7.これはテンプレの予感
最後に向かったのは、カリタス院だった。一般市民街の西側、下層市民街との境に近い場所に位置している。
他の孤児院と同じように事前に先触れを出していたからか、門をくぐると運営者が満面の笑みで出迎えてくれた。身なりの良い中年の男性だ。しかしコーデリアは、その瞬間から妙な違和感を覚えた。
今まで訪れた孤児院の運営者たちは、皆一様に質素な身なりをしていた。しかしこの男の上着は明らかに高級な生地で仕立てられており、指には宝石のついた指輪が光っている。
(孤児院の運営者にしては、随分と羽振りがいいのね)
「ようこそいらっしゃいました、アルメリア公爵令嬢様。さあさあ、どうぞこちらへ」
愛想だけは申し分ない。しかしその笑い方が、どこかいやらしい。うまく言葉にはできないが、野生の勘がざわざわと騒いでいた。
(それに、この手……やけに白くてぶっとくて気持ち悪い)
指の間から覗く無駄に豊かな体毛が、その気持ち悪さに拍車をかけていた。しかし、傍らのリンが小さく咳払いをしたので、コーデリアは口元に笑みを貼り付けたまま、内心だけで舌を出した。
案内された施設は、清潔で整えられていた。現れた子供たちも、皆一様に見目麗しく、きちんとした服を着ている。
(……なんか、作られた感じがするわね)
クッキーを渡すと、子供たちは行儀よく「ありがとうございます」と言った。笑顔もある。しかし何故か、サント・クロワ院の子供たちのような、あの自然な輝きがないのがやけに気になった。
一通りの案内を終え、馬車へと向かったところで、コーデリアはふと気づいた。
(あら、籠がないわ)
「お嬢様、私が取りに参ります」
リンが踵を返そうとした瞬間、コーデリアは静かに手を上げてそれを制した。
「いいわ。せっかくだし、もう一度孤児院の中を見てみたいから、私が行くわ」
リンから僅かに不服そうな感じを受けたが、しれっと無視してコーデリアはそのまま踵を返した。




