闇と拳を
ーエンチャントー
闇、闇、闇、どこを見ても、何を使っても闇は闇のままである。
「そんなので何が出来る。」
「さあな、俺もよくわかってない。」
そう言うと俺は闇の世界を蹴り出した、さっきと同じ風が闇の中でもなびく。
「また意味のないことを・・・」
やっぱり、壁だ。闇とあいつは言っていたが、ここは無限の空間でないようだ、なら俺はこいつに勝てる。
「ほんとにお前は何がしたい?」
さあ、無理をする時間だ。
「クロン、力、貸・・・いや、全部よこせ。」
そう言うと俺は緑の石を指で真上に弾くとそれをキャッチした。そして俺はその石を自分の胸に押し当てた。
ーエンチャントー
体に流れる魔力のエネルギー、あぁ、これ絶対無理してるな。でも、これは俺だ、ダインでもコンマでもない、俺の意思だ。
俺の持っていた剣はエンチャントと共に形を変え、俺のマフラーとなった。マフラーは風のないこの闇でも永遠となびいている。
「そんな衣装が変わっただけで勝てるわけ無いだろ!この低脳が!」
闇の空間にカゲが縦横無尽に駆け回る音が反射し、俺に近づいてくる、30、20、10・・・俺は音のする方へ拳を突き出した。
「どっわっ」
ヒット、俺の拳は見事にカゲのどこかに入ったようだ。
「低脳が、低脳が、低脳のカス共が!!」
パリッンッ
「クソっ、魔力が・・・闇が・・・クソっ、クソっ、クソがっ!」
俺の方へ光が差し込む、カゲの姿だってよく見える。
「王女は返してもらう!」
俺は拳を左手で受け止めながらカゲの方へと近づいた、ケリをつけようじゃないか。
「うるさい・・・うるさい、うるさい、お前ら人間が私を縛りつけて・・・自由を奪って、それで私が自由を手に入れたらまた奪うのか・・・だから嫌いなんだよ、そんな人間が、そんなアイツらのエゴが!私はお前を殺して自由を勝ち取る!」
その言葉を皮切りに俺の方に頬が飛んだ、数メートル飛んだところで俺も足にスピードをかけ、カゲの頬にも拳をぶっ飛ばした。カゲは殴る度に窓ガラスが割れるような、パリンッと光と共に飛んでいく。
「死ねっ!」
もうここまで来たら、技術も頭脳も能力もなんにも関係無いただの殴り合い、勝敗はどちらかが死ぬまでだ、完全フィジカルの勝負、どちらも疲労は共に最高まで行っている。
「グハッ!」
拳を突き出し、避け、殴る、殴る度にバリンッとなる音、己と、己との戦い、血を吹き出し、ぶっ飛び、また立ち上がる。
蹴っても、顔面を殴っても立ち上がる、1人は奪われかけた自由を守るため、1人は未来へ行くためのわがままを、
拳に、体に流し込む。
「「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」」
「もう、いけて1発か・・・」
「全く同意だ。」
割れに割れまくった闇の空間はもう闇では無くなっていた、ここに闇なんてない、あるのは拳のみ。
「死ねぇ!!」
「ウォォォ!!」
俺とカゲの拳が交差する、けど俺の方が早い!
「そんな律儀に同時に殴るわけ無いだろ!バーカ!!」
その瞬間俺の拳はカゲには入らず、俺の顔にカゲの左手が入り俺の体は宙へ飛んだ。
「はぁ・・・勝った・・・私は・・・自由だッ・・・」
俺の勝ちだ。最後のハッタリ勝負は俺の方が上だったようだな。俺はまだ、2発いけた。
バリンッ!!
「闇が・・・消えてく。」
崩れていく闇の中で俺は王女と2分割されたカゲを見下ろした。
「よこせ。」
そう言うと俺はバラバラとジグソーパズルのように崩れていくカゲに手を突き出した。
「お前、賢者だろ?さっさと力くれよ。」
「なんだ・・・よ・・・気づいて・・・いたのかよ・・・」
低脳という人間を見下した口ぶり、自由を奪われる場所、賢くて人間を見下すのは俺の浅い経験だと賢者しか出なかった。
「あ・・・あいにく・・・私は・・・あいつの・・・片割れだ・・・力は・・・あいつが・・・もっている・・・」
「うそ・・・だろ」
「鍵を・・・持っていけ・・・・」
そう言うと消えていくカゲは1個の鍵を俺に渡した、大きさはあの鍵穴と一緒ぐらいの大きさだ。
「お前は・・・そんなに・・・なんで無茶をして・・・救いたがる・・・」
「・・・人間だから。」
「そうか・・・ならさ・・・あいつ、殺してよ。あいつ人間じゃないから・・・救わずにさ・・・殺して・・・」
「それが・・・お前の願いか。」
「なんだよ・・・もう・・・お見通しか・・・」
そう言うとカゲは光と共に透明へと、光へ消えていった、まるで影のように・・・




