8.見つけてしまいました
職員たちはどこも忙しそうに動いており、コーデリアに気を留める様子もない。一度帰宅の旨を伝えて別れた手前もあるし、籠を見つけたらさっさと帰るつもりであったため、職員には何も伝えずに籠を探して元の部屋に戻った。
しかし、なぜかどこにも見当たらない。
(おかしいわね)
視線を巡らせると、廊下の奥に案内されていない扉があった。コーデリアはちらりと周囲を確認してから、こっそりとその扉を押した。
裏口に続く細い通路だった。外に出ると、表の施設とは打って変わって、古びたボロい建物が目に入った。
その前で、小さな影が動いた。
見れば、小さな子供が建物の扉の前にしゃがみこんで、クッキーを一枚、口に運んだところだった。
コーデリアと目が合った瞬間、子供の体がびくりと震えた。涙目でこちらを見上げながら、今にも泣き出しそうに唇を噛んでいる。
(……叱られると思ってるのね、この子)
胸の奥がざわりと揺れた。だがそれを押し込み、コーデリアはできる限り柔らかく微笑む。
「美味しい? わたくしが作ったのよ」
子供はおずおずと頷いた。少しだけ、警戒が解けた気がした。
「ところで、籠はどこにあるかご存知?」
子供はきょとんとしてから、背後の扉をちょんと指差した。そのまま、おいでというように中へと入っていく。
コーデリアはそっと後に続いた。
薄暗い室内では、壁際に子供たちが数人かたまっていた。その中の一人が籠を抱えていて、残り少ないクッキーを皆で分け合いながら、声を殺してひっそりと盛り上がっている。
(……これ、選別されてるわね)
見目麗しい子供たちは表に出され、そうでない子供たちはここに隠されている。
なぜ、こうも明らかな違いがあるのかと疑問に思った、その時だった。
「こら、ばか! 外で食べて見つかったらまた殴られるぞ!」
低い声が飛んだ。壁際に立っていた少年が、扉から入ってきた小さな子供を庇うように前に出てきた。年のころは十歳前後だろうか。やつれてはいるが、目だけが違う。うつろでも怯えてもいない。
そしてコーデリアに気づいた瞬間、その目が鋭く細くなった。
「……何しに来た、お前」




