1.転生先に物申したい
(まぁーーーこういうのって、よくあると言えばあるんだけどさぁ)
天蓋付きのベッドの上で目を覚ましたコーデリアは、体を起こし部屋を一望した後、盛大なため息をつきながら両手で顔を覆った。
見慣れた、しかし見慣れない天井。豪奢な刺繍の施された天蓋。壁際には細工の細かい木製の家具が並び、窓際には絹のカーテンが柔らかく揺れている。
窓から差し込む、どこか懐かしいような異質な光。
整理しよう。
さっきまで彼女は、王太子殿下との婚約の儀に出席していた。相手は噂に違わぬ金髪碧眼の美少年で、七歳の彼女は内心で少しだけ浮かれていた。
そしてその美少年が名乗った瞬間。
ーーオスカーと申します。
(あ)
そこで記憶が、なだれ込んできた。
山本ゆりな、享年二十八歳。某企業の営業職。趣味はサバゲー、特にFPSとバイオハザードシリーズが大好物。友人に半ば強引に押し付けられた乙女ゲームを、文句を言いながら全ルートクリアした経験あり。過労死により死亡。
そして、その乙女ゲームの悪役令嬢の名前と、王道ルートの王太子の名前が。
まんま、自分と目の前の美少年と、一致していた。
そこで七歳のコーデリアは、婚約の儀の真っ只中、記憶の波に飲まれて盛大にぶっ倒れたという訳だ。
ゆっくりと手を離して顔を上げると、頭の片隅がズキッと痛んだ。倒れた時に頭でもぶつけたのかもしれない。
一番近くにいたのはあの王太子だったはずなのに、助けなかったのか、と悪態づきたくなるが。
いやいや。
あの男は後に、大した証拠もなく婚約者である公爵令嬢を公衆の面前で断罪するような俺様王子だ。たかが目の前で倒れた婚約者ひとり、助けようなどという殊勝な心がけなど、端から期待する方が間違いというものだろう。
どうせ転生するなら、バイオハザードの世界が良かった。もっとも、本当にリアルハザードされたら自分はあっけなく死ぬかゾンビ化するかのどちらかだろうから、これはこれで正解だったのかもしれないが。
兎にも角にも。
ざっとこの乙女ゲームの記憶を思い起こすと、悪役令嬢であるこの身は、どのルートを辿ろうと間違いなく断罪エンド一直線だ。攻略対象者が誰であれ、それだけは揺るがない。
断罪ルートだけは避けたい。絶対に避けたい。
そして可能であれば、あのアホ王子との婚姻も避けたい。
切実に。マジで。
ちなみに作者もバイオハザード大好きです。




