩く。

 見かねた柴田くんが寄って来て、剣でトドメを刺してくれた。これで討伐成功。

 申し訳ない気持ちはあるんだけど、お金に換える為に、ゴブリンの装備品や所持品を没収する。柴田くんも、僕を批難せずに同じことをしている。これは、力石先生の教え。柴田くんの力石先生と行動してたんだから、「生きる為にはやらなきゃ」って学んだんだね。


「源ってさ、案外攻撃的なんだな。

 まさか、ブチ切れてゴブリンと取っ組み合いをするとは思ってなかった」

「ブチ切れたわけじゃなくてね・・・

 前に、逃げたのを放置したら仲間呼んで戻ってきて大変なことになっちゃって」

「ああ・・・なるほど、失敗談があったのか」

「・・・うん」


 その失敗で力石先生を失った。だから、死なない為には甘いことは言ってられない。


「まぁ・・・キレてたのは事実なんだろうけどな」

「・・・ん?」

「腰にナイフを帯刀してたの忘れてただろ?

 盾で叩くんじゃなくて、ナイフ使えよな」

「・・・・・・・・・・あっ」


 指摘されるまで、もう一個武器を持ってたの忘れてた。

 先生の剣を拾って背負った鞘に戻し、強奪した物を袋に入れて腰布に縛り、薬草探しを再開する。


「柴田くんのスキル、メッチャ格好良いね」

「瞬発力と短距離走は自信有るからな。そこに超加速の上乗せ。

 上手いこと俺のスペックを活かせる富醒をゲットできたと思ってる」


 今日の仕事で現地の人を誘わなかった理由は、「僕と2人でもクリアできると思ったから」であり、「戦闘で富醒を試してみたかった」かららしい。「今川くんと隣のクラスの鰐淵くんが富醒を見せびらかした末路」を実体験してるから、この世界の人達の前では使いたくないのだ。


(僕も同じ)


 ブラークさんからも、「転移者ってバレないようにしろ」とアドバイスされてる。尤も、僕がスキルを発動させたところで、人のを貸してもらわなきゃ何もできない。単独でイケてるスキルを使いこなせる柴田くんが、チョットだけ羨ましい。


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ブースト

使用者:柴田俊一

 直線的に素早く移動できる。熟練度が上がれば、目に見えないスピードでの突進が可能。数十m先にいる敵が構える前に懐に飛び込むことが可能になる。

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