2.なぜロケランは未実装なのか
ぐるぐると試行錯誤しているうちに、侍女に目覚めたことがバレた。
その後は主治医の検査やら湯浴みやら食事やら、溺愛が激しい両親からのハグの洗礼やらを一通り受け、ようやく落ち着いたところでペンを取り、今後の作戦とやらを練ってみた――が。
(いかん)
全く浮かばない。
そう、攻略対象者の騎士団長の息子を密かに『脳筋』と評していたが、よく考えれば自分も大概そのタイプだった。
力こそ全て。
力こそ正義。
ここにロケットランチャーでもあれば一発で解決するのに、悲しいかな、この世界は中世ヨーロッパ風の剣と魔法の世界。そしてこの国で最も権力を持つ王族には、力技など到底使えない。マジで悔しい。
(……ま、王太子妃候補としての勉強は、今後の人生にも役立つだろうし。とりあえずアホ王子には当たり障りなく付き合いながら、勉強でも頑張るか)
作戦を練るはずだった紙には、『①』以外何も書かれないまま、棚の引き出しに静かにしまわれた。
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それからというもの、婚約者として月に一度、オスカーとの交流が始まった。
毎回渋々足を運ぶものの、いつも一時間足らずであっという間に終わる。理由は単純だった。オスカーが、婚約者には到底するとは思えない言動を繰り返したからである。
初回の交流で、コーデリアは一縷の望みをかけてみた。もしかしたら、真面目に向き合えば更生するかもしれない、と。
その望みは、毛虫を木の枝に乗せて追いかけ回されたことで、即座に砕け散った。
(普通の毛虫なら手で叩けるのに、なんで派手にかぶれて痒みが地獄みたいに長引くタイプを見つけてくるのよ!!)
チョイスの悪辣さに自覚はあるのかないのか。どちらにせよ、コーデリアの中の好感度は凄まじい勢いで地の底へと沈んでいた。
子供のうちは、好きな女の子をわざといじめるということも、まあ、なくはない話だ。だが馬鹿め。それで女の子がお前を好きになろうはずがない。おおかた、大きなトラウマと嫌悪だけを胸に、お前を拒むのがオチだ。
コーデリアは半泣きになりながら手帳を取り出すと、日時、場所、状況、目撃者を事細かに書き留めた。
いつか必ず、役に立ててやる。
一方で、王太子妃候補としての勉強は、思いのほか楽しかった。
厳しい作法の稽古にも、コーデリアは積極的に取り組んだ。生き延びるための処世術は、少しでも多く身につけておくべきだ。断罪エンドを回避するその日まで。
王城にロケランぶっ放しはさすがに無理があると、秒で諦めたようです。




