5.楽しみを減らされた
まず向かったのは、王都で最も名の知れた孤児院、サン・ミカエル院だった。中級貴族街寄りの北側に位置する、王都最大規模の施設である。
事前にアランから情報を集めた。
彼によれば、貴族たちの慰問や寄附は、決まって大きく綺麗な施設に集中するという。小規模な孤児院には、なかなか支援の手が届かないのが現状らしかった。
(見栄えのいい施設だけを巡って、「慈善活動は済ませた」と言い張るのが多くの貴族の常套手段らしいけれどーーさすがに気が引けるわね)
とはいえ、サン・ミカエル院を完全に無視するわけにもいかないので、まずは公式の慰問として顔を出した。
王都一とも言われる規模の孤児院ともなれば、裏で何かしらの不正が絡んでいる可能性も十分ある。後日お忍びで再訪し、さらには公爵家に代々仕える影を利用して運営者達の背後関係やその資金の流れなども調べてみたのだがーー全くのシロだった。なぜだ。
(お金の集まるところは不正があったりするのがセオリーなのに、おかしいわね)
さすがに定番すぎると、この世の『神』とやらが補正したのかもしれない。まったく、余計なお世話をしてくれたものだ。
(ま、ここは放っておいて大丈夫ね。さて、次からが本番だわ)
やや肩透かしを食らった気持ちにはなったが、支援の回らない孤児院の現状は、もしかしたら悲惨なことになっているかもしれない。
何かしら少しでも手を貸せることがないかと思い、中小規模の孤児院を1つ1つ回ることにしたのだった。
転生前の通勤時の愛読書はミステリー小説です。




