3.面倒を押し付けたね
ある日のお茶会のこと。いつも通り退屈な時間が始まる。香りの良い紅茶、完璧に整えられた庭園、そして向かいに座る、仏頂面のオスカー。
しばらく無言の時間を過ごした後、オスカーが口を開いた。
「近々、孤児院へ慰問に行くことになった」
コーデリアはカップを置く手を止める。
「孤児院……ですか?」
「そうだ。王族として、民の生活を見ておく必要がある。慈善活動も義務のうちだ」
――と、父上から言われたのだ。
ぼそりと漏らしたその言葉は、コーデリアの耳にしっかりと届いていたが、とりあえず聞かなかったふりをした。
問題は、その後だった。
「正直、なぜこの私が薄汚いガキどもの世話などせねばならんのか分からんがな」
一瞬、風が止んだ気がした。
(おいおい製作者さんよ、本当にコレが王道ルートの攻略対象者で合ってんのかよ)
ゲームの中では計り知ることのできなかったオスカーのクソな一面に口元が引きつりそうになるが、ここは王太子妃候補としての訓練の賜物、一瞬で整えて淑女として完璧な笑みを浮かべ、静かに口を開いた。
「いけませんわ、殿下。孤児院の子供たちもまた、守るべき民であり、将来この国を支える大切な存在ですわ」
コーデリアがやんわりと諌めても、オスカーは鼻で笑った。
「ふん! これだから生意気な女は嫌なんだ」
そして吐き捨てるように言う。
「興醒めだ。孤児院にはお前一人で行け!」
椅子をガタンと音を立てながら立ち上がると、オスカーはさっさと庭園を後にした。優雅さのかけらもない。
オスカーが苛立って途中退出するのはいつものことなので、コーデリアは特段気にすることなく静かに紅茶を飲んだ。カップをソーサーに戻す音だけが、やけに静かに響く。
(へいへーい、一人で行ってきますよー)
こっそり手帳に今日のことを記しながら、コーデリアは慰問に向かうスケジュールを頭の中で計算したのだった。
全てはここから始まった。




